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Truth Of Legend  作者: 座敷猫
第二章:城塞都市クヴィスリング編

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35/59

30話:救いの手

〜前回までのあらすじ〜


「申し遅れました、私の名はフォルリア……周りの者達からは"全能"の二つ名で呼ばれています」


────城塞都市クヴィスリングに現れた新たな上級魔族フォルリア。

凡ゆる姿の魔物へと変身し、多種多様な魔法を使う強敵にアルスは苦戦するが……全力を尽くした結果、ギリギリ勝利を掴む事に成功する。


しかしフォルリアの足掻きにより、自身も深手を負わされ死にかけた時……不意に目の前に現れたのはかつての仲間である一人の少女だった。

「シオン……本当に、シオンなのか……?」

「他の誰だって言うのよ……久しぶりだってのに失礼しちゃうわ全く」


 フォルリアと名乗った上級魔族を死に物狂いで倒した後、瀕死(ひんし)の状態のアルスを助けて手を差し伸べたのは……アルスが勇者になる前に同じ魔王討伐隊で共に戦っていた少女────シオンだった。


「仕方ないだろう……ずっと探してたんだぞ」

「……私もよ、アルス」


 呆れたように笑う彼女の手は、以前と同様にとても暖かく……思わず目頭(めがしら)が熱くなる。


「今までどこに……いや、それよりどうしてここに?」

「……とりあえず、話は後よ……()()を見て」


 任務(にんむ)中に()った魔族の襲撃(しゅうげき)により(はぐ)れ、離れ離れになっていたかつての仲間との再会────当然次々と()いてくる疑問をぶつけるも、返ってきた反応は制止(せいし)の言葉と後方への指差し。


「……!?どういう、ことだ……?」


 その指先に視線を向け、アルスは驚愕(きょうがく)の色を浮かべる。


 ────空中に()()()()()が浮かぶ信じ難い光景に。

 ……やがて肉の(かたまり)収束(しゅうそく)し始め、()()()姿()を形作る。



「……お前、下等種(かとうしゅ)分際(ぶんざい)でよくもこの私の(はだ)に傷を付けましたね……!」


 先刻(せんこく)まで戦っていた魔物────"全能のフォルリア"の姿を。


 先程とは異なる上級魔族フラストを黒く染め上げたような黒龍(こくりゅう)様相(ようそう)……その胸部には()()()()()()()()()が見えた。



「アレでなんで生きてんのよ……この化け物……ッ」

 肉体が四散(しさん)していた状況(じょうきょう)から復活を()げたその姿にシオンは動揺(どうよう)を見せる。


 如何(いか)に生命力が強い上級魔族であっても急所というものは存在する。

 ヴァイゼン村で戦ったシルクも、クヴィスリングで戦った紅い龍(フラスト)もそこを突くことで倒してきた。

 ……しかし(げん)に、完全に致命傷(ちめいしょう)だった(はず)の状態からフォルリアは復活を果たしている。



「私を傷付けて良いのは()()()だけなのに……絶対に許さない……ッ!」


 一体どういう事なのか……思考を(めぐ)らせている内に、目を血走らせたフォルリアは魔力を(ふく)らませていく。

 直感的に命の危機を感じたアルスはシオンに逃げるよう(うなが)すも、彼女は首を(たて)に振らず呪文(じゅもん)(とな)えた。


「【翠の庭園(ヴェイル・ハルディン)】!!」


 "植物魔法"

 (あら)ゆる植物を生やし(あやつ)る……雷魔法と同様に自然魔法の中ではやや珍しい魔法で、身体を(いや)したり、敵を拘束(こうそく)するなど味方の援護(サポート)(ひい)でているのが特徴(とくちょう)だ。

 先程瀕死(ひんし)の状態のアルスを(いや)したのも、恐らくこの力によるものだろう。



「……なんですか?お前も私の邪魔(じゃま)をするつもりですか?だったら……諸共(もろとも)殺処分にしてやる……ッ!!」


 ……しかし反面、直接的な攻撃・防御能力は低い。

 目の前の敵(フォルリア)もその事を理解しているのか、前に張り巡らされた植物の壁を意に介さず放出した魔力を複数の属性へと変質させ……


『シュッ……』

『ビュオオオオオオオオオッッ!!』

『バシュウウゥゥゥゥ────ッ!!!』


 ────全てを一斉(いっせい)に解き放った。



「な……ッ!?」


 思わずシオンを守るように前へと出た時アルスが目にしたのは、放たれた魔法が植物の壁を前に霧散(むさん)していく光景。

 金属製の黒い糸、風で出来た刃、炎の魔力を凝縮(ぎょうしゅく)した熱線……どれも植物魔法では防ぐ事が出来ない筈の攻撃だ。



「何が……なんなんだお前は……ッ!?」

「【魔花の噴嚔(フロスタル・マニス)】……【純朴なる愛(アンリ・アカンタ)】」


 信じ(がた)い光景を前に敵が動揺する中、シオンは間髪(かんはつ)入れずに詠唱(えいしょう)を続ける。

 それにより植物の壁から咲いた花から噴射(ふんしゃ)された麻痺(まひ)属性の黄色い花粉(かふん)と、新たに地面から生えた大量の(いばら)(つる)がフォルリアを拘束していく。


「グッ……!?こんなもの……ッうああああああああああアアアアアッ!!!」


 しかし直後、フォルリアは(とどろ)くような咆哮(ほうこう)を上げると共に肉体を膨張(ぼうちょう)させ、身体に深く()い込む(トゲ)(くさり)を無理矢理に引き千切(ちぎ)った。


「嘘……!?なんって力技(ちからわざ)よ……!」

()()が奴の力だ……」


 その様子に驚愕するシオンに、情報共有としてアルスは敵の能力を伝え始める。


 身体の形を自在(じざい)に変え、様々な生物に変身し……あまつさえ変身した存在の魔法まで使用出来るようになる魔法。

 全ての魔法使いに対し有利相性を取れるその力に加え、上級魔族特有(とくゆう)の強大な魔力が合わされば正しく"全能"と呼ばれるに(あたい)する強さを発揮(はっき)するだろう。



「なるほど……()()()()……それがお前の力ですか」


 拘束から抜け出し、何事かを(つぶや)きながら地面に倒れている兵士の亡骸(なきがら)から剣を(うば)い取るフォルリア。

 それに対しシオンは再び花から麻痺の効果を含んだ花粉を放つが……


「【大いなる嵐(グロ・シュトゥルム)】」


 ────刹那(せつな)、詠唱と共にフォルリアの周囲に展開された暴風が全てを吹き飛ばした。


 暴風は一気にアルス達を巻き込まんと拡大した……が、アルス達の前に形成された植物の壁に()れた途端(とたん)、先程と同様に霧散してしまう。

 この現象(げんしょう)も、奴が言うところの"魔力吸収(まりょくきゅうしゅう)"とやらの効果だろうか。

 ……それが事実であれば、元々のシオンにはなかった力だ。



「……では、()()ならどうでしょう?」


 不意に暴風の中心から聞こえたのは此方を嘲笑(あざわら)うようなフォルリアの声────その周囲にはいつの間にか大量の瓦礫(がれき)や武器……そして人と魔族の死体が()っていた。


「まさか……」


 嫌な予感がしたのも(つか)()、暴風の流れが変わり……一斉にそれらは放たれた。

 魔力吸収対策であろう物理攻撃の嵐に対し、シオンは即座(そくざ)に地面から複数の土の壁(防御魔法)を展開するも、圧倒的な物量を前に少しずつ(くだ)け散り……土煙(つちけむり)が上がっていく。


「アルス!大丈夫!?」

「あぁ!!」


 一瞬(いっしゅん)お互いの姿が見えなくなった時……聞こえてきたのはシオンの心配する声と、それに反応する()()()()()()()()()()()


「シオン!そいつは俺じゃない!!」

「えっ…!?」


 咄嗟(とっさ)に彼女の前に出て、自身に似た人影に向け刃を振るう。

 瞬間、『ギィンッ!!』と(にぶ)い音が(ひび)き……同時に煙が晴れてその正体が(あら)わになる。


()しい……もう少しだったのに」


 ────そこにいたのはアルスと同じ輪郭(かたち)を取りながらも、実態(じったい)は薄黒い()き出しの筋繊維(きんせんい)(まと)った複数の眼を持つ怪物。


 自身と他の魔物を混ぜたような異形(いぎょう)の姿……自分にも変身出来るようになったようだが、条件があるとすれば先程奴に()()()()()事が原因だろうか。

 どちらにせよ(フォルリア)にとっては大量の物量による攻撃さえも、視界を(さえぎ)ることで接近するための陽動(フェイント)に過ぎなかったようだ。



「【純朴なる(アンリ)……」

「邪魔」

「う……ッ」


 鍔迫(つばぜ)り合いの最中(さなか)……シオンが加勢しようとするも、敵の身体から伸びた触手(しょくしゅ)に拘束され止められてしまう。

 敵の注意が()れた一瞬────アルスは腕に力を込めて剣を(はじ)き、即座に触手を叩き斬った。


「チッ……また私に傷を……!」


 その行動が(しゃく)(さわ)ったのか、今度は全ての攻撃がアルスに集中し始める。

 ────(すさ)まじい速さの攻撃……だが()()()


「馬鹿な……!」

 剣と触手による猛攻(もうこう)を的確に(かわ)して斬っていくアルスを前に、フォルリアが(あら)わにしたのは明確な動揺の感情。


 上級魔族を相手に接近戦で優位に立ててる理由────それは恐らくフォルリアが()()()()()()()()()()()()()だからだ。


 接近戦は魔力量で(おと)る者や魔法の相性が不利な者が取る……本来であれば弱者側が取る戦法。

 恐らく奴は魔法戦において無敵とも言えるその能力(ゆえ)、今まで接近戦などした事がなかったのだろう。

 力に身を任せた単調(たんちょう)な攻撃……どんなに速かろうと、軌道(きどう)を見切ることが出来れば対処するのは難しくない。



「この……ッ下等種がァッッ!!」


 格下だと(あなど)っていた相手から追い詰められた焦燥感(しょうそうかん)からか……気付けばフォルリアの動きはより大雑把(おおざっぱ)なものになっていた。

 やがて大振りになった一撃────その(すき)をアルスは見逃さない。


 狙うは最も強い魔力反応を放つ……奴の胸部の光り(かがや)(なぞ)の物体。

 バラバラの状態から復活するその不死性に何らかの仕掛け(ギミック)があるのであれば、恐らくはアレが原因の筈。


「はぁッ!!」

 ────思考の(すえ)辿(たど)り着いた結論を胸にアルスは思い切り剣を()ぎ払った。



『バキィ……ッ』


 ……が、その思いも(むな)しく渾身(こんしん)の力を込めた一撃は、剣が折れるという最悪な結果で終わりを(むか)える。

 連戦により摩耗(まもう)し過ぎたか……いずれにせよ敵の身体を後方へ弾くことは出来たものの、残ったのは現時点で目の前の敵(フォルリア)を倒すことは不可能という残酷(ざんこく)な事実だけ。



「狙いは良かったですが……残念、そんな(ナマクラ)では私の命に届きはしません」


 その事実を受けて、直前まで怒りに身を任せていたフォルリアは一転(いってん)して笑みを浮かべ……ゆっくりとアルスに迫り出す。


 こうなっては撤退(てったい)する他ないが、奴の速さ(スピード)の前ではそれも難しい。

 最早(もはや)対抗手段がない中、不意に(かば)うように前に出てきた人影────それは先程触手に拘束されたシオンだった。


「はぁ……しつこい、苛々(イライラ)する……こんなに頭に血が(のぼ)ったのは何年振りでしょうか」


 突然出てきた彼女を前に、フォルリアは一瞬固まるが……やがて溜め息を吐き、手に持った凶刃(きょうじん)を振り上げる。


「……まぁ、もういいです……さようなら」


 ────せめて時間を(かせ)ぎ、シオンだけでも逃がさなければ……


「アルス!?」


気が付いた時には既に彼女の前に立ち、折れた剣を握り締め……構えていた。

仲間が生きている限り、諦めるわけにはいかない。

その想いを支えに、アルスは心を折らず……目の前の絶望的な現実に立ち向かった。
















「そこを動くな!!」















 ────何が起きたのか一瞬分からなかった。


 不意に遠くから聞こえた声、直後に辺りを包んだ(まばゆ)い光、そして……


「グウウゥゥ……ッ!!」


 身体から白い煙を上げ、(うめ)き声を上げながら膝を突く敵の姿……

 余りにも唐突(とうとつ)で理解が追いつかない事象(じしょう)の連続だったが、反面どこか既視感(きしかん)のようなものを覚える。


「クソ……ッ一体何が……ッ!?」


 そうしている間に目の前の敵(フォルリア)はヨロヨロと立ち上がり、苛立(いらだ)ちを見せながらも周囲を警戒(けいかい)するように見回し始めた。

 やがて、その視線はある一点に()まり……


「【完全武装(ギア・ソルテ)】!!!」


 直後、呪文と共に全身に上級魔族ザヴォートと同じ漆黒の外殻(がいかく)(まと)う。


 ────同時に、再び目の前が真っ白になった。



 ……今度は()()()


 やはりこれはヴァイゼン村で戦った時に起きたのと同じ……自然現象ではない、()()()()()()()()()だ。

 恐らく誰かが遠くから、アルス達を避けて目の前の敵(フォルリア)を攻撃している。



「アルス!()()!!」


 ()()()()に気付いたのか、声を発して先程フォルリアが見ていたのと同じ方向に指を差すシオン。


「……騎馬(きば)?」


 口に出してから違う、とアルスは気付く。

 ()()はただの騎馬ではない。


 一本の角を持つ神聖(しんせい)な生き物……"一角獣(ユニコーン)"。

 この大陸タルシスカにおいて現在、一角獣は一体しかいない筈だ。

 それを所有しているのは……


()()()()()()……ここに見参(けんざん)!!」


 一角獣に(また)がる騎士が声高に名乗り上げたのは────大陸最強の騎士団の名前。

 目元を甲冑(かっちゅう)(おお)った、色素(しきそ)薄めの金髪を(なび)かせる騎士……声を聞くに、恐らくは女性のようだ。



「チッ……面倒な連中が来たようですね……!」


 その姿を見て忌々(いまいま)しそうに(つぶや)きながら後退(こうたい)し始めるフォルリア。

 そんな逃亡(とうぼう)していく敵に対し、一角獣の騎士は「()しき魔物め……(さば)きを受けろ……!」と言い放ちながら剣を(かか)げ……


「【裁きの雷槍(クリシス・トゥエルノ)】!!」


 ────次の瞬間、詠唱と共に眩い雷光がフォルリアの身体を(つらぬ)いた。


「グウゥ……ッ!不利な属性とはいえ、黒鉄(ザヴォート)(よろい)の上からでさえこの威力……大陸最強の名は伊達(だて)ではないということですか……!【武装解除(ギア・リベレ)】!!」


 それでもフォルリアは足を止めず、あまつさえ呪文を(とな)えて纏っていた鎧を破裂(はれつ)させる。

 直後、飛んできたのは漆黒の死の雨……今の疲弊(ひへい)した状態(コンディション)では回避困難な速度と量。


『キィンッ!!』


 それらを全て、一角獣の騎士は正確な剣技を(もっ)て斬り払う。

 おかげで助かったものの、騎士の攻撃の手に(わず)かな空白が生まれてしまう。


 ────その隙をフォルリアは逃さなかった。


口惜(くちお)しいですが、このまま戦い続けるのは少々…()が悪いようですね……!【雲の巣(トゥワルボルケ)】!!」


 騎士からの攻撃が(ゆる)んだ一瞬で、上級魔族シルクの姿へと変貌(へんぼう)()げたフォルリアは前面に糸の壁を展開する。

 かつてレヴィンの雷魔法をも容易(ようい)に防いだ防御魔法(それ)は、当然のように一角獣の騎士が放つ雷をも弾く。


「変身した……!?まさかコイツ……逃がすか!!」


 目の前に広がった光景に驚きを見せながらも、騎士は剣で糸の壁を斬り裂き前進し続けていく。


 ────その先には、一体の眼球の魔物と化したフォルリアが待っていた。


「……本当に、しつこい」


 直後、吐き捨てるような言葉と共に一気に分裂し……現れたのは視界を(おお)()くさんとする肉の壁。

 そんな大量の魔物も、騎士が放つ眩い光によってたちまちその姿を黒い炭へと変えられる。



「クッ……逃がしたか……」


 ……次に聞こえてきたのは(くや)しそうな一角獣の騎士の声。

 その視線の先には、雷魔法でも届かない(はる)か上空へ飛び去って行く紅い龍(フォルリア)の姿があった。



「……君達、大丈夫か?」


 やがて騎士は軽く溜め息を吐きながら剣を(さや)に剣を収めると、今度は手綱(たづな)を片方引いてアルス達へと視線を向け口を開いた。


 その問いに、シオンと共に(うなず)き礼を言うと、一角獣の騎士は「なに……騎士として当然のことをしたまでだ」と返し、目元の甲冑を上げながらその場で立ち上がる。


挿絵(By みてみん)


 一角獣に(またが)っている時は気付かなかったが、その騎士の背はとても高く……下手すれば自身よりも身長がありそうだとアルスは感じた。


「赤髪の(きみ)、後方に(ひか)えている私の仲間に()てもらうといい……恐らく見た目より(ひど)怪我(けが)だ」


 そんな事を考えている内に目の前まで来た一角獣の騎士は此方(こちら)見下(みお)ろしながら心配そうに呟く。


「あの……貴方(あなた)は……?」

「む……すまない、申し遅れた」


 冷たい印象すら覚える(ひとみ)に、シオンが少し緊張(きんちょう)した面持(おもも)ちで(ひか)えめに(たず)ねると、彼女は自身の胸に手を当ててその問いに答えた。


「私はスーヤ騎士団の一角獣騎士(ユニコーンナイト)……()()()()だ」

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― 新着の感想 ―
可愛いキャラが多すぎて推しが悩みますね。シオンの登場はもうキラッキラヒロインみたいな感じで最高でした。グラシアもかっこいいし、戦闘描写の中で見出すキャラの個性や魅力がとにかく最強です(๑•̀ㅁ•́ฅ
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