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孤独な公女~私は死んだことにしてください  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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2-14 懐かしい我が家

 ガラガラガラガラ……


サフィニアはポルトスと一緒に馬車で離宮へ向かっていた。


「ポルトスさん。離宮へ行くのにわざわざ馬車を出していただいて、ありがとうございます。


向かい側に座るポルトスにお礼を述べた。


「いえ。礼には及びません。サフィニア様はエストマン公爵家の御令嬢でいらっしゃいます。馬車を出すのは当然のことですから」


笑顔で返事をするポルトス。


「でも歩いていける距離なのに、何だか申し訳ないです」


「え? 離宮から本宅まで歩かれたことがあるのですか?」


その話にポルトスは目を見開いた。


「はい、ママが亡くなったとき……手紙を持って公爵邸まで行きましたから」


「何と……そんなことがあったのですね? さぞかし、お辛いことだったでしょう」


「辛かったけれど、ママのことを知らせに行かなくちゃって気持ちの方が強かったの」


淡々と語るサフィニア。


大人の足でも歩けば、20分程かかる。それなのに、当時まだたったの6歳だったサフィニアが離宮から本宅へ1人で向かった。その時のことを想像するだけで、ポルトスの胸は痛んだ。


「サフィニア様、今更ですが本当に申し訳ございませんでした。今後は少しでもサフィニア様の待遇が改善されるように努力してまいりますので、もう少しだけ辛抱なさっていただけますか?」


「どうして謝るのですか? 私、本当にポルトスさんには感謝しているんですよ? なのでどうか謝らないでください」


「サフィニア様……」


笑顔で話すサフィニアは気品にあふれ、セイラよりもよほど公爵令嬢らしく見えたのだった――



****


「まぁ……懐かしいわ……!」


離宮に到着し、馬車を降りたサフィニアは感嘆の声を上げた。4年ぶりに戻って来た離宮の周囲は緑に覆われ、長く伸びた蔦は建物を這って上まで伸びている有様だ。


その姿に、ポルトスは思わず眉を顰めるも、サフィニアは笑顔だった。

なぜならサフィニアにとって、ここは大好きだった母と幸せな思い出が詰まった大切な場所だったからだ。


(嬉しい……また、ここで暮らせるのね……)


するとポルトスが謝罪してきた。


「申し訳ございません。サフィニア様が離宮を離れた後、ここはすっかり手つかず状態となっておりました。本来であれば奇麗に整えてからサフィニア様をお連れするべきだったのですが……まずはメイドの仕事から解放して差し上げたかったのです。ご不便でしょうが、少しの間我慢していただけないでしょうか?」


ポルトスがサフィニアを早急に離宮へ連れてきたのには理由があった。

昨夜行われた集会はサフィニアの話で持ち切りだったからだ。


何故、まだたった10歳の下級メイドが完璧なお茶を淹れることが出来るのかが話題になった。

そして一部のメイドたちの間で、サフィニアだけが特別に教育を受けているに違いないという結論に至り、妬みや不満を露にするメイドたちが現れたからだ。


集会に参加していたポルトスはサフィニアの身を案じ、集会後にクララにだけはサフィニアの出自を明らかにしたのだった。

クララは驚いがすぐに理解を示し、サフィニアをあまり長く東棟に置かない方が良いと判断した。

そこで急遽、サフィニアを離宮へ移すことを決めたのだった。


まだ何も整備していない離宮に連れてくるのは不本意だったのだが、彼の心配は皆無だった。


「嬉しいです、ポルトス様! 私、メイドの仕事が無くなって暇だったんです。早速大掃除から始めますね」


満面の笑みを浮かべるサフィニアだが、ポルトスは驚いた。


「え? ご自分で掃除をされるのですか? もう少しお待ちいただければ人を手配いたしますが」


「ありがとうございます。でもこれから私が暮らす離宮なので、自分でやれそうな場所は掃除します。いえ、させて下さい」


「わ、分かりました。ではなるべく早く人を寄こせるように尽力しますので、もう少々お待ちください」


そしてポルトスは馬車に乗って去って行った。


「さて、それじゃ早速お掃除を始めましょう」


馬車が見えなくなるまで見送ると、サフィニアは笑みを浮かべて離宮を見上げた――





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