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底辺戦士、チート魔導師に転職する!  作者: キミマロ


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第百三十八話 勝利への道筋

「上から物を言いおって」


 恐ろしい形相をしながら、こちらを睨みつける黒鬼丸。

 やつはすぐさま切り落とされた腕を拾い上げると、傷口へ押し当てた。

 すると次の瞬間、傷口が悍ましく蠢き出す。

 肉で出来た蔦のようなものが腕全体を這いまわり、絡まり合い、結びついていく。

 見ているだけで寒気がするようなおぞましさだ。


「むっ……!!」


 こうしてあっという間に、腕が元通りにくっついてしまった。

 いや、前よりもむしろ太く強固に再生されている。

 黒鬼丸は俺が思っていた以上に人間を捨ててしまっているようだ。

 さてどうしたものか……。

 俺が思案し始めたところで、黒鬼丸の気配が一変する。


「うごおおおおぉっ!!!!」


 咆哮を上げ、天を仰ぐ黒鬼丸。

 それと同時に全身の筋肉が躍動し、見る見るうちに膨れ上がっていく。

 

「こ、これは……!!」


 さらなる異形へと変化していく黒鬼丸を見て、驚愕の表情を浮かべる一刀斎さん。

 その額にはじんわりと汗が滲んでいた。

 やがて彼は俺の方を見ると、先ほどまでとは一転して焦った様子で告げる。


「今すぐ逃げよ! あやつには勝てん!!」

「どうしたんですか、急に!」

「あの姿、どうやらあやつは鬼を取り込んでおる!!」

「え?」


 いつの間にか、黒鬼丸の頭からは三本の角が生えていた。

 捻じれて天を衝くそれは、魔力を纏って金色に輝いている。

 だがしかし、それが一体どうしたというのだろう?

 苦労こそしたが、鬼ならば先ほども倒したばかりだ。

 意味が分からず俺が反応に窮していると、一刀斎さんが続けて言う。


「奴が取り込んだ鬼はただの鬼ではない! 酒呑童子じゃ! あの金色の三本角、間違いない!」

「シュテンドウジ?」

「鬼どもの始祖じゃ! 遥か古の時代に滅ぼされたはずなのじゃが……」


 黒鬼丸を見据えながら、歯ぎしりをする一刀斎さん。

 ここで変化を終えた黒鬼丸が余裕たっぷりに笑みを浮かべて言う。


「首塚を暴き、童子の首を持ち去ったのよ。大陸の魔導師の技というのも大したものでな、それだけで鬼の力を一部とはいえ再現しおったわ」

「何と恐ろしいことを……この国を亡ぼす気か! その力、貴様に抑えられるような代物ではないぞ!」

「黙れ!」


 黒鬼丸がそう告げた瞬間、一刀斎さんが急に膝をついた。

 さながら、見えない何かに押しつぶされたかのようだ。


「く、言霊か……!!」

「ははは、これこそが鬼の始祖の力よ! 失せよ!!」

「うぐあっ!!」


 再び、見えない何かによって一刀斎さんの身体が吹き飛ばされた。

 俺はとっさに彼の後ろへと回り込むと、その身体を急いで受け止める。


「ほう、流石に早い」

「そっちこそ、妙な魔法を使うようだな」

「魔法ではない、言霊だ。魔法よりもさらに上位の概念ぞ」

「言い方が違うだけに思えるけど」

「ほざけ! 失せよ!!」


 瞬間、見えない何かが襲ってくるのが分かった。

 見えないのになぜわかるのだろう?

 自分でも不思議であったが、とにかく何かが来ると直感があった。

 ――右足を引き、腰を捻り、上半身を軽くそらす。

 ごくごく最低限の動きで、その何かを避ける。


「……なに?」

「だからさっきも言っただろ? 俺には勝てない」

「ありえぬ。滅びよ!!」


 再び、見えない何かが襲ってくる。

 俺は一刀斎さんの身体を安全な場所に寝かせると、再びそれと対峙した。

 目には映らず、形も全くわからない。

 だがその何かを、俺はまたもやごくごく最小限の動きで避けていく。

 まるで、導かれているかのように。


「……これが、完成された奥義か。何と美しい物よ」

「どうなっている! なぜ当たらぬのだ、言霊は絶対ではないのか!」

「今度はこちらから行くぞ」


 ――見える。

 身体のどこを攻撃すれば、黒鬼丸を倒すことが出来るのか。

 弱点が色を帯びて、はっきりと捉えられた。

 俺は刀を構えると流れに乗るようにして色づいた部分を斬る。


「ぐっ!!」

「はああああっ!!」


 動きを加速し、次々と切り刻む。

 より速く、より無駄なく。

 いつしか切っ先が音を超え、ビュンッと風切り音が増した。

 しかし敵もさる者、凄まじい再生力で喰らいついてくる。

 そして――。


「かぁっ!!」

「むっ!」


 いきなり、黒鬼丸の口から閃光が迸った。

 万物を貫く魔力の光である。

 黒い稲妻のようなそれを、ギリギリのところで飛び退いて回避する。

 流石に今のは少し驚いたな……。

 文字通りの飛び道具に顔をしかめていると、黒鬼丸が不意に笑い始める。


「……こうなれば、何もかも焼き尽くしてくれるわ!」

「何をする気じゃ!」

「酒呑童子の力をすべて解放する! 神代の鬼の力、今度こそ思い知らせてくれよう!!」


 そういうと、黒鬼丸は両手を空に掲げた。

 黒々とした魔力が渦を巻きながら天に昇り、やがて巨大な塊を形成し始める。

 おいおい……こりゃとんでもないぞ……!!

 予想をはるかに超えた圧倒的なまでの魔力量。

 それはさながら、空に昇った黒き太陽のようだった。


「……これが落ちたら終わりだぞ!!」


 あんなのが落ちれば、この城はおろか大和全体が焼けるぞ!!

 俺たちどころか、下手をすれば万単位で人が亡くなってしまう。

 こうなったらもう、逃げられない!

 俺は覚悟を決めると、黒鬼丸を迎え撃つべく魔力を高めるのだった――。


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