4-2 リーネ侯爵令嬢の誕生パーティ 2
馬車がウィルソン侯爵家に向かって走り出すと、早速ヘスティアが笑顔でセザールに話しかけた。
「セザール様。本日はお迎え、ありがとうございます」
「いいえ。当然のことですから、お礼など結構ですよ」
にこやかに返事をするセザール。
「でも私たちの迎えに来て大丈夫だったの?」
サフィニアは心配になって尋ねた。
「え? 何故そう思われるのですか?」
「だって、セザールはセイラ様の専属執事でしょう? それなのに……私たちの迎えに来ていいのかと思って……」
すると意外なセリフがセザールの口から出てきた。
「僕は別にセイラ様の専属執事というわけではありませんよ?」
「え!?」
「そうだったのですか?」
サフィニアとヘスティアが同時に驚く。
「はい、そうです。専属執事になれるのは成人年齢を迎えてからなのです。僕は現在17歳、まだ見習い執事のようなものなので専属執事にはなれない年齢なのです。ただセイラ様に何かと言いつけられる機会が多いのは確かです。ひょっとしてそれでサフィニア様は僕が専属執事だと勘違いされたのではありませんか?」
「そうだったの。知らなかったわ」
その話を聞いて、サフィニアはホッとした。
「侍女と執事とでは違うのですね」
専属侍女であるヘスティアが感心したように頷く。
「そうですね。執事は屋敷全体のことも管理しなければなりませんから。色々と学ぶべきことが多岐に渡っているんですよ」
「それではセイラ様は誰が付き添っているの?」
サフィニアは一番知りたかったことを尋ねた。
「セイラ様なら、双子の兄でいらっしゃるラファエル様が付き添ってらっしゃいますよ」
「え? ラファエル……様?」
サフィニアは、おぼろげな昔の記憶を思い出していた。4年前、初めてエストマン家の家族に会った時。
セイラとエストマン夫人はサフィニアに対して激怒していたが、ラファエルは感心すら抱いていない様子だった。
「セイラ様は双子だったのですか? 少しも知りませんでした。それでお2人は似てらっしゃいますか?」
双子と言うことに興味を持ったのか、ヘスティアが質問する。
「いえ、双子ではありますが……正直な話、僕としてはお2人は似ているとは思えません。言われなければ、誰も気づくことは無いでしょう。パーティー会場に行けば会えると思いますよ」
セザールはにこやかに答えるが、サフィニアは不安でならなかった。
(セザールはセイラ様のお気に入り。私がセザールに付き添ってもらって誕生パーティーに主席すればイヤな顔をされるに決まっているわ)
「どうかしましたか? サフィニア様、何やら浮かない顔をしておりますが? もしかして具合でも悪いのですか?」
セザールが声をかけてきたが、サフィニアは首を振った。
「いいえ、大丈夫よ。ただ、何だか意外に感じたの。セイラ様がお兄様に付き添いを頼んだことが」
「いえ、セイラ様が頼んだわけではありません。ラファエル様の方から申し出たのですよ。ウィルソン侯爵令嬢の誕生パーティーに付き添いたいと」
「ラファエル様は妹思いの方なのですね」
ヘスティアが感心したように頷く。
でも、サフィニアにはそんなふうには思えなかった。
(そうかしら……? 4年前、初めて会ったときはそんなふうには見えなかったけど。でもあれから変わったのかもしれないし……)
「何故ラファエル様が付き添いを申し出たかは、パーティー会場に着けば分かると思いますよ?」
そしてセザールは意味深に笑みを浮かべるのだった――




