2-20 セザールの誘い
「……」
サフィニアはリビングから3人が厨房で忙しく働く姿を覗いていた。
「ジル! そこの野菜を運んでくれ! カーラ! 調理器具はこの棚の下だ!」
「「はい!!」」
(皆、忙しそうに働いているのに……私一人、何もしなくて良いのかしら……?)
当初、サフィニアは手伝いを申し出たものの「サフィニア様は座って待っていてください」と言われてしまったのだ。
けれど物心ついた時からずっと働いてきたサフィニア。皆が働いているのに、自分だけ仕事をしていないのは申し訳ない気がしてならなかった。
そこで、サフィニアは再度声をかけることにした。
「あの……私も、何かお手伝いすることは……」
するとチャドが振り向いた。
「サフィニア様はどうか、座ってお待ちください。直に出来上がりますから」
「は、はい」
そこまで言われてしまえば、サフィニアは引き下がるしかなかった。
「……暇だわ」
リビングの窓から外を眺め、ポツリと呟いたとき。
「お待たせしました!」
突然大きな声が室内に響き渡り、驚いたサフィニアは振り返った。すると、トレーに出来立ての料理を乗せたチャドがリビングに現れたのだ。
「どうぞ、サフィニア様。エストマン公爵家の料理人であるチャド特製の朝食です!」
蜂蜜がかかった焼き立てパンケーキに、プレーンオムレツ、サラダに野菜スープ、ベーコン。
「すごい……こんなに豪華な朝の食事は初めてだわ。本当に食べてもいいの?」
恐る恐るサフィニアは尋ねた。
「ええ、当然です。サフィニア様の為に用意したんですから」
「ありがとう……チャドさん」
するとチャドの顔が赤くなる。
「よしてくださいよ。俺のことはチャドって呼んでください。それじゃ、ごゆっくり召し上がってください」
チャドは照れ臭いのか足早にリビングを出て行った。1人になったサフィニアは早速料理を口にしてみた。
「美味しい!」
サフィニアはチャドに感謝しながら、ゆっくりと朝食を楽しんだ――
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朝食後――
サフィニアは中庭でローズが植えたハーブを摘んでいた。本当は掃除の手伝いをしたかったのだが、3人から止められてしまい暇だったからだ。
「このハーブは、香りが良いお茶になるのよね」
摘んだハーブの香りを吸い込んだ時。
「こちらにいらしたのですね? サフィニア様」
背後から声をかけられ、サフィニアは振り返るとセザールが笑顔で見下ろしていた。
「こんにちは、セザール。今日も来てくれたの?」
サフィニアは立ち上がると笑顔で挨拶した。
「はい、サフィニア様にご用があって伺いました。何をされていたのですか? ひょっとしてお忙しかったでしょうか?」
「いいえ、忙しくないわ。むしろ暇なくらいよ。皆が私に仕事はしなくて良いと言うから、何もすることが無くなってしまったの。だからここでハーブを摘んでいたのよ」
「確かに、ここは良い香りですね……。でもお暇なら、良かった。これから一緒に町へ買い物に行きましょう」
「え? 買い物? でも私、お金が……」
「お金の心配なら無用です。旦那様から預かっておりますから」
「え? お……父様が?」
遠慮がちにサフィニアが口にする。
「はい、そうです。サフィニア様の支度金として預かっているんです。では、早速参りましょう。もう、馬車を待たせてあるのですよ?」
セザールは笑顔をサフィニアに向けた――




