2-8 お茶会 4
3分計り終えたサフィニアは蓋を開けてティースプーンで軽く1回混ぜた。
そして重いティーポットを右手だけで持ち上げる。
その姿に、全員が驚いて目を見張った。
(う、嘘でしょう……あんなチビが片手でティーポットを持つなんて……!)
セイラは言葉を失っていた。
紅茶を別のティーポットに注ぎ入れるサフィニアの流れるような所作は、子供とは思えないほどに見事だった。
次にサフィニアは、セイラ達の見ている前でティーカップに紅茶を注いだ。
腕を少しだけ上げて、水滴が跳ねないように注ぐサフィニア。
音も立てず呼吸しているのも分からないほどの静かな動作は、まさにメイドという立場をわきまえていた。
3人分の紅茶を均等に淹れると、サフィニアは紅茶をそれぞれの左側から静かに置いていく。
そして全員に紅茶を配ると一礼した。
「どうぞ、お飲みになって下さい」
サフィニアの紅茶の淹れる姿に見入っていたセイラはその言葉で我に返った。
「ふ、ふん! 紅茶をいれる姿は、まぁまぁだったけど……問題は味よ! 味!」
するとマリーがカップを持つと、匂いを嗅いだ。
「良い香りだわ……」
「マリーさんもそう思いますか? 私も同じことを思っていました」
クレアもカップを持つと、紅茶を口にした。
「……美味しい……とても美味しいわ!」
クレアの様子を見ていたマリーも紅茶を飲んだ。
「本当……なんて美味しいの。家でもこんなに美味しい紅茶を飲んだことが無いわ」
「ありがとうございます」
口元に少しだけ笑みを浮かべ、会釈するサフィニア。その姿を尊敬の眼差しで見つめる2人のメイド。
この様子を目の当たりにしているセイラは非常に面白くなかった。まさかクレアとマリーがサフィニアの紅茶を褒めるとは思わなかったのだ。
「な、何よ! こんなの普通の紅茶じゃない! 美味しいかどうか、私が確認するわ!」
セイラはティーカップを持つと、紅茶を口にし……目を見開いた。
(う、嘘……何。この紅茶……こんなに香りがするのに、少しも渋みを感じないし、それにとても飲みやすい……)
しかし、サフィニアに罰を与えようとしていたセイラは紅茶が美味しかったことを認めたくない。自分のプライドが許せなかったのだ。
そこでセイラはカップをソーサーに戻すと、サフィニアを鋭い目つきで睨みつけた。
「ふん! あれほど強気な態度を取るから、さぞかし美味しいと思ったけど……まるで普通じゃない! これじゃ認められないわね」
「!」
サフィニアの小さな肩がピクリと跳ねる。
「でもまぁ不味いわけでも無かったから……そうねぇ、鞭打ち10回で見逃してあげるわよ。特別にね」
「「そんな……!」」
カーラとジルが悲痛な声を上げた時。
「お待ちになって下さい、セイラ様」
突然クレアが口を挟んできた。
「何かしら? クレア様」
「嘘をつくのはよろしくありませんよ? セイラ様」
「ええ、私もそう思います」
マリーが賛同した。
「う、嘘って……一体それはどういう意味なのかしら?」
セイラは強めの口調で2人の令嬢を見つめる。
「本当に、紅茶が美味しくないのなら……そんなに綺麗に飲み干すことなどありませんよね?」
クレアがセイラのカップを指差す。
「え!?」
セイラは自分のカップを見下ろした。
その中身は……綺麗に飲み干されていた――




