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孤独な公女~私は死んだことにしてください  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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2-12 突然の話 1

――翌朝



下級メイドであるサフィニアの仕事は洗濯から始まる。毎朝5時に起床し、朝の支度を終えるとリネン室に洗濯物を取りに行くことになっていた。


そこでサフィニアはいつものようにリネン室に洗濯物を取りに向かった。


「おはようございます、今朝の洗濯物を取りに来ました」


顔を覗かせるとリネン室担当メイドのドナが目を見開いた。


「まぁ! サフィニアじゃないの! おはよう!」


「はい、そうですけど……?」


普段ドナは愛想が悪い。声をかけても返事もせずに、洗濯物が入ったカゴを指さすだけなのだが今朝はどういう訳か、笑顔で声をかけてきた。


「洗濯物を取りに来たのね? でも、もう今日からは洗濯物はしなくていいのよ? あなたはこの担当から外れたのだから。昨夜のメイド集会で決定したのよ」


メイド集会とは仕事上の重要な話し合いをする際に開かれる集会のことで、参加できるメイドは18歳以上と決まっている。

当然まだ10歳のサフィニアには集会に参加できる資格はない。


「え? そうなのですか? 少しも知りませんでした」


「知らなくても当然よ。昨夜突然話し合いで決定したのだから」


相変わらずニコニコ笑顔のドナ。


「でも、何故突然洗濯係から外れたんですか?」


サフィニアは7歳になってからずっと、午前中は洗濯の担当をしていた。それが何故突然洗濯担当から外されたのか理解できなかった。


「それはね……」


ドナが説明しようとしたとき。


「おはようございます!」

「洗濯物を取りに来ました!」


背後から声が聞こえてサフィニアが振り返ると、カーラとジルがリネン室に現れたのだ。


「え?」


サフィニアは驚きで目を見開いた。


「あ、サフィニア。おはよう」


「今日から私たちが洗濯係をすることにしたのよ」


カーラとジルは笑顔でサフィニアに話しかけてきた。


「え? でも……」


メイドの仕事で最もきついのは洗濯だと言われている。誰もがやりたがらない仕事で、たいていは新人か一番格下のメイドが担当することになっているのだ。


「サフィニア、昨日はちゃんとお礼を言えなくてごめんなさい。あなたのおかげで、私もジルも罰を受けることもクビにされることもされずにすんだわ」


「サフィニアは私たちの恩人よ。本当にありがとう。だから2人で話し合って、私たちがサフィニアの代わりに洗濯係をすることにしたの」


カーラとジルが交互に事情を説明した。


「それだけじゃないわ。昨日のお茶会の件で侍女長が旦那様にこっぴどく叱られて、鞭打ちの罰を受けたの。挙句にクビになって屋敷を追い出されたのよ」


「え!? ほ、本当ですか!?」


ドナの話に、サフィニアは驚きで目を見開いた。


「ええ、そうよ。これもサフィニアのおかげよ。侍女長は私たち下級メイドをいつも見下していたから、皆侍女長を嫌いだったのよ」


「そうだったのですか……」


普段侍女長と接することが無かったサフィニアには初耳だった。


「私たちも知らなかったの。まさか侍女長があんなに意地悪な人だったなんて」


「その話を聞かされた時、ショックだったわ……」


ジルとカーラは神妙な顔つきになる。


「ほら、もうおしゃべりはここまでよ。ジル、カーラ。洗濯物を持って行きなさい。時間が無くなるわよ」


「「はい」」


2人は返事をすると、洗濯物の入ったカゴをもってリネン室を出て行った。


「あの……私は、どうすればいいでしょうか?」


残されたサフィニアはドナに尋ねた。


「あなたは、今日は仕事をお休みしていいわよ。昨日はお手柄だったからね。メイド長から、サフィニアが来たら伝えてほしいって言われているの。部屋に戻っていなさいよ」


「……はい、分かりました」


サフィニアは頷くと、リネン室を後にした。


本当に今日は仕事をしなくていいのだろうかと、戸惑いながら――






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