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Truth Of Legend  作者: 座敷猫
第二章:城塞都市クヴィスリング編

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36/59

31話:修羅場の訳

〜前回のあらすじ〜

かつての仲間────シオンと再開した矢先、バラバラだった状態から復活を果たした敵……全能のフォルリア。

シオンと二人で応戦するも、次第に追い詰められ……後がなくなった時、一人の騎士が助けに入った。

一角獣の騎士────グラシア。

彼女の登場によりフォルリアは撤退し、絶体絶命の危機をアルス達は乗り越えたのだった……。

 強大な上級魔族────"全能のフォルリア"が去った後……勇者アルスはシオンと共に、一人の騎士(きし)誘導(ゆうどう)されて戦いの場から移動していた。


 スーヤ騎士団の一角獣の騎士(ユニコーンナイト)……グラシアと名乗る女性に。

 後ろで一つに(まと)めた長い白金(プラチナブランド)の髪を(なび)かせるその後ろ姿はアルスよりもやや大きいもので、女性でありながら頼もしさが感じられる。


 その背中を追っていくと……待っていたのは彼女の仲間と思われる修道服(しゅうどうふく)甲冑(かっちゅう)を身に付けた者達が、一般市民や兵士等の多くの人々を治療(ちりょう)している光景。



 ────思わず(ほう)けていると、不意に群衆(ぐんしゅう)の中から「アルス!!」と自身を呼ぶ声が聞こえた。


「レヴィン!無事だったか」

「うんっ!危なかったけど、スーヤ騎士団の人達が助けてくれて……」

「俺達と同じか…… それで、フィルビーとウォルフは?」

「ウォルフは怪我(けが)した人達と一緒に治療を受けてるわ……フィルもそれを手伝ってるの」

「……そうか」

「あのさ……ところでその子は?」


 再会した仲間である……明るい金色の髪を持つ少女レヴィンに気になっていた事を確認した後、彼女が遠慮(えんりょ)がちに言及(げんきゅう)してきたのはアルスの(となり)にいたシオンの存在。



「あぁ、彼女は……」

「……アルス殿(どの)


 答えようとしたところ、不意に間に挟まる女性の声────その主は、いつの間にか何処(どこ)かへと姿を消していたスーヤ騎士団の騎士……グラシアだった。



 改めて近くで観察(かんさつ)すると……その端整(たんせい)な顔立ち、冷たい印象を受けるやや(するど)い目つき、そして異種族(いしゅぞく)である()()()特有の(とが)った耳が目を引く。


 ……そんな彼女とその後ろに立つ一角獣(ユニコーン)の姿を見て、レヴィンは「えっ…!?」と驚きの声を上げる。


「グラシア様……!?それに一角獣(ユニコーン)まで……すごい、初めて見た……」

「……知ってるのか?」

「う、うん……スーヤ騎士団の中でも一角獣(ユニコーン)に選ばれた筆頭格(ひっとうかく)の騎士様よ」

「なるほどな、通りで……」


 "スーヤ騎士団(きしだん)"

 大陸中央に位置する大国()()()()()()(よう)する大陸最強と(うた)われる騎士団。

 グラシアと同じ……エルフ族を中心に構成された少数精鋭(しょうすうせいえい)の組織で、その強さと成り立ち(ルーツ)から大陸において強い権威(けんい)(ゆう)しているらしい。


 そんな騎士団の筆頭格……先程の上級魔族(フォルリア)との戦いぶりを見れば、その事に疑いの余地(よち)はない。


 ────レヴィンの説明にアルスが納得を示す一方、グラシアは「大袈裟(おおげさ)だ……」と軽く咳払(せきばら)いをして口を開く。


「それよりアルス殿……報告を受けた盗賊(とうぞく)の件についてだが、此方(こちら)の方で身柄を拘束(こうそく)させてもらった……処遇(しょぐう)については我が国での審問(しんもん)の上、決めさせてもらう」

「助かる……礼を言わせてほしい」

「結構、当然の事をしたまで……それより君も怪我人(けがにん)だ……長話もいいが、早く治療を受けてくるといい」

「あ、あぁ……」


 話の途中(とちゅう)だったものの、有無(うむ)を言わさぬグラシアの迫力(はくりょく)に押され……(うなが)されるままにアルスは群衆の方へと向かって行った。



 ・・・



「アルスさん……っ」


 騎士団員からの治療を受けた後、不意に後ろから聞こえたのは聞き覚えのある女性の声。

 振り向かなくても、その声の主が誰かアルスには分かる。


 大陸南部のヴァイゼン村で会った聖職者(せいしょくしゃ)の少女……フィルビー。

 彼女は今にも泣きそうな表情でゆっくりと此方(こちら)に近づき……


「……ぇ」

「フィル!?」


 ────ただ優しく、抱擁(ほうよう)してきた。


「よかった……!私、もしかしたら……もう会えないかと……!」

「……」


 (あま)りに予想外かつ突然の行動に思考が停止するアルス……そんな彼に、彼女から掛けられたのは自身の身を(あん)じる言葉。

 その今にも消え入りそうな声色からは、先程(さきほど)別れた時と同様……仲間を失う事への恐れが垣間見(かいまみ)えた。


「心配を掛けてすまない……ところでその、近い……」

「あ……ごめんなさいっ!」


 不安にさせてしまった事を謝りつつ、距離が近すぎる事をドギマギして指摘すると、フィルビーは顔を赤らめて身を(はな)す。



「あなた……」

「え?」


 ────そんな彼女に対し、何を思ったのかシオンは近づき……まじまじと顔を見つめていた。


「……シオン?」

「え?あーごめん!なんでもない」


 (ただ)ならぬ様子に思わず声を掛けると、ハッとした表情をしてフィルビーから距離を取るシオン。

 そこにレヴィンが「あ!」と声を上げて彼女の事を指差した。


「そういえばアルス!結局その子とどういう関係なの?」

「えっと、彼女は……」


 先程グラシアによって(さえぎ)られた質問……その答えを口にしようとしたところ、シオンはアルスな腕に(から)み付くように胸を当て、満面の笑みを浮かべながら言い放った。


挿絵(By みてみん)


「アルスのお(よめ)さんでーす♪」


 ────瞬間(しゅんかん)、場の空気が一気に(こお)り付く。



「えええええええええええッ!?!?」


 直後、それを(やぶ)ったのは(ひび)き渡るようなレヴィンの絶叫(ぜっきょう)

 ……当然、周囲の視線は一気に集まってしまう。


「えっと……それは……お、おめでとうございます……?」

「き、聞いてないわよそんな話!!」

「いや、シオン……変なこと言うのやめてくれないか……」

「あはははっ!ごめんごめん!冗談(じょうだん)だよ!」

「その揶揄(からか)(ぐせ)は相変わらずだな……」

「結局どういう関係なのよ!?」


 場を引っ()き回すシオンの言動に顳顬(こめかみ)を抑えながらも、(あわ)てた様子の二人への誤解(ごかい)()くため、アルスは改めて口を開く。


幼馴染(おさななじみ)で……昔一緒の討伐隊(とうばつたい)にいた仲間だ」

「あ、あぁ〜……前にお話した時に出てきた……」

「それなら最初からそう言いなさいよ……もう」


 その説明に空気が幾分(いくぶん)(やわ)らかくなったところで、(たた)み掛けるようにアルスは今回の戦いにおける彼女の功績(こうせき)を伝えていく。


「今回俺が助かったのは、スーヤ騎士団のグラシア殿(どの)と……彼女の協力のおかげだ」

「そうだったんですね……あの、アルスさんを助けてくださってありがとうございます……!私、フィルビーと申します!よろしくお願いします」

「……私はレヴィン……その、よろしく」

「いや〜揶揄(からか)っちゃってごめんね!改めて、私はアルスの幼馴染のシオンって言うの!よろしくね〜」


 ……その結果、レヴィンはまだ少し警戒(けいかい)しているようだが、一先(ひとま)ず場の空気は良くなったのだった。



「……痴話喧嘩(ちわげんか)の最中のところ、失礼するぞ?」


 なんとか丸く(おさ)まってくれたか……と少し安堵(あんど)したところで、皮肉()じりに掛けられた言葉は────再び現れたスーヤ騎士団のグラシアから(はっ)されたもの。


「そんなんじゃない……要件は?」

「市民や兵士達に軽く聞いて回ってきたのだが……アルス殿の報告と照らし合わせた結果、()()()()が判明した……それを伝えに来た」

「なに……?」


 悪い事実……その言葉に(まぬ)(ひそ)めるアルスに対し、エルフの騎士は淡々(たんたん)とその内容を伝え始める。


此度(こたび)の事件……どうやら南側の砦が襲撃(しゅうげき)を受けたのが発端(ほったん)らしい」

「……」

「南の(とりで)が襲撃され、その救援(きゅうえん)に戦力を()いてる内に北の砦が魔王軍に襲撃され、その結果戦線(せんせん)維持(いじ)出来なくなった……というのが大まかな流れのようだ」

「そうだったのか……」

「北側の砦を襲撃したのはアルス殿から報告を受けた魔龍族(ドラゴン)や黒い魔族の群れで間違いなさそうだが……南側の砦はたった一体の敵によって落とされたらしい」

「……その敵は?」


 明かされた城塞都市(じょうさいとし)クヴィスリング襲撃事件の詳細(しょうさい)……それはとても興味深いものだったが、その中で沸いた疑問に対する騎士(グラシア)の答えにアルスの目は見開いた。


「血のような、()()()()()()()()()()……目撃者(もくげきしゃ)はそう言っている」


 ────赤黒(あかぐろ)い、(ぬの)……?

 その言葉に、アルスが思い出したのはクヴィスリングに足を踏み入れる直前に発見した三人の男女の遺体(いたい)

 損壊(そんかい)が激しく直視(ちょくし)出来なかったが、バラバラに斬り(きざ)まれたその手には……確かに目撃者の証言(しょうげん)合致(がっち)する物が握られていた(はず)だ。


「……何か思い当たる事でも?」

「実は……」


 顔に手を当てて考え込むアルスの態度(たいど)(いぶか)しんだのか、冷たい(ひとみ)で刺すように問い(ただ)すグラシア。

 そんな彼女にたった今思い起こした正体不明の敵に(つな)がる手掛かりを伝えると、「なるほど……後で部下を現場に向かわせよう」と言葉を返された。



「その騎士って……魔物ではないんですか?もしかして……()()()()()なんじゃ……」


 その後、横から挟まれたのは謎の敵に関するレヴィンの考察(こうさつ)

 それに対してグラシアは感心したように(あご)に手を当てる。


「一時期(うわさ)になったやつか……遠すぎて(よろい)の中身までは見えなかったそうだが、その可能性は高いかもしれんな……もしくは()()()()()が化けた姿か……」

「フォルリア……?」

「先程までアルス殿が交戦していた魔物の名だ……"全能のフォルリア"……ここ数年、我々が追っている魔王の側近(そっきん)と思われる個体……実際にこの目で見たのは初めてだったが」

「そんな奴が……」


 フォルリア────その名を聞かされ奴と対峙(たいじ)した時、(すさ)まじい怖気(おじけ)が走ったがそこまでの奴だったとは……


 そう考えてる内に二人の会話は終わり、「とにかく……」とグラシアは切り出した。


()()()()()()()()()……そのような敵の討伐(とうばつ)報告は受けていない」

「つまり……取り逃した大物()はもう一体いたわけか」

「……そういうことだ」


 グラシアの言いたい事を理解し補足(ほそく)するアルス────瞬間、場に緊張(きんちょう)が走る。

 逃亡した魔王の側近フォルリアと、南砦を単騎(たんき)陥落(かんらく)させた正体不明の騎士……戦いが終わったとはいえ、残された不安は(あま)りにも大きいものだった。



「いずれにせよ……君達討伐隊(とうばつたい)からはもう少し詳しく話を聞かせてもらう必要がある」

「え……?」

「先程使者(ししゃ)を出した……しばらく()てば(むか)えが来るだろう」

「えっと……それって……」


 不穏(ふおん)な空気が(ただよ)う中……払うように切り出されたエルフの騎士の言葉に困惑(こんわく)の色を見せるレヴィン。

 そんな話を()み込めてない様子の彼女に対し、グラシアは向き直り……その意味を口にする。



「共に()()()まで来てもらうぞ……討伐隊の諸君(しょくん)



 こうして一行(アルス達)は、城塞都市クヴィスリングでの激戦が終わったのも(つか)の間……大陸で最も信仰(しんこう)されている()()()()発祥(はっしょう)の地────宗教国家(しゅうきょうこっか)"アミナス教国(きょうこく)"へと(おもむ)く事となった。

お疲れ様です、ここまでお読み頂きありがとうございました。

第二章"城塞都市クヴィスリング編"はこの話にて完結です(後に番外編を差し込むかもしれませんが)。

第三章"アミナス教国編"は1週空けて9/5(金)から投稿開始する予定です。

来週(8/29)は番外編でも投稿出来たらと思います。

それでは次回からまたよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
城塞都市クヴィスリング編まで読ませて頂きました! いやぁ面白いです! 戦闘シーンもキャラの特性を活かした描写がされていて、特に伏線(この話がここでこう繋がるのか)とか引きがしっかり書かれていて考え込…
第二章も面白かったです! 手に汗握る展開の連続で、ページを捲る手が止まりませんでした。 ウォルフ良かったね……でもむちゃし過ぎだよ……(泣)。 最後の和やかな?修羅場シーンには癒やされました。 アル…
レヴィン、フィルビーとの再会シーンは安心と感動で胸が熱くなりました…!そこにシオンの「お嫁さん」発言で一気に場が凍りつくのが最高ですw 女の子たちみんな可愛くてかわいくて... アルスの反応も最高も…
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