3-2 ヘスティア 2
ヘスティアがポルトスと離宮を去り、再び一人になったサフィニアは庭の手入れを行っていた。
花壇の雑草を取り除き、空いた場所に新しい種を蒔いて水やりをする。ハーブを摘み取り、グミの実を採取しているとき。
ガラガラガラガラ……
馬車が近づく音が聞こえ、サフィニアは立ち上がって振り返り……目を見開いた。
1台の馬車、そして5台の荷馬車がこちらに向かって来ているのだ。
「え……? もしかして、ここへ来るの?」
茫然と馬車が近づく様子を見つめていると、騒ぎを聞きつけたチャド達が家から飛び出してきた。
「一体あれは何だ!?」
「こっちへ来るのかしら?」
「サフィニア様、何かご存じですか」
カーラとジルが尋ねてきた。
「思い当たることなら、一つあるけど……」
先頭の馬車を見つめるサフィニア。
「それはどんなことなんです?」
チャドがサフィニアに視線を向けた。
「さっきポルトスさんが、女の子を連れて来たの。多分私と同い年位だと思うのだけど……その子が私の侍女になるんですって」
「え!?」
「侍女!?」
ジルとカーラが同時に驚きの声を上げたとき、離宮に到着した馬車の扉が開いてセザールが降りて来た。
「あ! セザールだわ」
サフィニアは笑顔で駆け寄ろうとした。
「セザー……!」
馬車から降りて来たヘスティアをセザールが笑顔でエスコートする姿を見て、サフィニアは足を止めた。
「ありがとうございます、セザール様」
ヘスティアは笑顔でセザールに礼を述べている。その姿はまるで……。
「ねぇ、ジル。あの人、すごく可愛いと思わない?」
「カーラも思った? まるでお姫様みたいよね。セザール様とお似合いだわ」
2人は小声で話をしていたつもりだったが、あいにく全てサフィニアの耳に入っていた。
実はサフィニアも、2人と同じことを考えていたのだ。
(そうよ……ヘスティアは私とは違って、本当の伯爵令嬢だもの……お姫様みたいなのも、セザールとお似合いなのも当然だわ)
サフィニアの胸がチクリと痛む。
エストマン公爵家で、自分に親切にしてくれる数少ない存在のセザール。
そのセザールが、何故か遠い存在に感じてしまう。
寂しい気持ちで2人の様子を見つめていると、エスコートを終えたセザールがサフィニアに笑顔を向けて近づいてきた。
「サフィニア様、お待たせして申し訳ございませんでした。ヘスティア嬢をお連れしてまいりました」
すると、ヘスティアは前に進み出てくると再び丁寧に挨拶をしてきた。
「サフィニア様、公爵様にご挨拶が終わりましたので戻って参りました。本日より、お仕えさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします」
「え、ええ。こちらこそ、よろしくね……」
エプロンドレスに、日よけの麦わら帽子をかぶるサフィニア。片や、美しいドレスに身を包んだヘスティア。
(これでは、どちらが侍女か分からないわ……それに私には会ってくれないお父様とは会えたのね……)
サフィニアはヘスティアに対し、羨ましい気持ちが込み上げてくるのだった――




