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孤独な公女~私は死んだことにしてください  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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4-7 リーネ侯爵令嬢の誕生パーティ 7

 サフィニアは自分の前に手を差し伸べてきた令息をじっと見つめた。


そばかすのある、まだあどけなさを残す彼は真剣な……しかし、どこか切羽詰まったような表情を浮かべている。


「あの、本当に私が誰か分かっていてダンスを申し込んでいるのですか?」


再度サフィニアが尋ねると、少年は大きく頷く。


「はい、もちろんです」


するとヘスティアが笑顔になった。


「サフィニア様! 折角のダンスのお誘いなんです。どうぞ踊ってきてください」


「ええ。僕もヘスティア嬢と同じ考えです」


セザールも笑顔で頷く。


「わ、分かったわ。……それではお願いします」


サフィニアがお辞儀をすると、少年は真っ赤になる。


「い、いえ! 僕こそ! で、では踊りに行きましょう」


少年は右手を差し出してきたが、その手は少しだけ小刻みに震えている。サフィニアはその手を取ると、しっかり握りられ……2人はダンスの輪に向かっていった。


「良かったですね。サフィニア様がダンスに誘われて」


ヘスティアは笑顔でセザールを見上げたが、何故かその表情は真剣だった。


「セザール様? どうかされたのですか?」


「い、いえ。何でもありませんよ」


セザールは笑みを浮かべて返事をした――



 サフィニアは少年はダンスを踊っていた。その踊りはとても上手で、周囲でも注目を浴びていた。


「そういえば自己紹介がまだでしたね。僕はマイク・ランドと申します。身分は、その……男爵家なのですが……」


マイクと名乗った少年はためらいがちに言った。


「そうなのですね? でもそれがどうかしましたか?」


気位の高い貴族令嬢であれば、自分よりも身分の低い相手からのダンスの誘いを断ったかもしれない。だが、サフィニアは違う。

元より相手を見下すような性格では無かったし、エストマン公爵家からは見捨てられている公女だからだ。


「! サフィニア様……」


すると突然マイクは目を見開き……。


「申し訳ございませんでした!」


踊りながら、突然謝罪してきた――



****



 今から30分程前――


「あぁもう……イライラするわ!」


パーティー会場を移動した後も、相変わらずセイラは食べ続けていた。今は甘いお菓を口にしている。


「おい、いい加減食べるのはやめろ。ここはダンス会場だぞ? 周囲を見てみろ、食べているのはお前だけじゃないか」


ラファエルはうんざりした様子でセイラを注意する。


「何よ! そんなこと言ったって、私は誰からもダンスに誘われないのよ!? だったら食べるしかないじゃないの! 大体私は公女なのに……この会場で一番身分が高いのに、よくも皆蔑ろにしてくれるじゃない!」


文句を言いながらも料理を食べ続けるセイラをラファエルは軽蔑の眼差しで見つめていた。


(全く……こんなのが俺の妹だなんて、最悪だ。お前のせいで俺が恥をかかされているのが分からないのかよ。これだったら、まだサフィニアの方がずっとましだ。メイドの血さえ、入っていなけりゃ妹として認めてやって、可愛がってやってもいいのに……)


そして恨めしい目つきで、楽しそうにダンスを踊るリーネの姿を見つめる。ラファエルは先ほどからリーネにダンスを申し込みしようと考えていたが、セイラのせいで近づくことが出来なかったのだ。


「ところでサフィニアの姿が見えないわね。きっとあんな偽物貴族と踊りたくないから誰も誘わないんでしょうね」


意地悪そうな笑みを浮かべるセイラ。


「そうかもな……」


ヒステリックなセイラを苛立たせないために、適当に相槌を打つ。だが、その理由は分かっていた。


(サフィニアがダンスに誘われないのは、自分が周囲に無言の圧をかけているのに気づいていないのかよ? 本当に、こいつは性格も外見も頭も悪すぎる)


セイラの話はまだ続く。


「ねぇ、サフィニアはダンスが踊れると思う?」


「さぁな。でもずっとメイドとして働いて、貴族としての教育を一切受けていないんだ。多分踊れないんじゃないか?」


「ラファエルもそう思う? 実は私、サフィニアを貶めるいい方法を思いついちゃった。無理やりダンスをさせるの。踊れない無様な姿を大勢の前で晒させてやるわ」


その言葉にラファエルは呆れた。


「はぁ? まだそんなこと言ってるのか? もうサフィニアのことはほっておけよ?  大体そんなことして何になるんだよ?」


「ラファエル! もしかしてサフィニアの味方をするつもりなの!? あいつはねぇ、自分の立場もわきまえずセザールを従者につけてるのよ!? 私の執事なのに!」


「まだ、お前の執事と決まったわけじゃないだろう? 頼むからそんな大声出さないでくれよ。皆がこっちを見てるだろう?」


現に先ほどから子息令嬢たちは、セイラとラファエルをチラチラ見ては、サッと視線をそらせていた。


「全く気に入らないわね……」


その時、セイラはこちらを見ていた令息と視線が合った。彼は素早く視線をそらせたが、時すでに遅い。


「ちょっと、あんた! 確か……マイクだったわよねぇ? 男爵家の……」


セイラは怯えるマイクにズカズカと近づき、ニヤリと笑った――








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