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Truth Of Legend  作者: 座敷猫
第二章:城塞都市クヴィスリング編

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29/52

24話:死闘の果てに

〜前回までのあらすじ〜

漆黒の鎧を脱いだ異形の上級魔族ザヴォートとの死闘……ウォルフは腹を貫かれながらも、フィルビーが麻痺の魔法を付与した剣を突き刺すことによって動きを止めた隙に、遂に致命傷を与える事に成功する。

踠いた末にもぎ取った辛勝───その先にあるのは……


※前回に引き続きフィルビー視点の話です。

 ───それは、針の穴に糸を通す様な……か細い光明(こうみょう)を見出し続けた(すえ)の勝利だった。


 魔法による攻撃を防ぐ黒金(くろがね)(よろい)、魔法使いの身体から放出される魔力による威力(いりょく)緩和(かんわ)の影響を受けない物理主体の攻撃、そして何よりも圧倒的な素早さ(スピード)白兵戦(はくへいせん)能力……

 敵はまるで魔法使いを殺害することに特化したような存在だった。


 何か少しでもボタンの掛け違い(条件の違い)があれば……フィルビーとウォルフが敗北していたのは想像に(かた)くない。



『ドシュッ!!』


 ────だがたった今、それらの苦難(くなん)を全て乗り越えてフィルビー達は(ようや)く強大な敵将……上級魔族ザヴォートを討ち果たす事が出来たのだ。



「ガアアアアアアアアアッッッ!!!」

「きゃあッ!!」


 ウォルフが投げた漆黒の槍が黒い魔物(ザヴォート)の頭部に直撃した直後、フィルビーを襲ったのは耳を(つんざ)く様な(すさ)まじい咆哮(ほうこう)

 同時にしがみ付いていた巨躯(きょく)が暴れ回ったことでフィルビーは振り落とされ、地面を転げ回る。



「馬鹿な…私ガッ…負けた、ダトォ…ッ!?」


 なんとか身体を起こし、見上げた先に見えたのは……致命傷(ちめいしょう)を受けて(なお)足掻(あが)き続ける黒い魔物(ザヴォート)の姿。


「この私が、()に選ばれた私が…将軍である私ガ!!人間……下等種(ごと)きに……ッ!?」


 自身の敗北と目前に迫る死───それらを突き付けられたにも関わらず、漆黒の悪魔は憎悪を(はら)んだ言葉を()きながら此方(こちら)へと向かってくる。

 その並々ならぬ生命力と強い執念(しゅうねん)にフィルビーは思わず息を()んだ。


「許…サヌッ…!弱く…(もろ)く!(みにく)い…虫ケラの分際で…ッ!!」


 ……やがて感じたのは、黒い魔物(ザヴォート)の身体の内部で増大する強大な魔力反応。

 ────最期に大技を放つ気だ。



「しつけえんだよクソが……ッ!さっさと地獄に…落ちやがれ……ッ!!」


 そんな死に際の悪足掻(わるあが)きに対し、ウォルフは地面に落ちていた細身の剣を拾って(とど)めを刺しに行こうとする。


「ウォルフさん……今、動いちゃ……」


 ……が、その身体からは槍を無理矢理引き抜いたせいで血が流れ続けていた……最早(もはや)まともに動ける状態じゃないはずだ。

 そんなフィルビーの心配の通り、彼の体はふらついており今にも倒れそうだった。



「道連れに…して…ヤ……ッ」


 此方(こちら)側に戦いを続ける余力(よりょく)がない中、黒い魔物(ザヴォート)の魔力は限界まで(ふく)れ上がり……今(まさ)に最期の魔法が放たれようとしていた。

 ───止められない……!



「【武装(ギア)……」

「【業風の刃(ヘルトゥル・ラーマ)】」


 そう(あきら)め掛けた時、不意に(するど)()が吹いてきた。



「グオオオオオオオォッ!!?」


 絶叫(ぜっきょう)と共に黒い魔物(ザヴォート)の身体が鎧ごと斬り(きざ)まれる。

 その強力な風の魔法にフィルビーは見覚えがあった。


流石(さすが)にそこまで追い込まれては自慢の(よろい)も強度を(たも)てないようだな……将軍殿?」

「フラスト……ッ!?貴様ァッ!!」


 上空から聞こえてきた声の主……それは先程まで仲間(アルス)達と交戦していた(はず)のもう一体の上級魔族───(あか)(ドラゴン)のフラストだった。

その周囲では多くの魔龍が飛び……此方を見下ろしている。


「何の真似ダ……!?」

「何の真似だと?それは此方(こちら)の台詞だ……貴様、我々ごと殺す算段(さんだん)だっただろう……今も、先程も……!」

「……ッ!!」

「気付いてないとでも思ったのか?……だからこそ、我は貴様を()つ機会をずっと(うかが)っていたのだ」


 当初、険悪ながらも優位そうな態度(たいど)を取っていた相手(フラスト)からの突然の攻撃と静かな怒りの(こも)った言葉に、黒い魔物(ザヴォート)はこれまでと打って変わり狼狽(ろうばい)した様子を見せた。

 ……そんな対立していた相手の無様(ぶざま)とも言える姿に、紅龍(フラスト)は初めて笑みを見せて言葉を続ける。


「まさか、人間に倒されるとは思っていなかったがな……」

「……ッッッ!!フ゛ラ゛ス゛ト゛オ゛オ゛ォ゛ォ゛!!!」


 嘲笑(あざわら)うように放たれた最後の言葉───黒い魔物(ザヴォート)は完全に激昂(げきこう)し、上空の紅龍(フラスト)に向け魔力を膨張(ぼうちょう)させる。


「死ね……【地獄の業火(インフェルノ)】!!」


 ───しかしそれよりも早く紅龍(フラスト)の口から紅蓮(ぐれん)の炎が放たれ、満身創痍(まんしんそうい)黒い魔物(ザヴォート)の全身を容赦(ようしゃ)なく焼き尽くす。


「チクショオオオォォォォ……ッッ!!下等な…虫ケラ共め……ガハハアアアッ!!!」


 同時に(ひび)(たけ)咆哮(ほうこう)のような(すさ)まじい断末魔(だんまつま)───それと共に黒い魔物(ザヴォート)の身体はボロボロと(くず)れ落ち……やがて(ちり)と化し虚空(こくう)へと消えた。



「この野郎……ッ!人の獲物(えもの)を…横取りしやがって……ッ!」

「人間よ、よくやってくれた……まさかあのザヴォートを倒してくれるとはな……」


 直後に聞こえてきたのは、激しい怒気(どき)()びた仲間(ウォルフ)と……それとは対照的に此方を(たた)える紅龍(フラスト)の言葉。

 その目の前の光景にフィルビーは疑問を覚える。


彼奴(きゃつ)は我と相性が悪かった……そして恐らくは貴様も……そういう意味ではザヴォートも最期に良い働きをしてくれた」


 どうして仲間(アルス)達と交戦していた筈の紅龍(フラスト)がここに……まさか……

 ───嫌な予感を覚えながら視線を横に向けると、そこには依然(いぜん)として(あか)竜巻(たつまき)が激しく燃え上がっていた。


『ゴオオオオオオオオォォォォ……ッッッ!!』


 音を上げて徐々(じょじょ)に収束していく竜巻の中からはまだ仲間二人の魔力反応を感じる。

 だが、あのままでは二人共……


「さて……ザヴォートが死んだ今、最早(もはや)お前達は用済みだ」


 ───不安に(さいな)まれる中、上空で語り続ける紅龍(フラスト)の言葉を聞いてフィルビーは(さと)った。

 上級魔族ザヴォートとの死闘の果てにやっとの思いで(つか)んだ勝利……それは全てもう一体の上級魔族フラストの(てのひら)の上の事象だったと。


「横たわっている彼奴の部下諸共(もろとも)、消し炭にしてくれよう……!」


 ウォルフと黒い魔物(ザヴォート)───双方を争わせて消耗(しょうもう)させた上で、残った方を始末(しまつ)する……この今の状況(じょうきょう)こそが紅龍(フラスト)の思い描いた計略(けいりゃく)だったのだ。


「もう動けんだろう……安らかに眠るといい」


 ……しかし、それに気付いたところで状況は先程と変わらない。

 (すで)に戦う余力のない今、大技を放とうと魔力を増幅(ぞうふく)させる紅龍(フラスト)をただ見ているだけしか出来なかった。


「……【業火の竜巻(トロンフェルノ)】」


 呪文(じゅもん)と共に放たれたのは、仲間(アルス)達に向けられたものと同じ暴風(まと)いし炎の螺旋(らせん)

 周囲に展開されたそれは、標的(ひょうてき)を確実に殺す死の(おり)として少しずつフィルビー達に迫ってくる。


「クソ…が…ッ!」

 その光景にウォルフは(くや)しそうな声を出し、その場に倒れ込んだ。

 ───もう彼の重力を操る固有魔法による脱出も(のぞ)めない。


「【癒しの光(ヒールス)】……!」

 熱風を感じる中、フィルビーは倒れたウォルフを守るように必死に治療(ちりょう)を開始する。

 死が目前(もくぜん)へと迫る中でも、彼女は信じていた。



『ビュオオオオオオオオオオォォォ……ッッ!!』


 ────アルスとレヴィンの二人なら、必ず生きてこの状況(じょうきょう)打破(だは)してくれると……。

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― 新着の感想 ―
最新話まで読了しました。 緊迫したバトルがヤバい!ハラハラ・ドキドキとまさかの急展開が! この行く末が気になりすぎる! ☆もブクマもさせていただきました! は、早く続きが読みたいです!
バトルの緊迫感やばいです!! 勝った……って思ったのに!?まさかの急展開すぎて心が追いつかない!! アルス!!レヴィン!!お願い、今すぐ来てえええ〜〜〜!!!
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