4-9 誕生パーティー終了後
夕暮れが近づく頃。リーネ侯爵令嬢の誕生パーティーはお開きとなった。成人貴族たちを残して子息令嬢たちはそれぞれの邸宅へと帰っていったのである。
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サフィニアとヘスティアは帰りの馬車の中で楽しそうに会話をしていた。
「サフィニア様、今日のダンス本当に素敵でした! 皆が見惚れてましたよ!」
「そ、そうかしら? すごく緊張していたから自分ではよく分からないけれど」
サフィニアは恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「僕もサフィニア様のダンスはとてもお上手だったと思います。まるで妖精のようでしたよ?」
セザールは頷く。
「あ、ありがとう、セザール。ヘスティア。私、今日のことは一生忘れないわ。こんなに楽しかったのは生れてはじめてだったから」
笑顔で自分の気持ちを語るサフィニア。
その後もサフィニアとヘスティアは今日の誕生パーティーについて笑顔で話をしている。
そんな二人の様子を見つめるセザールの顔には、どこか安堵したような表情が浮かんでいた――
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夕闇が迫る頃、セイラとラファエルは険悪な様子で邸宅に帰って来た。
2人は帰りの馬車の中で、サフィニアの件でずっと口論していたのだ。そこへさらに追い打ちをかける出来事が2人を待ち受けていたのだった――
「セイラ! お前たちは何ということをしてくれた!」
書斎にエストマン公爵の怒声が響き渡る。
彼は机の前に仁王立ちし、手には数通の手紙が握られていた。母のバーバラは隣に座っており、2人を無言で睨みつけている。
「お、お父様……い、一体何を怒っているのですか?」
震えながら尋ねるセイラ。
「お前……まさか自分が何をしでかしたのか分からないのか!? お前の愚かな行動のせいで、サフィニアが他の貴族たちから注目されてしまったのだぞ! 大体ラファエル! お前は何故このバカ娘を放置していたのだ!」
公爵の叱責はラファエルに及ぶ。
「父上! 俺は何度もセイラを止めようと……」
「黙れ! 言い訳などいらぬ! いいか? あの娘は我が家の恥だと何度っも言っているだろう! それを貴族たちの前で目立たせるとは何事だ!」
「わ、私……そんなつもりじゃ……」
セイラは唇を噛みしめた。
「つもりなどどうでもいい!」
公爵は机を叩いた。
「結果として、サフィニアは貴族たちの注目を浴びた。忌々しいが、会場で手紙を従者に渡してきた者もいた。使者が届けた招待状もある。冷遇していたことが露見する前に、待遇を改めねばななくなったではないか! こんな事態を招いたのは、全てお前たちの2人の責任だ!」
するとラファエルが反論した。
「父上! どうして俺まで責任を負わなければならないのですか!? 悪いのは全てセイラですよ! 俺は何度も馬鹿な真似はやめろと止めたのに!」
そして次にセイラを睨みつけた。
「このバカ女! 俺まで巻き込むな! そんなだから、誰にも相手にされないんだろう!?」
「な、何よ……どうしていつも私ばかり悪者にされるのよ……」
悔しさで俯くセイラ。
だが、今のセイラの心を占めていたのは怒りよりも屈辱。自分の策略が裏目に出たことを、誰よりも痛感していたのだった――




