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おとつーのそれから その1 通信のそれから

ざまぁが終われば、……からの〜♡が待っている。


おとつーに幸あれ!に突入です。

「聞きまして?ミリア様の……」

「前代未聞だよなあ。ローランも馬鹿だ」


「せっかくの美女と伯爵が手に入ったのに、恋に狂ったってか」

「……ですって。それで写真が……のシーンを」

「まあっ!はしたない、貴女ご覧になったの?」

「だって、乙女通信にも、しっかり載っていたのですもの!」



戴冠式が終わり、関連式典や行事が滞りなく終わると、ようやく学園も授業が始まった。


学園は、噂話で何処も彼処も、騒然としていた。

何せ、未成年なので、前夜祭の一件は、上位貴族の子息子女しか見聞していないのだから。親や知り合いから伝わる話を擦り合わせるのに懸命だった。


とりあえず、

ミリア・ダンブルグは、郊外にある教会で既に髪を落とさせられ、蟄居している、らしい。


ダンブルグ家は、爵位と領地を剥奪された。当主の公爵は牢に入れられた。ダンブルグ一族の行方は、誰も聞かないし問わない。


エルンストは、祖母の王太后が後見となり、離宮で過ごしているそうだ。

いずれ、オクタビアの養子になり、王太后の実家のリシリュー侯爵に降ろす王命が出された。王族から侯爵への降格は厳しいが、エルンストたっての希望だそうだ。


ヴィルム殿下は、

不埒なスライドを天下の夜会に出したカドで、執務と言う名の罰を尚書長官から喰らって欠席。

今後は、王太子候補としての教育が始まる。


写真の被写体アンリ・フラットは、

その後のミリアとコールの写真の凄さにかすんで、お咎めなし。

本人は、オージエに気絶させられて憤慨しているが、一件の顛末(てんまつ)を知り、真っ青になった。


但し、

「君、あれだけ伯爵令嬢との仲を貴族社会に見せつけたんだから、責任は取らなくてはね」

と言うオージエのからかいに、真剣に悩んでいるそうだ。あれだけ賢いのに女にはからっきしだね、と、オージエに面白がられている。


そのアンリもヴィルムに引っ張られて、欠席。


そして、シャロンは、事情があって、明日からの登校だと級長に知らされた。これも、不在。


と、なると、


「ねえ、おとつー達は、登校したの?見まして?」

「おかしいわ。寮生ですのに、見ておりません」

「あの方々から、詳細を伺わなくては、授業なんて受けられませんわ!」



……いや。

登校はしている。


学園長室に。



「私はかなり長いこと目を瞑ってきたつもりだよ、ジュゼッペ」


学園長は静かに静かに、切り出した。


長椅子に三名、ちょこんと座り、向かい側の学園長と中等部長に睨まれている。


「はい。

今回ばかりは、覚悟してます。

ですが、私の一存でやった事。

この二人は、何ら関与しておりません」


その言葉に二人がピーチクパーチクする。

「何言ってんの!私がイラスト描かないで、出来るわけないっしょ!

御屋敷の見取り図は私の力作!」


「写真は扇情的ですけど、記事はいつもよりお堅い文にしましたわ」

「そうよおー。ミリア達のせいだしー。学園に迷惑かけてないじゃん」


ダン!


と、中等部長は机を叩いて、三人は3センチお尻が浮いた。


「どんなに文章がお堅くても、あの写真を載せる必要ありますか?

大体、『乙女通信』とタイトル付けた時点で、学園に迷惑どころじゃない困難を突きつけといて!」


「挙句、夜会でばらまいたとは……」


「あらあ、ばら蒔いたのは私と父ですわ」

現れたのは、セリーナ・フィッセルである。


「ノックもせず申し訳ありません。学園長のお声が、扉の向こうまで届いておりましたので」

セリーナはしれっと謝るが、絶対タイミングを図っていたに違いない。


「そうそう。

あれは私のアイディアなんだ。

そこの女生徒方には関わりないよ」

「「皇嗣殿下!」」


セリーナの後ろから現れたのはフィッセル公爵。皇嗣殿下である。

学園長と部長は慌てて立って、二人に上座を譲った。


クッションをメイドがさりげなく替えて、お二人を座らせる。


「学園長。

あの件は、全てフィッセルに非がある。フィッセルが彼女らに命じ、フィッセルがばら蒔いた。

エラントを……王家を救う為に」

皇嗣殿下は、直截に告げる。


「殿下。貴方が乙女通信を作らせたと?一体……」

「詳細は言えない。

聞けば君たちの首が飛ぶだろうからね」


そんな脅しをさらっと言うのだから、この人も恐ろしい。


「ヴィルムのスライドだけでは、密会の詳細が伝わりませんもの。誰かが、止められず咎められず説明しなくてはなりません。

……学園長。貴方もあの会にいらっしゃったはず。それこそ別室へ話を持ち込めば、翌日の戴冠式どころでは無くなりますからね。一気に知らしめるには、最適だったと思いませんこと?」


違う。

キャロラインは回想する。

エルンストは全てを打ち明けてくれた。

不実なミリアを切るだけでは、逆上したダンブルグがどんな手段に出るか不確定。

あのマルグリットですら独立を疑われたのである。大きくなった公爵家が反旗を翻せば、下手をすれば内戦となる。



そのくらい、ダンブルグは大きくなりすぎた。

ミリアを断じる。と、同時にダンブルグを封じる。でなければ、何らかの準備がなされてしまう。

だから父子を同時に断じる。

それが、エルンストの、いや王家の総意だったのだ。


(国を治めるとは、これ程に臆病かつ大胆、狡猾かつ誠実、滅私であり傲慢でもある……それに私が耐えられると思うかい?)


エルンストの自虐的な言葉が甦る。


思わないから、貴方に与したのよ……



「いやあ、ヴィルムには焦ったよ。慌てて、娘と取り敢えず上に、と、隠し扉から非常階段を上がって、大天井に一番近いバルコニーに出たんだ。

で、バラバラバラッとね。

ふふ。紙が雪のように舞い落ちるのを上から見るのは壮観だったねえ!」

「ええ。面白かったですわね」


そうして、はははおほほ、と笑う親子に圧倒され、学園長も部長も呆然としていた。


(この方、ヴィルム王子に似てる)


真実は、少し異なる。

キャロラインが、取り上げられた乙女通信を皆に知らしめようと、ウロウロとフィッセルを探していると、その本人に手招きされて、

一緒に上にあがったのだ。


そして、ばら撒く時の嬉しそうなフィッセル殿下の有り様をしっかり目撃したのである。


その無邪気さと、ぞくりとする狂気と……


(キャロラインさん。

王家って、意地の悪い一族なんだよ?)


ああ、ヴィルムが大叔父に似たのか。へらへら人懐こそうだが、絶対腹は違うと思うわ……


「と、言うわけで、国王からは、軽はずみな振る舞いをしたと私はお叱りを受け、始末書を書いた。尚書長官にも、乙女通信の全責任は私にあると出したのだから」


皇嗣殿下は、にっ、と、笑って


「この子達は、全く処分はない。

王宮においても、学園においても。宜しくね」


そして、さっさと帰り支度をした。


「ねえ、次からは高等部にも配布してね!

生徒会には通しておくから、宜しくね」

というセリーナを伴って。


あんぐりして見送るのは、学園長と部長、そして勿論おとつーも、だった。


(既に、高等部の女主人に収まってんじゃ……)

((激しく同意))



さあ、そのあとの教室は、休み時間毎に、4年生クラスに、わらわらと人が集まった。

キャロラインとビアンカを捕まえて、あれやこれや聞き出すためだ。


2限目、3限目、4限目の休み時間と来て、流石に三人はキレた。


「わかりました!

乙女通信を発行します。

詳細はそこで!

も、絶対、私達、喋らないわよ!」


「記事を読んでね、記事を!

話を脚色しないでね!

シャロンの名誉に関わるんだから!」


二人がそう叫んで、

あれ、そういえばシャロンは?

と思い出したその時、



「ザビーネーッ!

ザビーネ・ライグラス嬢ーっ

どーのー部屋だあ〜〜!」


という、男の声が響いた。


「中庭?」「中庭だ」

「中庭に男が」


キャロラインが廊下の窓を見下ろすと、三方を建物に囲まれた中庭から、男性が上を見上げている。


「……あれって……」

「マルグリット伯爵?」


その男は、まごうかた無きマルグリット伯爵であった。


次回、想像通り

です。

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