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26/50

・なんかまたガールフレンドが増えた!

 旅の扉の終点からギルドの地下に戻った。

 すると少し離れたところのテーブルで、ピリリカさんが美味しそうなサンドイッチを小さな口でついばんでいた。


「おっす、ピリリカさん、ただいま!」


「あ、お帰りなさい、リチャードさんっ! そろそろかと思い、お帰りをお待ちしていました!」


「美味しそうなツナサンドだ」


「あげません! チーズサンドはともかく、ツナは最後のお楽しみなんです!」


 そう言ってやさしいピリリカさんは、残りあと少しのチーズサンドを俺にくれた。

 ピリリカさんは食べかけとかそういうのは気にしないたちのようだった。


「お、美味いな、後で店教えてくれ」


 先に金庫室に今日の戦果を運んでピリリカさんのランチが終わるのを待った。

 ちょうど全部運び終えると、ピリリカさんが金庫室にやってきた。


「あの、リチャードさん……」


「ようっ、これ全部引き取ってくれ!」


「いえ、あの……毎度言っていますが……多すぎますよっっ、いくらなんでもぉ……っっ!?」


「わかってる」


「わかってるならなんでこんなに拾ってきたんですかぁーっ!?」


「余った分はタダで譲る。俺、究極的に言うと、スキルさえ上がればそれでいい人だから」


 そう伝えるとピリリカさんの驚きやあきれの表情が現金な笑顔に変わった。


「あ、はい、それなら問題ございません♪ リチャードさんにも、ボランティアの大切さをわかっていただけて私嬉しいです♪」


「クエストを工面してもらえて俺も助かった。これからもよろしく頼むぜ、ピリリカさん!」


 戦果は

 【薬草】が約1000。

 【レアハーブ】が75。

 【グリーンスライムの核】が386。

 【ナイトグリーンスライムの核】が6。


 【ヒュージグリーンスライムの核】等、これから必要な分は手元に残した。


「そうですね、しめて4000Gでどうでしょうか?」


「え、そんなにいいの?」


「【ナイトグリーンスライムの核】、これは珍しい物なので好事家がコレクションしたがるかと思います。【レアハーブ】もいいですねっ、医院の先生が喜びますよ!」


 どこの世界にもいるのな、コンプ厨。


「んじゃその値段で、売った!!」


「はいっ、ではこちら、1000G金貨4枚をお受け取り下さい! あら、どうかされました?」


「いや、ギャラを手渡しで受け取ったの、なんか久しぶりで感動しちゃって……」


「え? 宿のキャンディちゃんに、ドッカー鉱山に行かれたと聞きましたけど……。まさか、変なダンスクラブで働いていたのですかっ!?」


「んなわけねーだろっ!? なんでそういう発想になるよっ!?」


 ブーメランパンツで金貨を受け取る自分を妄想したが、残念!!

 俺はパンツをはいていない!!


「だってリチャードさんって、変なことして喜ぶ変な人じゃないですかーっ!」


 うん、それはそう。


「いや防具職人のお姉さんにっ、胸の谷間に金貨をはさんで渡されてただけだってっ!」


 ついそうぶっちゃけてしまうと、ピリリカさんの表情筋が突然死した。


「あぁ……リチャードさんって、変な人なのに、モテますよねー……」


「え……?」


 何、このリアクション……?


「ふぅーん……仲が、いいんですねー、その女性とー。はい、やっぱり気が変わりました、2000Gのお支払いになります」


「まさかの査定額2000Gダウンッ!? ちょ、ちょっと待ってくれよ、ピリリカさんっ!?」


「キャンディちゃん、リチャードさんの話をするとき、すごくかわいいんです……。恋する乙女の顔してますよー。はぁ、モテていいですねぇー、リチャードさんはー」


 ピリリカさんは問答無用で2000Gを押し付けると、調子に乗ってるリチャード・グレンターを金庫室から追い出した。


「リチャードさんは八方美人です! そんなこと続けてたら、いつか地雷女にハマって胸とか下半身とか刺されちゃいますからねっ!?」


「き、気を付けます……」


 ピリリカさんは小柄な背丈から長身の男の鼻先に、追加の1000G金貨2枚を突き付けて、それを人のポケットに押し込んだ。


「明日も来て下さい! いい仕事を斡旋しますから!」


「ああ、もちろんくるっ!」


「はい、きっついの用意しておきます。闘技大会も近いですし、がんばって下さい」


「ありがとう、がんば――」


 金庫室の扉はこちらの返答を待たずに『ピシャッ』と閉じられた。


「がんばる……がんばるぜ……」


 ピリリカさんの前で他の女性の話は今後止めておこう。

 嫌われてしまった悲しみを胸に、俺は次の目的地である【モンスターギルド】に向かうことにした。



 ・



 道中、屋台でカツサンドを買って、行政府で闘技大会の出場申請をした。


「はい、リチャード・グレンター様、闘技大会は貴方の出場申請を受理いたしました」


 さすがはお役所だった。


 メイン武器:トイレのスッポン

 サブ武器 :ダーツ

 盾    :ダーツボード

 職業   :元ラスボス


 とか書類にペンを滑らせても、書類がカツサンドの油まみれになっていても、お役所仕事で処理してくれた。


「カツサンド、美味しそうですね。どこで買いました?」


「正面玄関出てすぐの通り。すげー美味いよ」


「実はお昼まだなんです。同僚が、帰ってこなくて……」


「はは、よかったら買ってきてやろうか、お姉さん?」


 リチャード・グレンターはモテる。

 世界の法則をねじ曲げているんじゃないかと疑わしいほどにモテる。

 ちょっとした親切心でカツサンドを買ってきてあげると――


「私、大会では実況役を仰せつかっておりまして……。大会が始まったら、会場で昼食でもどうですか……?」


「い、いや、気にしないで。遊び半分でおごってみただけだから……」


「あ、ダメですか……? 残念です……」


「いやぁ、まあ、ダメってことはないが……」


≪女たらし:27→28≫


 なぜか食事の約束をしてしまっていた。

 まあいいか、未来の俺がどうにかするだろうと開き直り、都の郊外にある【モンスターギルド】まで市の馬車で移動した。

もっと増えます。


またよろしければ、画面下部より【ブックマーク】と【評価☆☆☆☆☆】をいただけると嬉しいでーす。


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