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孤独な公女~私は死んだことにしてください  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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1-25 無謀な命令

 サフィニアが少女のメイド達に連れて来られた場所は裏庭にある鶏小屋の前だった。


鶏小屋は大きく、中には10羽前後の雌鶏と雄鶏が羽をバサバサとはばたかせて鳴いている。


ここで、ようやくドリューは掴んでいたサフィニアの腕を放した。


「いい? 今日のあんたの仕事はここの鶏小屋の掃除よ! 分かった!?」


大きな声で命令するドリュー

そしてその様子をクスクス笑いながら見ている3人のメイドの少女達。


「そ、そんな……出来ないよ……」


ガタガタ震えながら首を振るサフィニア。


「はぁ!? あんた何言ってるの!? メイドが働くのは当然でしょう! 出来ないとは言わせないわよ!」


怒鳴りつけられ、サフィニアの小さな肩がビクリと跳ねる。


「だって……そ、掃除ってどうやればいいの……?」


半分涙目になるサフィニア。その姿は、ますます4人の少女たちの嗜虐心を煽る。


「そこにあるシャベルで床のゴミや鶏の糞をすくって麻袋に捨てるのよ! そして新しいおが屑を敷きなさい! 終わったら水と餌やりもするのよ! 道具や材料は全て隣の小屋にあるわ。いい? 掃除と餌やりが終わるまでは絶対にこの場所から離れることを許さないからね!」


「え……わ、私1人で……?」


「当然よ! あんたはメイドなんだから!」


腰に腕を当ててふんぞり返るドリューを見て、残りのメイド達は小声でひそひそと話し合いを始めた。


「ねぇ……いくら何でも1人で鶏小屋の掃除は無理なんじゃないかしら?」


「私もそう思う。大体メイドの仕事じゃないわよね?」


「そうよ、これはフットマンの仕事よね」


けれど、彼女たちの会話はサフィニアの耳には届いていない。が……ドリューにはしっかり聞こえていた。


「うるさいわよ! あんた達! それより早く食堂に戻るわよ。あんまり遅く行くと、食事抜きになるわ」



ドリューは踵を返して屋敷へ向かって歩き始めた。その後をついて行く3人のメイド達。


「待って! 私1人じゃ掃除出来ないよ!」


サフィニアはメイド達の後を追いかけた。すると……。


「ついて来るんじゃないわよ!」


ドリューは叫び、追いすがってきたサフィニアを突き飛ばした。


「あっ!」


身体の小さなサフィニアには、たまったものではなかった。

そのまま飛ばされ、音を立てて地面に倒れこむ。


ドサッ!


途端に、サフィニアの全身を痛みが走る。


「ウゥ……い、痛い……ウッウウ……」


余りの痛みに、サフィニアの目に涙が浮かぶ。


「ちょっとドリュー……やり過ぎじゃない?」


「あの子、怪我したかもよ?」


「どうするのよ。泣いてるじゃない」


メイド達は口々とドリューを批判した。


「う、うるさいわね! フンッ! 大体大袈裟なのよ! わざとらしく転んだりして……演技しても無駄なんだからね! ほら、あんたたち! 行くわよ!」


4人は地面にうずくまって痛がっているサフィニアを置き去りにして、急ぎ足で去って行った。



少しの間サフィニアは痛みで動けなかったが、ようやく身体を起こした。


「う……ハァハァ……」


本当は痛くて声を上げて泣きたかったが、神父との約束がある。


「な、泣いちゃ駄目……ママが心配して神様の元へ行けない……もの……」


目に一杯涙を溜めて自分に言い聞かせるサフィニア。

何とか立ち上がった時。


「いたっ!」


膝に激しい痛みが走った。恐る恐るスカートをまくって膝を見てみると、左の膝が擦り剝けて、血が滲んでいる。


「うう……痛い……」


(痛いよぉ……ママ……怪我を治してよ……痛くないよって抱きしめてよぉ……)


けれど、それは叶わない願い。

サフィニアは、こぼれ落ちそうになる涙を袖で拭うと、痛みを堪えて鶏小屋を見つめた。


「お掃除……しなくちゃ……」


サフィニアは痛む足を引きずりながら、鶏小屋へ向かった——





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