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Truth Of Legend  作者: 座敷猫
第二章:城塞都市クヴィスリング編

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16/59

14話:暗黙の了解

〜前回までのあらすじ〜

魔王討伐隊の冒険を始めた勇者アルスとその仲間達…。

道中で魔獣や魔族の群れ、盗賊と出会すも悉く撃破し少しずつその絆を深めていた。

そしていよいよ、アルス達は当初の目的であるクス伯爵領へと近づきつつあった…。

「見えて来たな…」

「やっと…?はぁはぁ…疲れた…」

「大丈夫ですか?レヴィン…」

「おいおい…この程度でへばんなよ…」


 ヴァイゼン村を()ってから数日、アルス達は(つい)()()()辿(たど)り着いた────


 "クス伯爵領(はくしゃくりょう)"

 大陸南部のトーキテ王国内に存在する領の一つで、周囲が砂漠に囲まれている乾燥地帯(かんそうちたい)に位置している。

 資源(しげん)の少ない環境(かんきょう)のためか魔獣の目撃は未だ確認されていないようだ。



「魔王討伐隊ですね…はい…確認しました…どうぞ…」

 関所(せきしょ)の役人に国王から(たまわ)った()()()()を見せると驚くほどあっさり領の中へと通された。

 その様子にウォルフは「便利だな…それ」と感心を示していた。


 "勇者の(あかし)"

 魔王討伐隊の(おさ)である()()()()()与えられる紋章(エンブレム)で、呈示(ていじ)することで各国の関所を取り調べを受けることなく通過(つうか)出来るようになる(すぐ)れ物だ。

 行動範囲が広く、身寄りがない者が多い魔王討伐隊の隊員にとっては身分(みぶん)証明(しょうめい)出来る必需品(ひつじゅひん)である。



「なんか…思ったより(さび)れてるわね…」

「ちょっと…レヴィン…」

 へとへとになりながらも領内に入った感想をあっけらかんと(つぶや)くレヴィン…そんな彼女にフィルビーは肩を貸しながらも(たしな)めの言葉を口にしていた。


 ───しかし、実際に領内の住人のほとんどは()せ細っていたり暗い面持(おもも)ちをしていて活気(かっき)がないように見えた。


「そういやさっきの門番もやけに(やつ)れてたな…」

領主(りょうしゅ)からの圧政(あっせい)(ひど)いって(うわさ)には聞いてたけど…本当なのかな…」

 フィルビーに窘められた(ため)か…ウォルフとレヴィンは小声でそれぞれの感想を言い合っていた。


「さぁな…それより、いつどこで誰に聞かれてるか分からない…私語(しご)程々(ほどほど)にな」

 そんな二人に対し、アルスは(くぎ)()すように言った。


 活気のない(まち)…領主の悪評(あくひょう)盗賊(とうぞく)による報酬(ほうしゅう)未払いの話…アルスとしても色々と思う事はあった。

 それでも注意したのは二人の会話が通行人や役人に聞かれ、領主への侮辱(ぶじょく)として通報されるのを危惧(きぐ)してのことだった。


「…」

「…」

 その思いが通じたのかは(さだ)かではないが、それ以降しばらく二人は口を(つぐ)んでいた。



 ・・・



「わぁ…すごいお屋敷(やしき)ですね…」

 領主の屋敷を前にして、フィルビーは口に手を当てて感心したように(つぶや)いた。


 彼女の言う通り、クス伯爵の屋敷は街の建物に比べて大きく…とても豪勢(ごうせい)な仕上がりだった。

 …それ(ゆえ)に余計に街並みとの差が歴然(れきぜん)(うつ)って見えてしまった。



「そこの貴様ら!動くな!!」

 思わず立ち尽くしていると、不意(ふい)に男の大声が(ひび)いた。


 ───見ると、武装(ぶそう)した男達がゾロゾロとアルス達に向かって近づき…やがて(かこ)い出した。

 突然のことにレヴィンは「な、なに…?」と(おび)えた声を出し、隠れるようにアルスの背中に付いた。


「なぁんだぁ?てめぇら…この辺りじゃ見ねぇ顔だなぁ…?」

(あや)しい奴め…身分と目的を明かせ!」

「中々の可愛子(かわいこ)ちゃん連れてんじゃねぇか…なぁ?」


 男達は威嚇(いかく)するように槍を軽く此方(こちら)に向けると(すご)むように言った。


 恐らくは領主の屋敷の衛兵(えいへい)…といったところだろうが、どうにも高圧的でガラが悪そうだ…とアルスは感じた。


 その攻撃的な姿勢と下劣(げれつ)な態度…視線に女性であるフィルビーとレヴィンは居心地(いごこち)悪そうに震えていた。



「国王より書状を預かってきています…それと報告したいことも一件…」

 アルスは内心(ないしん)不快感を覚えつつも、それを(おくび)にも出さず(ふところ)紋章(エンブレム)を見せて淡々(たんたん)と要件を伝えた。


「んだよ、討伐隊か…」

「チッ…仕事を増やしがって…」

「さっさと入れ」

精々(せいぜい)無礼(ぶれい)のないようにすることだな」

「お嬢ちゃん達よぉ、そんなガキ共より俺達と遊ばねぇかぁ??」


 …すると、衛兵達の大半は武器の構えを()き…心底(しんそこ)面倒そうな態度を取り出した。



 その態度に思うところがあったのか、今まで後ろに隠れていたレヴィンはムッとした顔で足音を立てながら前に出だした。


「なんなのアン…むぐっ!?」

 ───しかし、そんな彼女の口をウォルフが後ろから(おさ)え、連行するように屋敷に向かって歩き出した。


 衛兵達が怪訝(けげん)そうな顔をする中、アルスは軽く溜息(ためいき)()きながらフィルビーと共にウォルフ達の後を追って歩き出した。







「急に何すんのよ!この痴漢(ちかん)!!変態(へんたい)!!」

面倒事(めんどうごと)を起こすな、ガキ」


 衛兵達と距離(きょり)が空き、ウォルフが手を離すと思った通りレヴィンは(ですご)剣幕(けんまく)で怒りウォルフを突き飛ばそうとした。

 …が、片手で頭を抑えられ止められてしまっていた。


「うるさい!触んな!てかなんなのあいつら…偉そうにして…ムカつく…!」

魔王討伐隊(おれたち)(あつか)いはいつもこんなものさ…なんならあれはまだマシな部類だな」

 怒りが収まらない様子の彼女に対し、アルスは肩を(すく)めて(なだ)めるように言った。


 国や領主に(つか)えるような兵士は、基本的には討伐隊送りにはならなかった精鋭(エリート)だ。

 そのためか、中には魔王討伐隊を見下し暴言を吐く者…酷い時には暴行を働く(やから)さえいた。

 それを考えればあの程度の対応で済んだのはマシな部類と言えるだろう。



「そういうこった…一々突っかかるな」

 ウォルフはアルスの言葉に同意すると、レヴィンから手を離し屋敷に向かっての歩みを再開した。


「アルスもウォルフも…二人とも強いのに…(くや)しくないの!?」

「どーでもいい…俺の敵は魔族だけだ」

 それでも食い下がる彼女に対し、ウォルフは振り返らずに答え…そのまま行ってしまった。



「レヴィン…」

 それ以上の言葉を失い立ち尽くすレヴィンに対し、フィルビーは心配そうに近づいていた。

 …するとレヴィンは(くちびる)()()めて(しぼ)り出すように声を出した。


「分かってるわよ…あんなの一々気にしてたらキリないって…でも…(くや)しいじゃない…!私達…あんなに頑張ってきたのに…」

「…」

 そんな彼女にフィルビーは何を思ったのか…言葉を返す事なく、ただ彼女の頭を優しく()で始めた。



「…」

 そんな二人を見て…アルスは(あご)に手を当てて少し考え込んだ。


 衛兵達の対応は普通だ。

 魔王討伐隊は所詮(しょせん)捨て石。

 それがこの大陸の暗黙の了解(ルール)


 …しかし、そう感じてしまうのは今までの経験でそのように()()まれてきたからではないのか…?


 もしかしたら…今までその現実に触れてこなかったレヴィンの吐き出した言葉…その想いこそ…本来は正しい()り方ではないのか…?


 ────そんな風に…アルスは自身の感覚に疑念(ぎねん)(いだ)き始めていた。

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― 新着の感想 ―
食料も水も不足しやすく、積極的な交易が必要な砂漠地帯で「報酬未払い」の話が出てきますか…… 魔獣も「未だ」確認されていないなので、雲行きが徐々に怪しくなってきましたね。 わくわくします。
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