2-2 侍女長
「そんな……! それじゃ、私達もヘマをしたらクビにされてしまうってことですか!?」
「困ります! 私……家に借金があるから働かなくちゃいけないんです!」
2人の年上メイドたちは、悲痛な声でクララに訴えた。
「あなた達の言い分は分かりますが、これはセイラ様の命令なのです。私達は、このお屋敷に雇われているので、命令に従わなければなりません!」
するとそこへ、髪を結い上げたドレス姿の中年女性が現れた。
「騒がしいことですね。クララ、人選は決まったのかしら?」
するとクララが慌ててお辞儀をした。
「こ、これは侍女長様! お見苦しいところをお見せしてしまい、誠に申し訳ございません!」
「え!? 侍女長!」
「ま、まさか!」
2人のメイドは頭を下げ、サフィニアも同様にお辞儀をした。2人はすっかり怯えた様子で頭を下げている。
しかし、それもそのはず。
ここは下級使用人たちが暮らす場所であり、公爵夫人や子息令嬢に直に仕えている人物なのだ。
「全員、顔を上げなさい」
侍女長の言葉にサフィニアたちは顔を上げた。
「あなた達が今日、セイラ様にお茶を出すメイドたちね? 随分小さいメイドもいるようだけど……まずあなたから名前を言いなさい」
侍女長は茶髪のメイドに視線を向けた。
「カーラ……です」
「それじゃ、あなたは?」
「私は……ジルです」
黒髪メイドが返事をする。
「そう、カーラとジルね。それじゃ、あなたの名前は何?」
侍女長はカーラとジルを一瞥すると、次にサフィニアに声をかけた。
そこでサフィニアはスカートの裾を両手で持ち上げ、片足を後ろに引いて膝を軽く曲げて挨拶をした。
「はじめまして、侍女長様。私の名前はサフィニアと申します」
すると、侍女長が目を丸くする。
「まぁ! あなた……まだ小さいのに、カーテシーが出来るのね!? 素晴らしいわ!」
一方、初めてみる挨拶に呆気に取られていたのはクララたちだった。
ましてや、「カーテシー」という言葉も初耳だった。
「まぁいいわ。挨拶はそれくらいにしておきましょう。それより、お茶会までもう時間が残されていません。今から徹底的にあなた方にはお茶の淹れ方とお客様にお出しするお茶菓子の出し方を教えるので、動きを身体に覚え込ませなさい!」
「は、はい……」
「分かりました……」
ガタガタ震えながら返事をするカーラとジル。
「はい、侍女長様」
はっきりと返事をしたのは、サフィニアだけだった。すると侍女長はジッとサフィニアを見つめる。
「……返事が良いわね。まだ小さいのに……それに、良い名前だわ」
そして侍女長はクララに視線を向けた。
「クララ。今からこの子達を借りるわね」
「はい、侍女長様」
再び侍女長はサフィニアたちを見つめた。
「では、カーラ。ジル、それにサフィニア。今からお茶会の接待方法の訓練を行います。お茶会はガーデンスタイルで行われます。場所を変えるから、ついてらっしゃい」
「「「はい」」」
3人は同時に声を揃えて返事をした。
そして侍女長によるお茶出しの厳しい訓練が始まったーー




