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Truth Of Legend  作者: 座敷猫
第二章:城塞都市クヴィスリング編

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33/52

28話:震える身体

〜前回までのあらすじ〜

城塞都市クヴィスリングでの二体の上級魔族との壮絶な戦いを制したアルス達。

戦いの後、残っていた魔族の残党に襲われて危機に陥っていたところをクヴィスリングの兵士達が駆け付けたことで形成が逆転した。

そんな風に戦いの収束への希望が見えてきた中、新たな脅威が一行に近づきつつあった……

「───!!アルスさん!北の方から何か来ます!!」


 魔族の残党(ざんとう)を相手に、クヴィスリングの兵士達と共闘(きょうとう)を始めてしばらく()った時……不意に警鐘(けいしょう)を鳴らすように(ひび)いたのは、切羽詰(せっぱつ)まったようなフィルビーの声。


「……敵か?」

 その報告にアルスは途轍(とてつ)もなく嫌な予感を覚えた。


 先程(さきほど)逃走した魔龍(ドラゴン)に真っ先に気付いた辺り、彼女は常人(じょうじん)よりも魔力感知に優れているのだろうが……恐らくそれだけじゃない。

 ヴァイゼン村への魔族の襲来(しゅうらい)城塞都市(じょうさいとし)クヴィスリングの人々の悲鳴に気付くなど、フィルビーの感覚……もとい(かん)(するど)さはどうやら本物だ。


 そんなある種の確信めいたものを感じつつ此方に来ているものの正体について聞くと、彼女は頭を抑えながら……(しぼ)り出すように声を出した。



「この魔力の感じは……上級の…魔族です……ッ」



 ─────最悪だ。


 二体もの上級魔族と戦い、(すで)満身創痍(まんしんそうい)な中での新たな上級魔族の来襲(らいしゅう)

 いくら兵団の者達が手を貸してくれているとはいえ、魔族の残党の処理に手一杯の中で敵の援軍(えんぐん)が来れば……全滅(ぜんめつ)(まぬが)れない事は明白だ。


 希望が見えかけてきた矢先、突如(とつじょ)として(おそ)い掛かってきた真っ黒な未来。

 側にいたレヴィンは「嘘でしょ…!?こんな時に…!」と辟易(へきえき)とした声を出し、フィルビーに至っては腕を抱えて身を震わせていた。



「……!!」


 ────その時、遠くから感じたのはフィルビーの言った通り……上級魔族を彷彿(ほうふつ)とさせる強大な魔力反応。

 その主も此方(こちら)の存在に気付いたようで、軌道(きどう)を変えて真っ直ぐに此方へと(せま)り始めた。

 恐らくもう数分もすればここに辿(たど)り着く(はず)……最早(もはや)迷っている暇はない。



「聞いてくれ!今この場に上級魔族が向かっている!皆はこのまま継戦(けいせん)しつつ後退して……他の部隊と合流してくれ!」


 気が付けば、声が口を()いて出ていた。

 場に動揺(どうよう)が広がる中……「アルスさんは……?」と心配そうに聞いてくる仲間(フィルビー)に、アルスは自身の覚悟を口にする。


「俺はこの先に行って……敵を(むか)()つ」


 単騎(たんき)での上級魔族の迎撃(げいげき)────普通であればあり得ない、死地(しち)(おもむ)くだけの行為(こうい)

 常識的に考えれば、その発言は敵を足止めするための(陽動)役を買って出たとしか受け止められない。


「な……ッ!?何言ってんのよ!?アンタだってもうボロボロじゃない!!死んじゃうわよ!!一緒に逃げなきゃ!!」

「そうですよ!恩人(おんじん)にそんなことさせるなんて……囮なら、俺が行きます!!」


 それを証明するように、燃え上がった反発の声……それは近くにいたレヴィンとクヴィスリングの兵士ライルから(はっ)されたものだった。


勝算(しょうさん)はある……心配するな」

「だったら私も行かせて!!」

「駄目だ……これ以上人数を()けば、ここの戦線を維持出来なくなる」

「でも……ッ」







「【癒しの光(ヒールス)】……」


 ────話の収束(しゅうそく)が見えなくなりかけた時、不意に聞こえてきたのはフィルビーの詠唱(えいしょう)

 振り向いた先……彼女の手から放たれた(あたた)かい光はアルスを優しく包み、その身と心を(いや)していく。


「フィル……なんで……?」

「レヴィン……今の私達では足手纏(あしでまと)いになりかねません」

「……ッ」


 その様子に怪訝(けげん)な表情を浮かべるレヴィンだったが、それ以上に(つら)そうな顔をしているフィルビーを見て口を(つぐ)んだ。


「アルスさん……正直、私もレヴィンと同じ気持ちです……行かせたくない」


 その後、アルスを回復させた彼女から出たのは……行動とは正反対の此方の身を案じる言葉。

 その身体は……まだ震えていた。


「でも……きっと貴方(あなた)は止まらないんでしょう?だからせめて……」


 もしかしたら怖いのかもしれない。

 今迫っている上級魔族の存在……それ以上に、仲間(アルス)を失うかもしれない選択をしてしまった事が。

 それでも彼女は背中を押すことを選んでくれた。


「絶対、生きて帰ってきてください……約束です」

「……あぁ」


 ────その選択を、絶対に後悔(こうかい)させたりしない。


 その覚悟を胸に、一言だけ言葉を返し……アルスは眼前(がんぜん)の魔族の残党の群れを目掛けて風を切りながら突き進む。



「アルス──────ッ!!!!」


 背中からは、自身の名を呼ぶレヴィンの大きな声だけが木霊(こだま)していた。

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― 新着の感想 ―
うわああん!!熱すぎる展開……!! アルスが、もう、かっこよすぎて……言葉が出ませんっっ……!! フィルビーとレヴィン。 形は違うけど、どちらも本気でアルスの無事を願ってて、 その気持ちが、苦しいほ…
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