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・真のラスボスの耐性がガバガバだった!!

「これでわかったでしょう。仮の所有者である貴方。真の所有者である私。どちらが強いかなど、疑うまでもなく明白です」


「はははっ、そりゃ理屈上の話だろっ!!」


「ただの事実ですよ。さあ、愚かなる者よ、観念して死になさい!!」


「やなこった!! スプラッシャァァァーッッ!!!」


 不意打ちで全力の水圧ビームを放つも、魔剣タナトスはそれを一振りで天高くそびえる氷柱に変えた。


「ちょっ、強っ、てか何それずるいんですけどぉーっっ!?」


「これでわかったでしょう。貴方はここで死ぬ。真実と共に」


 やつは完全に追いつめたと勘違いしたのか、剣を下げて高笑いを上げた。

 それから容赦なく、処刑のために、先ほどを越える全力で襲いかかってきた。


≪HP89%→63%≫


 俺は猛攻を受けた。結果だけ言うと、直撃こそ避けられたがHPをごっそりと削られてしまった。

 ヒュージグリーンスライムの核によるカスタムスロット強化をしなかったら、今頃は瀕死寸前だ。


「かくなる上は致し方ない……っ、こっちも奥の手で行くぞ!!」


「奥の手!? ヒハハハッ、負け惜しみを!!」


 出来ることならば、グレンター公爵家のトイレを守護してきたこの聖なるスッポンで勝ちたかった。

 だがこの勝負、どんな卑怯な手を使ってでも勝たなければならない。


「ゆくぞ……トイレのスッポン、二刀流ッッ!!」


 左手に【公爵家の聖なるトイレのスッポン】を逆手に、右手に【如意きゅっぽん】を握り、俺は誰にも予想の出来ない奇襲攻撃に出た。


「ムダですよ、貴方が得た力は私のデッドコピー。全てにおいて私が秀でて――んなぁっっ?!!」


 そう、最近のトイレのスッポン使いは空を飛ぶのである。

 逆手に握った公爵家の聖なるスッポンから、水流ビームを闘技場の壁にぶっ放して、変態貴族は反動で空を飛んだ!!


「そぉいっっっ!!」


「ブギュゥッッ?!!!」


 まずは一撃命中。

 顔面をスッポンで吸われた真のラスボスは怒り声を上げて距離を取った。


「リチャードォォッッ!!!」


「はははっっ、いい気味だぜ!! 俺もクソ生徒だったが、お前もひでぇクソ教師だったぜ!!」


「許さん……っ、すぐに殺して――うっ!?」


 懸念が1つあった。

 ボスというのは耐性の塊だ。

 もしこれが効かなかったら相当にヤバい状況だった。


 だが、このゲームの開発者は、真のラスボスのラスター・エッジに【尿路結石耐性】を設定してなかったようである。


「どうした、ラスター?」


「なんだ……なんだ、これは……っ、うっ!?」


 ラスターは内股になって尿路と腰の違和感に苦しそうな顔をした。


「もう1発いくぜ!!」


「き、貴様……っ、な、何を……っ!!」


 ラスターは確実に弱っている。

 もう一度同じ技でラスターを強襲した。


「同じ手など通じるかっっ!! ポギュッッッ?!!」


「なんだ、通じるじゃん」


 なんのことはない。

 水量をさっきの倍にして、加速力を倍にしたのだ。


 なんか後ろの観客席からガチギレのコールが響いてるけど、そこは気にしない。

 だって今日はお祭りの日だし、こういう日は[ずぶ濡れ=エンターティメント]でしょ!


「ウッッ、ウグァァァッッ?!! な、なんだ、これは……っ、ウガァァッッ?!!」


 正面では成長した尿路結石がラスターに膝を突かせていた。

 いかに真のラスボスであったとしても、尿路結石の激痛には敵わなかったようだ。


「どうした、ラスター? 顔が真っ青だけどどっか痛むのかー?」


「こ、この程度、この程度の痛みなど――ウゥゥッ?!! ウ、ウアアアアアアッッッ?!!」


 真のラスボスは剣を杖にして尿路と腰の激痛に苦しみあえいだ。


「はぁっはぁっはぁっ、はぁぁぁ……っっ、こ、この症状は……ま、まさか……っっ」


「次行くぜ、ラスター」


「ヒッッ?!」


 あと1発当てれば戦闘不能となる。

 だがヤツもこれ以上の重傷化だけは、どんな痛みが走ろうとも避けようとするだろう。


「け、消す……っ!! 骨の芯まで凍らせてっ、粉々に踏み砕いてくれるぅぅっっ!!」


「うおっ?!」


 事実、やつは全力も全力だった。

 魔剣の力を借りてアイスボルトの弾幕を放ち、それが観客席と舞台を隔てる魔法障壁に突き刺さろうと、もはやなりふり構わなかった。


「止めて下さいラスター選手っっ!! ひ、ひぇぇーっっ?!!」


 舞台からルイン王子が飛び降りてきて、チャッティ・キャットをお姫様抱っこで保護した。ナイス・イケメンだった。


「あれは、魔剣タナトス……?」


「おっ、手伝ってくれんの、ルイン?」


「ううん、君に任せるよ、リチャード」


「ええーっ、手伝ってくれてもいいじゃん!?」


「アレが本当に魔剣タナトスであったところで、君が負けるわけがないよ。なんたってリチャードは、僕の師匠なんだからね」


 ルインは王家の特別席に軽やかに飛び戻り、アイツにカッコイイところを見せたくなった俺は氷のマシンガンの中を前進した。


「くるなっくるなっくるなぁぁぁっっ!!!」


「やだねっ、お前だけは絶対に死なすっっ!!」


「ヒィィィッッ、イヤだぁぁぁっっ、くるなっ、くるなくるなくるなぁっ疫病神ィィィーッッ!!!」


 ガンベルトから奥の手【ヘビーダーツ】を抜いた。

 ガンベルトに用意したのは数えて10本。それを指の間にはさみ、明後日の方角に全力で投げた!!


「な、なんのつもりだ、貴様っ!?」


「じきにわかる!! その前にちょっと水浴びといこうぜっっ!!」


 【公爵家の聖なるトイレのスッポン】から水流のビームを放った。

 ラスターはそれを氷柱に変えるが、ぶっちゃけそれ、(デコイ)だから。


 本命は先ほどヤツの死角に投げたヘビーダーツ10本だ。

 俺が投げたヘビーダーツは敵の背後で軌道を反転させ――


「ウガァァァァッッ?!!」


 絶対命中50%の力により、その半数がラスターの背中に突き刺さった!


「隙ありっっ、伸びろっ、如意きゅっぽん!!」


 最後は爆発的に伸びるトイレのスッポンで、やつの顔面を『ギュポンッ』と強襲すれば――


「ンゴホォッッッ?!!」


 これにてチェックメイトだ。

 シンプルな理屈である。重度の尿路結石を患った者が戦闘を継続するなど、論理的に不可能であると断言しよう。


 俺は武器を下げ、公爵家の聖なるトイレのスッポンを腰に戻した。



「ウッ、ウギャァァァァァァーッッ!! アーッ、アァーッ?!! オギャァァァァーッッ?!!!」



 ラスターは魔剣を落としてうずくまり、激痛に悶絶した。

 しかしこれで終わりではない。俺は悶え苦しむやつを蹴り、仰向けにさせたところでマウントポジションを取った。


「ま、待でぇぇ……っっ!! 止めろっ、死ぬっ、これ以上されたら死んでしまうぅぅっっ!!!」


「これは……貴様に陥れられた父上の分っっ!!」


「ホギュゥッッッ?!!」


「そしてこれは……俺の弟に大怪我を負わせた分っっ!!」


「ングッングォォッッ?!!」


「弟と引き裂かれたサルビアの分っっ!! あと死にかけた庭師の分っっ!! えーとあとはっ、とにかく理由はいいから氏ねっ氏ねっ氏ねっ!!」


「ギュッポンッ、ギュッポンッ、ギュッポンッ、ギュッポンッ、オギュボォォッッ?!!」


「そして最後はっっ、お前のせいでサイコーの人生を生きることになったっ、俺から感謝の一撃だ、オラァァァッッ!!」


 最後に感謝の一撃をぶち込むと、俺はマウントポジションから離れ、観客に俺の信じる最強武器を掲げた。


「あ……悪、魔…………うが……っっ」


 ラスターの腹部は重度の状態異常:尿路結石により妊婦のように膨らんでいた。

 もはや手術でどうにか出来るかもわからない深刻な症状だ。

 いかにあの特効薬を使おうとも、今後まともな日常生活は難しいだろう。

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