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孤独な公女~私は死んだことにしてください  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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3-3 ヘスティア 3

 5台の荷馬車には家具が積まれており、そのうちの1台からは10人前後の使用人たちが降りて来た。

彼らはセザールの指示で次々と家具を離宮へ運んでいく。その様子を邪魔にならないように外で見守るサフィニアとヘスティア。


(すごい家具の量だわ……もしかしてヘスティアさんの実家から運んで来たのかしら?)


好奇心が持ち上がり、ヘスティアは尋ねることにした。


「あの、ヘスティアさん……」


声をかけるとヘスティアは笑顔で言った。


「私はサフィニア様の侍女になるのですから、どうぞヘスティアとお呼びください」


「そう? ならヘスティアと呼ばせて貰うわね。あの家具、もしかして自分の家から運んできたの?」


するとヘスティアの顔が赤くなる。


「い、いえ……違います。私の家は伯爵家とはいえ、落ちぶれてしまっているので……一切家からは持ってきていません。全て、公爵様が用意して下さいました」


「え!?」


ヘスティアの話を聞いて、サフィニアは驚いた。


(お父様は私には何もしてくれないのに……?)


「公爵様は、優しくて御立派な方ですよね。侍女の私に、あんなに立派な家具やドレスまでプレゼントして下さるのですから。本当に感謝の気持ちでいっぱいです」


「そ、そうね……」


何と返事をすれば良いか分からなかったサフィニアは無難な返事をすることにした。

そこへ全ての荷物を運び終えたセザールが笑顔でこちらへ近づいてきた。


「セザ……」


「セザール様!」


サフィニアが口を開きかけるより早く、ヘスティアがセザールの名を呼んで駆け寄っていく。


「セザール様。家財道具を運んでいただき、ありがとうございます」


ヘスティアがセザールに礼を述べ、頭を下げる。


「いえ、いいのですよ。エストマン公爵からの指示ですから。礼には及びません」


その時、セザールはサフィニアの視線に気づいて声をかけた。


「サフィニア様、今日は突然のことで驚かれたことでしょう。申し訳ございませんでした」


「私なら大丈夫だから謝らなくていいわよ」


するとヘスティアが会話に入ってきた。


「セザール様。私の部屋に案内していただけませんか?」


「ええ、いいですよ。では、ご案内いたしましょう」


「ありがとうございます!」


笑顔で会話をしているサフィニアとセザールの姿を、サフィニアはぼんやりと眺めていた。


「サフィニア様も御一緒しましょう」


不意にセザールがサフィニアに声をかけてきたが、咄嗟に断るサフィニア。


「私はいいわ。まだここでグミの実を摘んでいるから」


「え? グミの実って何でしょうか?」


するとヘスティアが首を傾げる。


「これがグミの実よ」


サフィニアは手にしていたカゴのクロスを外した。そこには摘み取ったグミの実が入っている。


「これがグミの実ですか? 何だか少しだけ形がチェリーに似てますね」


「そうね、確かに味はチェリーに似ているかもしれないわ」


するとヘスティアはニコリと笑みを浮かべた。


「サフィニア様は植物に詳しいのですね? 素晴らしいです。教えていただき、ありがとうございました」


そして次にセザールを見上げる。


「それではセザール様、お部屋に案内していただけますか?」


「はい、もちろんです」


セザールは返事をすると、サフィニアに声をかけた。


「サフィニア様。ヘスティア様を案内してまいります」


「分かったわ」


返事をすると、セザールはヘスティアと一緒に屋敷の中へ入って行った。


2人が去って行く後ろ姿を見つめながら、サフィニアはポツリと呟く。


「……私、どうしてセザールの誘いを断ってしまったのかしら……」


その声には寂しさが滲んでいた――


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