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底辺戦士、チート魔導師に転職する!  作者: キミマロ


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第三十四話 亡霊の正体

「大変ですよ!!」

「キューキューッ!!」


 窓の外を見た俺は、ひよこと一緒になって声を張り上げた。

 この村を取り囲むようにして、白い人影が無数に立っていたのだ。

 奴らは虚空に向かって手を突き出しながら、ゆっくりとこちらに向かって歩いて来る。

 その顔はひどくのっぺりとしていて、黒い穴が三つほどあるだけだった。

 それがまた、ひどく気味が悪い。


「テスラさん、早く二人を起こして!」

「何事?」

「亡霊です! 村の外にいっぱいッ!!」

「……分かった。ほら、早く起きる」


 俺のただならぬ様子に、テスラさんはすぐさま二人の布団を引っぺがした。

 その豪快な力技に、シェイルさんとツバキさんが渋々ながらも起き上がる。


「……なによ、いったい」

「朝か?」

「亡霊が出ました! こっちに向かってきてます!」

「ぼうれい? ……なんだと!」

「え? ホントに出たの!?」


 寝ぼけた状態から、一気に意識を覚醒させた二人。

 彼女たちは寝間着を整えると、すぐさまこちらへと駆け寄ってきた。

 そして窓の外を見ると、見る見るうちに顔を青くする。


「あれが……亡霊か!」

「こっちに向かってきてるじゃない!」

「どうする? 逃げるか?」

「逃げてどうにかなるの? 相手は亡霊よ?」

「そうだな……」


 得体のしれない敵の大群に、及び腰になるシェイルさん。

 ツバキさんもそれにつられて、苦虫をかみつぶしたような顔をする。

 そうしている間にも、敵は少しずつ距離を詰めて来ていた。

 このままじゃ、丸腰のまま襲われることになるぞ……!


「こうなったら戦いましょう! そのために来たんですから!」

「賛成。やるしかない」

「ち、しょうがないな!」


 急いで身支度を整えると、ひよこを置いてソノラさんの家を出る。

 すると、亡霊どもは既に村の中まで入り込んでいた。

 細い通りを、横並びになってわらわらと行進している。

 その様子は、さながら死霊の軍隊だ。


「こんなところまで!」

「こいつら、どうやら私たちだけを狙ってきているようだな」

「ええ」


 亡霊どもは、村の家々などには目もくれずにまっすぐこちらへと向かってきていた。

 どうしてよそ者の俺たちを一番に狙うのか。

 先ほどテスラさんは、亡霊たちは宝を奪った村人たちを恨んでいるのだと予想していたが……。

 やはり間違っていたのだろうか?


「とにかく、話の通じる相手じゃないわ! さっさとやりましょ!」

「そうだな! はぁッ!!」


 一閃。

 放たれた青い斬撃が、亡霊の群れを薙ぎ払う。

 たちまち、白い人影がまとめて千切れ飛んだ。

 白い欠片が、紙吹雪よろしく舞い上がる。

 亡霊たちの先鋒が大きく崩れた。


「それッ!!」


 ツバキさんに続けて、今度はテスラさんが仕掛けた。

 地面が鳴動し、家ほどもある巨大な岩の腕が生えてくる。

 振り落とされる拳。

 突き上げるような衝撃とともに、残っていた亡霊どもの過半が吹っ飛んだ。

 すげえ……流石はSランクだ!

 でも俺だって、負けてばかりじゃない!


「炎の剣よッ!!」

「ラース、それ……!」


 驚いて、目を見開くテスラさん。

 その視線の先には、金色に輝く五本の剣があった。

 悪魔フォルミードを倒してからも、少しずつ修行をした成果である。


「まだ、まっすぐにしか飛ばせないですけどね! でもこれで……おりゃあッ!!」


 天を舞う五本の剣。

 闇夜を紅い軌跡が切り裂き、剣先が唸る。

 金色に輝く剣は、火の粉を散らしながら亡霊たちの群れを一気に貫いた。

 数十は居た亡者たちの残党が、瞬く間に消し飛ぶ。


「ありゃ、私の出番は無かったわね。やるじゃない!」

「この調子だと、あと数か月もすれば抜かれてしまいそうだな」

「流石、私の弟子」

「いえいえ、大したことないですよ。操作性は全然ですし。威力とかも、制御が甘くて」


 そう言うと俺は、吹き飛ばした亡霊たちの方を見やった。

 散り散りになった亡霊の身体は、今のところ完全に沈黙している。

 欠片が動いて再生する、なんてこともなさそうだ。


「ひとまず、何とかなりましたね」

「ああ。これで片が付いたのなら良いのだがな」

「そんなに簡単なわけない」

「だろうな……。だが、こんなのが毎日出てきたら流石にたまらんぞ」


 うんざりしたような表情をしながら、ツバキさんが言う。

 こんな状況がしばらく続いたら、流石に睡眠不足で参ってしまう。

 昼夜逆転と言う手もなくはないが、それはそれできついことだろうし。

 亡霊だからと言って、昼には出ないとも限らない。

 

「ちょっと、調べてみた方が良さそうね。正体もはっきりさせたいし」


 そう言うと、シェイルさんは粉々になった亡霊の残骸へと近づいた。

 そしてその辺に落ちていた棒を拾い、それで亡霊の一部を救い上げる。

 彼女は白く光る欠片を顔の前に近づけると、目を細めた。


「何かしらこれ? 重さがほとんどないし、全く見たことのない素材だわ……」

「何か分かりそうですか?」

「ちゃんと調べてみないと何とも。けど、時間はかかりそうね」


 そう言うと、シェイルさんは懐から瓶を取り出した。

 彼女はその口を開くと、亡霊の欠片を詰め込もうとする。

 すると、光る欠片は小さく砕けて消えてしまった。


「あッ……」

「消えた」

「うーむ、本当に何なんだろうな。やはり霊体とか、そういう類のものか?」

「そんなものだったら、魔法も通用しない気がしますけどね」

「ううーん……」


 四人そろって、頭を抱える。

 するとここで、バタンッと物音がした。

 急いで振り返ると、そこには部屋に置いてきたはずのひよこが居た。

 俺たちが戦っている間に、出てきてしまったらしい。


「キュイ、キュイ!」

「あ、こら! 危ないから部屋に戻ってろ!」

「キューッ!!」

「ちょ、ちょっと待て!!」


 小さな翼を広げながら、とてとてッと走り出すひよこ。

 彼――調べたら雄だった――はそのまま、近くに落ちていた白い欠片へと近づく。

 そしてあろうことか、それをくちばしにくわえてしまった!


「危ないッ!!」

「キュウ!」

「え、食べちゃった!?」

「お、おい!! 不味いんじゃないか!?」


 亡霊の欠片を、何と食べてしまったひよこ。

 俺は慌ててひよこに近づくと、くちばしを開かせてどうにか吐かせようとする。

 しかし、時すでに遅し。

 ひよこは食べてしまった欠片を一向に吐き出さない。

 ただただ、苦しげな表情をするだけである。


「キュ……ウ……」

「困ったな……。全然吐かない」

「もう消化してしまったのか?」

「かもしれないですね」

「しばらく、様子を見ないとね。でも、どうしてあんなの食べたのかしら?」


 不思議そうな顔をするシェイルさん。

 言われてみれば、このひよこが拾い食いをするのはこれが初めてだった。

 魔力をエサとするこいつは、普通の食べ物には全く興味を示さないのだ。


「……もしかすると!」

「どうしたの?」

「この亡霊、魔力で出来ているのかも! 確か、魔力を実体化させる魔法とかありましたよね?」

「ええ。魔力だけで作り上げるゴーレムとか魔法生物もあるわ」

「それですよ! この亡霊たちは、魔力で作り上げられた存在だったんですよ! だから魔法も効いたし、ひよこが食べた!」


 俺がそう言うと、テスラさんたちは納得したようにふむふむと頷いた。

 魔力で作られたと聞いて、思い当たる節があったのかシェイルさんもポンと手を叩く。

 だが、すぐさま彼女たちは表情を険しくした。

 魔力で作り上げられたということは――


「だけどそうなると、こいつらは亡霊ではなくて……」

「何者かが、村を狙って放った魔法生物と言うことになりますね」

「そうなると……これは魔導師の仕業と言うことか!」


 ツバキさんが、確信を込めて言う。

 こうして、事件の背後に魔導師の存在が浮かび上がってきたのだった――。


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