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底辺戦士、チート魔導師に転職する!  作者: キミマロ


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第百三十七話 俺の奥義

「んんん!?」


 テスラさんにキスをされた瞬間、俺は何とも言えない声を出してしまった。

 全く経験がないわけではないが、こういうのは何度されても緊張してしまう。

 テスラさんの方も、頬がちょっぴり赤くなっていた。

 しかし次の瞬間――。


「ぬおっ!?」


 身体の底から膨大な魔力が沸き上がってきた。

 その力の大きさに、自分でも驚いてしまうほどだ。

 これが、テスラさんとシェイルさんの魔力なのか……?

 以前にも力を分けてもらったことはあるが、その時を大きく上回っていた。


「すごい……!」

「人の魔力をここまで自分のものとして使えるなんて……さすがだわ」

「これならきっと勝てます! いや、必ず勝ちます!」

「ラース、頼んだわよ」

「お願い。もうあなたしか頼れない」

「任せてください!」


 俺はそう言って胸を叩くと、急いで戦場へと走った。

 見上げれば、戦況はだんだんと一刀斎さんが不利な方へと傾いている。

 あの黒鬼丸という魔導師、身体を改造しているだけあって体力が異常だな……。

 そもそも、天空という人形を長時間に渡って全力稼働させた後なのだ。

 普通ならばそろそろ魔力が尽きるはずだというのに、その気配が全くない。

 かたや、一刀斎さんの方は年齢の問題もあるのだろう。

 魔力も体力も、弱ってきているのが見て取れる。


「この化け物め……。いい加減そろそろくたばれ!!」

「そちらこそ、ジジイが粘りおる!」

「はっ! お前さんの方がよほど年上ではないか!」

「ふん、わしは老いなどとうに克服した身よ!」


 ここで黒鬼丸が仕掛けた。

 全身からおぞましいほどの魔力が噴出し、黒い瘴気となってゆらゆら揺れる。

 やがてそれらが一点に収束すると、強烈な閃光が放たれた。


「ぐおっ!?」

「危ないっ!!」


 とっさに地面を蹴って飛び上がり、一刀斎さんを助けようとする。

 しかし、高さが足りない。

 くそ、俺も一刀斎さんみたいに空気を蹴って飛べたら……!!

 そう思い、全力で身体強化をかけて足を動かしたときだった。

 ――ボォンッ!!

 空砲のような音とともに、身体が浮いた。

 これならば、手が届く!

 俺はどうにかこうにか一刀斎さんの身体を抱え、魔力の閃光から彼を庇う。


「……危なかった」

「ほう! おぬしも飛べたのか!」

「完全にぶっつけ本番ですけどね」

「うーむ、末恐ろしい奴じゃ。わが流派の秘伝を力技だけで実現しておる」


 俺の足元を見て、心底あきれたような顔をする一刀斎さん。

 空中でバタバタと足を動かす様子はとてもかっこ悪いのだが、飛べているだけで驚異的らしい。

 俺は近くの屋根へと降りると、そのまま一刀斎さんを寝かせる。


「大丈夫ですか?」

「ああ、かすり傷じゃ。だが、流石にもう体力が残っておらんな」

「あとは俺に任せてください。何とかします」

「ならばこいつを使え」


 そういうと、一刀斎さんは自らが手にしていた刀を渡そうとしてきた。

 ……確かこれ、ツバキさんの家の家宝か何かじゃなかったか?

 俺が預かっていいものかと一瞬ためらうと、一刀斎さんが笑いながら言う。


「遠慮はいらん、使え! この刀もあやつを切りたがっておる」

「……わかりました」


 差し出された刀をゆっくりと受け取る。

 ――重い。

 特別な金属でも使われているのだろうか、刀は手にずしりと来た。

 だがその反面、よく手に馴染む。

 ずっと昔から握っていたような、そんな感覚だ。

 これが名刀というものなのかもしれない。


「ははは、どれほどやれるか見極めてやろう」


 高笑いをしながら、余裕たっぷりにこちらを見下ろす黒鬼丸。

 俺などいつでも殺せるといわんばかりのその顔を、じっと睨み返す。

 不思議なことに、黒鬼丸の身体からはさほど威圧感が感じられない。

 先ほどまでは押しつぶされるようだったのに、感覚が慣れてしまったのだろうか。


「待ってろ、すぐに叩きのめしてやる」

「ほざくなよ、小僧。身の程を思い知らせてやる」


 次の瞬間、黒鬼丸の手が変形した。

 爪が大きく伸び、指に剣を挟んでいるかのような状態となる。

 そしてそれを広げると、一気に俺に向かって切り掛かってきた。


「そらそらそらあっ!!」


 五本の爪が空を引き裂き、風が唸る。

 人ならざる肉体から放たれるそれは、目にもとまらぬ速さ。

 まさしく嵐のようにと形容するのが相応しい。

 だがそれが、不思議なほどゆっくりに見える。

 ――まさか、走馬灯というやつか?

 俺は一瞬そう思ったが、不思議と嫌な予感はしない。

 次々と繰り出される攻撃を、しっかりと回避していく。


「なぜだ、どうして当たらぬ!」

「……奥義じゃな。小僧の第六感が、とうとう引き出されたらしい」


 俺の動きを見て、冷静につぶやく一刀斎さん。

 ささやくような声のはずが、今の俺には嫌にはっきりと聞き取れた。

 それだけではない、それまで聞こえなかったようなわずかな音がすべて聞き取れる。

 黒鬼丸の呼吸や足音はもちろんのこと、遠くの葉擦れの音まではっきりしていた。


「はぁっ!!」


 黒鬼丸の攻撃をほぼすべて見切ったところで、俺は攻勢に移った。

 魔力を刀に通し、まずは相手の腕の付け根を狙う。

 ――遅いな。

 とっさに身を捻って攻撃を回避しようとした黒鬼丸であったが、その動きはひどく緩慢だった。

 一瞬、わざとやっているのかと警戒したがそうではないらしい。

 俺は黒鬼丸の腕に刃を当てると、そのまま一気に振り抜く。


「ぐおっ!?」


 あっという間に腕が飛び、血飛沫が上がった。

 黒鬼丸は苦悶の声を上げながら、俺を冷えた目で睨みつける。


「貴様……何がどうなっている……? なんだその動きは……!」

「俺にもわからん。ただ一つ言えるのは……」


 一拍の間。

 その後、俺は黒鬼丸を見据えながらゆっくりと口を開く。


「お前にはもう、絶対に負けない」

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