2-5 お茶会 1
――15時
「こちらが本日のお茶会の会場よ。この庭は我が家自慢の庭なの」
ピンク色のドレスを着たセイラが2人の令嬢を連れて、園庭に姿を現した。
「まぁ、素敵なお庭ね」
「ええ。さすがはエストマン公爵家だわ」
美しいドレスに身を包んだ令嬢達は、感心しながら庭を見渡す。
「フフ、ありがとう。このバラ園を抜けると、ガゼボがあるの。そこで庭園のバラを楽しみながらお茶にしましょう」
セイラの言葉に、2人の令嬢は嬉しそうに笑う。
「楽しみだわ」
「どんなお茶がいただけるかしら」
案内する令嬢たちの楽しげな様子を窺いながら、セイラは心の中でほくそ笑んでいた。
(ふん、あんたたちが普段から私のことを頭が悪いだとか、太ってスタイルが悪いと周囲に言いふらして笑い者にしているのは知っているのよ。だからお茶も満足に淹れられないような下級メイドに、お茶会の用意をさせるよう命じたのよ。せいぜい不味いお茶を飲むがいいわ。そして私はあんたたちが嫌がる様子を見て、腹いせにお茶を用意したメイドに鞭打ちの罰を与える……我ながら素晴らしい考えだわ)
しかし、セイラはやはり頭が弱かった。
本日お茶会に招いた令嬢たちは、いずれも名家で名の通る伯爵家の令嬢たちなのだ。
彼女たちを相手に素人の淹れたお茶を飲ませれば、エストマン公爵家の名に傷が付くとは考えてもいなかったのだ。
「あ、あの白い建物がガゼボですね?」
令嬢の1人であるマリーが、バラ園の奥に見えるガゼボに気付いた。
「まぁ、素敵な造りをしていますねぇ。あそこで美味しいお茶がいただけるのですね?」
もう1人の令嬢、クレアがセイラに尋ねてきた。
「ええ、とびきりのおもてなしをさせていただくわね」
笑顔で返事をしながら、セイラはこれから2人の令嬢に嫌がらせが出来ることにワクワクしていた。
(フフフ……侍女長には最低限なお茶の淹れ方だけ教えるように伝えておいたから、きっとガゼボに行ったら、驚くに違いないわ。こんな素敵な青空の下で、マリーとクレアに嫌がらせ出来るなんて最高の気分だわ」
セイラは青空を見上げた時。
「まぁ! あれが御茶会の席なの!?」
マリーが驚く声で、セイラはガゼボに視線を移し……目を見開いた。
「な、何……あれは一体どういうことなの……?」
セイラはガゼボを見て、愕然とした。
ガゼボの入口にはピンク色の花が飾り付けられている。
テーブルには真っ白なテーブルクロスがかけられ、中央には美しい水色の花が花瓶に飾られている様子が見えた。
ガゼボの外では、カーラとジル。そしてサフィニアが待機している。
「なんて素敵な演出なのかしら……驚きましたわ、セイラ様」
クレアが感嘆の声を上げる。
「え、ええ。どうかしら? 気に入っていただけたかしら?」
セイラは返事をしながら、すっかり動揺していた。
(何よ、一体どういうことなのよ! さては侍女長の入れ知恵かしら……? 余計なことは一切教えるなと命じていたのに……まさか私の命令に背いたっていうの……?)
セイラたちがガゼボに到着すると、サフィニアが両手を前に添えて挨拶をした。
「ようこそ、お待ちしておりました。どうぞ中へお入り下さい」
そして会釈すると、カーラとジルもサフィニアを真似て会釈した。
「あら、随分小さい子がメイドをしているのね?」
「エストマン公爵家では、こんなに小さい子でもメイドの勤めを果たしているのね。素晴らしいわ」
マリーとクレアが感心する様子を見せた。
「そ、そうかしら? それでは席につきましょうか?」
セイラは内心の動揺を隠しつつガゼボに入ると、令嬢たちも後に続いて着席した。
「では、早速お茶を淹れてもらおうかしら?」
セイラは鋭い眼差しをサフィニアたちに向けてきた――




