・ラスボスからは逃げられない!
ところがその道中、思い出してみればこの前と同じ場所で、俺は男たちに囲まれることになった。
「ま、待て……っ、ペロペロ……」
「あれ、ナイフぺろぺろマン先輩?」
「変なあだ名付けるなペローリッ! 俺はペロリンガーだ! ジュルリ……」
「んん……? いつもつるんでたターント先輩は?」
「き、貴様っ!! ターントの兄貴は……ターントの兄貴は貴様のせいでなぁっっ!!」
金で雇われたとおぼしきヤクザ者たちがナイフやガラスの破片、バールのような物を握っている。その数、ナイフぺろぺろマン先輩を含めて21名もいた。
「心の病気で家から出れなくなっちまったんだぞぉっっ!! ペロン……」
「ちょっとこれで顔をズッポンズッポンしただけだろ」
「ヒィィッッ?!!」
トイレのスッポンを抜くと悲鳴を上げられた。
「兄貴の仇だっ、覚悟しろこの人の心を破壊する悪魔めぇぇっっ!!」
暴漢たちが一斉に襲いかかってきた。
「恨みはないが、すまん!」
しかし暴漢に囲まれた程度で破れるラスボスなんていない。
トイレのスッポンで迅速に1名を精神崩壊させると、そいつを押し飛ばして包囲から離脱した。
それから細い路地に逃げ込むと迎撃を行った。
「金さえ貰えりゃ俺たちゃなんだっていい! 死ね、変態――ンブホッッ?!!」
「は、速――ンブチュゥッ?!!」
2対1がせいぜいの裏路地ならば背中を刺される心配もない。スキルの成長により威力を増したトイレのスッポンは1撃で悪漢の精神を崩壊させた。
「汚い……汚い……取って……取って……ぁぁぁぁ……!?」
「もうやだ帰るっ!! うわあああんっっ!!」
残るは18人。トイレのスッポンを鋭く構え、さあこいと悪漢どもに手招いた。
「今コイツ、何をしたんだ!?」
「おい逃げるなっ、トイレのスッポンで戦う変態男ごときに――ンホォッッ?!!」
「た、助け――ンギャァァーッッ?!!」
顔面を『キュッポンッ』と吸うと、だいたいの者が一度で精神崩壊するようだ。
「こ、こいつ……こいつっ、変態だけどなんか強ぇぇぇーっっ?!!」
「に、逃げろっ、逃げろぉぉーっっ!!」
「逃げる……?」
ラスボスから、逃げる……?
バカめ、ラスボスからは逃げられないのだ。
「禍根が残っては面倒だ。お前たちには、全員引きこもりになってもらう」
ラスボスは獲物を追った。
圧巻のシャツの中にトイレのスッポンを滑り込ませ、背中や腹や胸を吸うと、やつらは魂を抜かれたように壊れていった。
「た、助けてくれっ、助けてっ、変態におそわれているぅぅ!!」
「嫌だっ嫌だっ、あんな不名誉な武器でやられるのは嫌だぁぁぁーっっ!! ンギュゥッッ?!!」
ナイフぺろぺろマンをのぞく全員を片付けた。
誓って暴力は振るっていない。
「さて、ナイフぺろぺろマン先輩」
「あ、ああ……ああああ…………」
ナイフぺろぺろマン先輩は現れた変質者に失禁した。
鼻先にトイレのスッポンの突き付けられると、それはもう嫌そうに首を横に振って涙を浮かべた。
「これ、正当防衛ですよね?」
さっきはあんなに仇を討つと覚悟を決めていたのに、ナイフぺろぺろマン先輩は何度もうなずいた。
「わかってくれてよかった。えっと、次は壊しますから、その心」
強いじゃないか、トイレのスッポン。
ピリリカさんには微妙扱いされるけれど、ヤバいじゃないか、トイレのスッポン。
俺のトイレのスッポンは相手をPTSD(心的外傷)にすることが出来るそうだ。
想像より圧倒的に強い!
俺は心の傷を負った悪漢たちで酷いことになった裏通りを抜けて、いつもの空鯨亭でビールと、シーフードカレーと、海鮮フライセットを注文して、リッチな晩餐を楽しんだ。




