・ハック&スラッシュ乱獲DAYs した!
朝。
「いってらっしゃい、兄さん」
とチャールズが言うので、軽くチェスで負かしてから屋敷を出た。
行き先はもちろん冒険者ギルド。目にしみるような白い朝日を浴びて、混雑する冒険者ギルドの列に並んだ。
俺のようにソロを好む者は左のカウンター。団体は右のカウンター。酒場のテーブルは冒険者たちでごった返していた。
「えっ、リチャードさん!?」
順番がやってくると、さっきまで落ち着いた応対をしていたピリリカさんが素っ頓狂な声で驚いた。
「おっす、ピリリカさんしばらくぶり。ワンパなザコがいっぱい出てくる仕事ある?」
「え、ええ、ありますけど……。今日はいったいどうしたんですか……? いつもはお昼頃にならないと、姿を現わしてくれないのに……」
「今日は寄り道したいところがあるんだ」
「ははぁなるほどー。あ、それでリチャードさんのクエストなのですがっ!」
かわいいメガネ女子に俺だけフレンドリーな特別な応対。
それがピリリカさんのファンからの刺すような視線をもたらしたけど、俺はそういうのをあまり気にしないタイプだ。
「なんかいいのある?」
「はいっ、港の方に営業をかけて! リチャードさんが大好きなっ! 【不定形の森での薬草採集クエスト】を復活させておきましたっ!」
「おおっ、ありがとうピリリカさん!!」
「いえいえ、私の出世のためですから! よろしければ次は大きなクエストを受けて下さいね!」
「ああわかった!」
即決で話がまとまるとカウンターを離れた。
今日はメガネ女子の引率なしで地下へと下り、行列の出来る旅の扉から【不定形の森】に旅立った。
「おおっと……?」
すると俺はワープ早々に敵に囲まれていた。
木漏れ日が心地よい森にたどり着くなり、グリーンスライムの群れ約100体に囲まれてしまっていた。
騎士の兜をかぶった大型の個体、ナイト・グリーンスライムはそのうち7体。
彼らは虐殺者リチャード・グレンターを倒すために一致団結して、待ち伏せからの即突撃をしかけてきた。
「フギュッッ、フゴッッ、フゲェェーッッ?!!」
怒れるグリーンスライムたちは元ラスボスをピンボールゲームのように体当たりで弾き飛ばした。
しかし悲しいかな、彼らは過剰強化防具【冒険者の服+22】を着た元ラスボスに、ダメージを一切与えられなかった。
「恨むならばゲーム序盤のザコに生まれたその身を恨むがよい! ソイヤァァァッッ!!」
ピンボールの玉にされていた俺はナイト・グリーンスライムの巨体を『キュッポンッ』した。
すると【特性:吸引力・大】の力がフックとなり、ピンボールゲームを強制終了させる。
そしてトイレのスッポンが吸い付いたナイト・グリーンスライムの巨体を力任せにぶん回して、奥のグリーンスライムの群れに投げ飛ばした!!
「びぎぃぃぃーー!? TT」
ピンボールはボウリングにルールが変わった。
「そんでもって爆ぜろっ、でっかいやつっ!!」
サブウェポンのヘビーダーツを5体のナイト・グリーンスライムに投げ付けた。
最初は2本、次は3本同時に投げると、どの個体も一撃で爆ぜ飛んだ!
≪ダーツ:33→34≫
「ぷ、ぷりゅりゅ…… TT」
残るはナイトが1体とかわいいだけのザコだけだ。
トイレのスッポンを片手に戦う変態貴族は大地を蹴ってスライムの群れに突撃した。
「逃がさんっっ、全員この場でっ、ケーケンチとなれぇっ!!」
「ぴぃぃぃっっ?! TT」
「うおおおおーっっ!! キュポッキュポッキュポッキュポッキュポッキュポッキュポォォォォ……ッッ!!」
「ぷりゅぅぅぅっっ?!! TT」
≪トイレのスッポン:55→56≫
≪トイレのスッポン:56→57≫
≪トイレのスッポン:57→58≫
≪トイレのスッポン:58→59≫
やはり乱獲!
ザコの乱獲こそが効率育成のベストアンサー!
≪トイレのスッポン:59→60≫
≪トイレのスッポン:60→61≫
≪トイレのスッポン:61→62≫
≪トイレのスッポン:62→63≫
「ぷ、ぷりゅ…… TT」
「俺を倒したかったら次は10倍の戦力を揃えてくることだぁっ!!」
「ぴぃぃぃーっっ!! TT」
かくして変態貴族はノーダメ完封で勝利した。
ドロップはグリーンスライムの核が94。
ナイトグリーンスライムの核が7。
のっけから過去最高効率の稼ぎになった。
ちなみにヘルバさんが造ってくれた【オリハルコンの腕輪】には、全ステータス20%アップというチート補正がかかる。
これを元ラスボスのリチャードが装備すると、元々高いステータスが乗算で強化されてしまう。
そういったわけで、さきほどナイト・グリーンスライムの巨体を余裕で投げ飛ばせたのは、ヘルバさんのおかげと言ってもよかった。
「ってことで、採集採集採集採集っっ!!」
薬草と出会えば薬草を刈り……。
≪採集:57→58≫
≪採集:58→59≫
≪採集:59→60≫
「乱獲乱獲乱獲乱獲ぅぅっっ!!」
スライムと出会えばスライムを狩り……。
≪ダーツ:34→35≫
≪ダーツ:35→36≫
≪トイレのスッポン:63→64≫
≪トイレのスッポン:64→65≫
≪トイレのスッポン:65→66≫
「ドゥハハハハッ!! 俺様はなぁっ、レベリング厨のリチャード・グレンター様よっ、変態!!」
そこに突然、超超大型の高さ3メートルはあろう【ヒュージ・グリーンスライム】が現れようとも、テンションアゲアゲの変態貴族は退かなかった。
「ダーツボードシィィィルドゥッッ!!」
でかくなってもやることはワンパなヒュージグリーンスライムの体当たりを【ダーツボードシールド+20】で受け止めた。
最強に強まったダーツボードシールドは、敵の運動エネルギーを大幅カットした。
まあ要するに、2トンじゃどころじゃない超重量のダンプカーアタックを数センチの地滑り程度に抑え込んでみせたのである。
「バカめ、どんなに巨大化しようとしょせんはグリーンスライム!! 貴様らは未来永劫っ、元ラスボスである俺には勝てんのだぁっ!!」
「ぷ、ぷりょぉぉぉぉーっっ?!! TT」
「最弱種族よっ、我がケーケンチとなれぃぃっっ!! キュポポポポポポポォォォッッ!!」
≪トイレのスッポン:66→67≫
≪トイレのスッポン:67→68≫
≪トイレのスッポン:68→69≫
≪トイレのスッポン:69→70≫
そのスライムは神が授けてくれた経験値の塊だった。
「まだまだまだまだまだまだまだぁぁーっっ!!」
「ぷりゅ、ぴり、ぷぎゅ…… TT」
≪トイレのスッポン:70→71≫
≪トイレのスッポン:71→72≫
≪トイレのスッポン:72→73≫
≪トイレのスッポン:73→74≫
見上げてもまだ足りないほどのその巨体。HPもMPもまた無尽蔵だった。
それでいて耐性はガバガバで、我がトイレのスッポンがもたらす麻痺効果に痺れ、毒に顔色を紫色にしている。
≪トイレのスッポン:74→75≫
≪トイレのスッポン:75→76≫
≪トイレのスッポン:76→77≫
「ドゥハハハハッッ、ごっつぁんケーケンチッッ!!」
ヒュージグリーンスライムのHPがついに≪HP0%≫を示すと、見上げるほどの巨体が消滅した。
≪トイレのスッポンが75に到達しました!
【戦技:液体吸収】
【戦技:液体放出】を習得した!≫
≪【戦技:液体吸収】
液体をトイレのスッポン内部に収納する技≫
≪【戦技:液体放出】
液体をトイレのスッポンから任意の圧力で放出する技≫
「ははははっ、何これ面白そう! トイレ掃除にも超便利じゃん!」
ドロップは【ヒュージスライムの核】と、【リトル・リトル・クラウン】という頭防具だった。
若い女の子が付けたらかわいいだろうけど、大きなお兄さんが付けたらちょっとどころじゃないくらい痛いやつだ。
「いやぁ、スライムって本当に素晴らしい!」
太陽が南天するまでの約4時間半ばかし、変態貴族はスライムいじめと薬草採集に勤しんだ。
≪ダーツ:36→41≫
≪採集:60→76≫
≪採集が75に到達した!
戦技:採取地センサーを習得した!≫
≪【戦技:採取地センサー】
一定時間、採集ポイントがド派手な自己主張をする≫
新たに覚えた戦技【戦技:採取地センサー】は発動させると、まるで東○ディ○○ーランドのナイトパレードのように、視覚と音でプレイヤーを楽しませてくれた。




