・飛び降りたり巨乳鍛冶師NPCと仲良くした!
マビノギとかが好きでした
「ヘルバさーんっ、鉱石売りたいんだけどーっ!」
「リチャードッ、なんだい早いじゃないか! あ、ミスリル鉱石!」
青みがかった銀色に輝く鉱石にヘルバさんが目の色を変えた。
バカ高い上級鉱山でも5%の確率でしか手に入らないのだから、鍛冶職人なら欲しがるに決まっていた。
「いやミスリルと銅は売らない。売るのはこっちの錫と鉄だ」
「そんなこと言わないで、リチャード……」
「いやいやいやっ、もう色仕掛けは効かないっ! ミスリルは売らない!」
「そうかい……? それじゃ【鉄鉱石】が50G、【錫鉱石】30Gだよ」
「よし売ったっ! それと倉庫のレンタルがしたい!」
「1日100Gだよ。ほら、30Gのお釣りさ……」
「な、なぜ胸にはさ……っ、うっ?!!」
真っ赤になって谷間から10G小銀貨を受け取る若者をヘルバさんは笑い、また尻を叩いて鉱山に送り出した。
「やるじゃないかっ、さっ、行ってきなっ!!」
「お、おっぱい怖い……」
迫るのはいいけど迫られると弱い。
それが男心。ピュアな元ラスボスは再び上級鉱山に乗り込んだ。
そしてやることは先ほどと全く変わらない。
なぜか復活するユーザーフレンドリーな採掘ポイントに、ヘルバのツルハシをガンガン振り下ろしていった。
≪採掘:9→10≫
≪採掘:10→11≫
≪採掘:11→12≫
「アイキャンフラーイッッ!! ゲヒッッ?!!」
≪落下耐性:3→5≫
痛くてもノンカロリーの甘くて美味しいやつが飲めると思えば、いくらでも俺は鳥になれた。
「ヘルバさーんっ、鉱石売りたい!!」
「も、もう帰ってきたのかいっ!?」
「次はもっと早く帰ってくるかもな!」
「おや、【金鉱石】があるね! それは500Gだから……しめて600Gだね!」
「はい売ったっ! ……ちょ、ちょぉぉぉっ、それはいいっ、それはもういいからっっ!!」
「アハハハッ、リアクションがカワイイから止められないのさ……。さ、持っていきなよ? 早くしないとイタズラしちゃうよ……?」
エッチなお姉さんの胸の谷間から100G銀貨6枚を受け取り、獲得した銅鉱石を倉庫に詰め込んで鉱山へ乗り込んだ。
「そいっそいっそいっそいっそいっ!!」
≪採掘:12→13≫
≪採掘:13→14≫
≪採掘:14→15≫
スタミナポーションにより回復したスタミナで鉱山をダッシュで駆けた。
復活した採掘ポイントを掘り、そしてまた――
「アイキャンフラーイッ!! イッ……痛……痛くなーい……っっ」
≪落下耐性:5→7≫
悪ぃ、本当はちょっと痛ぇわ……。
「ヘルバさーんっっ、またまた鉱石売りたいんだけどーっ!!」
「リチャード、アンタ……まさかあそこから飛び降りてきてるのかい……?」
「そーだけど? あ痛っ?!」
そう答えるとお姉さんにまた尻を叩かれた。
なんで執拗に尻?
これ、セクハラ……?
「アッハッハッハッ、バカだねぇ、アンタ!! でもますます気に入ったよ!!」
鉱石を掘って空を飛ぶだけの簡単な作業です。
「だ、だからそれ止めろってヘルバさんっっ?!」
「んんー? ギャラいらないのかい?」
「いるっ、いるけどっ、普通に渡して……オウフッッ?!」
必要な鉱石は残し、鉱山に乗り込み、掘って飛んで、おっぱい。
それをもう2週繰り返すと、ルーチンに変化が起きた。
「アイキャンフラーイッッ!! スタッ! お、おお……」
≪落下耐性:11→13≫
高さ4メートルの高さから飛び降りた俺は重力無視の軽やかな着地で、落下ダメージをノーダメで乗り越えた。
こうなるとさらに奥のルートが採用出来る。
ヘルバさんに鉱石を売り、またセクハラされつつ鉱山に入ると、右手のショートカットではなく左手の深部に進んだ。
「ド派手な鉱床発見!! そいそいそいそいそいそいそいやーっっ!!」
≪採掘:21→22≫
≪採掘:22→23≫
≪採掘:23→24≫
≪採掘:24→25≫
≪採掘スキルが25に到達!
特殊効果:鉱石入手×2を手に入れた≫
入手した鉱石は17。うちミスリルは2。判定は上等だ。
その先に現れた分岐を右手に曲がると、俺は再び鉱山の外へと続く降下ポイントに出た。
「下まで、8メートルくらい……? でかい橋から飛び降りる感じ? いや死ぬっしょっ、これ死ぬっしょ……っ!?」
ゲームシステム上は死ぬことのない高さだとしても、ちょっと生存本能さんにご理解いただけない高さだった。
「ア、アイキャ……ひぃぃっ、高ぇぇぇーっっ?!!!」
ディスプレイ越しならニコニコで飛び降りれるのに、自分の身体でやると足がすくむ!
「だ、だが、ドッカー鉱山で効率プレイをするなら、落下耐性スキルは必須……くっ、くぉっ、お、俺は、俺は鳥だっ、鳥になるんだぁぁーっっ!!」
これは投身自殺ではない。
明日への偉大なる第一歩だ。
鳥となった俺は万有引力に引き寄せられ、両足で大地を踏み締めた。
≪落下耐性:13→20≫
≪HP100%→44%≫
「うっ、うごほっっ?!」
ヤバいと感じてトロピカルポーションを2本飲みした。
≪落下耐性スキルが20に到達!
特殊効果:ジャンプ力2倍を手に入れた!≫
説明しよう。【特殊効果:ジャンプ力2倍】とは、アクションゲームさながらのジャンプが可能になる補正である。
これにより踏破能力が大幅強化され、プレイの幅が広がるのである。
「ヘルバさーんっ、鉱石売りたいだけどーっ!!」
「なんだい、今度は遅かった――な、なんだい、その荷物の量は!?」
「全部鉱石だ、買ってくれ!」
「驚いた……アンタ、いったいどうやってこの短期間に……」
「落下耐性スキルが育ってきたから、鉱山のさらに奥から飛び降りてきた」
「や、やるじゃないかい……ただ者じゃないよ、アンタ……」
金鉱石が2つあったこともあり、いらない鉱石たちはどんぶり勘定で2000Gで売れた。
「さ、持っていきな。遠慮はいらないよ、アンタのおかげでこっちは大助かりさ」
「ひゃ、ひゃいっ!!」
胸の谷間に1000G金貨をはさんだ褐色美女にずいと寄られて、胸に胸を押し寄せられた。
ありがたくそれをいただいて逃げ出すと、またヘルバさんに笑われた。
≪女たらし:10→12≫
「リチャード、アンタさ、なんかムラムラしてくる子だね……」
「いやそれぶっちゃけ過ぎだっての!?」
逃げるように鉱山に乗り込むと、西の空が赤く燃えていた。
この周回でタイムオーバーとなるだろう。
鉱床を掘って掘って掘って、キラキラが魔法のように鉱石に変わるゲーム世界の鉱山で、俺は今日最後の良い汗を流した。
≪採掘:25→26≫
≪採掘:26→27≫
≪採掘:27→28≫
≪採掘:28→29≫
そしてその終点にはさっきのアレが待っている。
高さ8メートル。死ぬはずなんだけど死なない高さから、俺は再び鳥となった。
「落ちますっ、落ちますっ、あーっっ!!」
≪落下耐性:20→26≫
≪HP84%→53%≫
トロピカルポーションを2つ飲んで鎮痛剤にすると、周回が異常に早い鉱山夫はヘルバさんのところに駆け戻った。
「採掘権は日没までだよ。お疲れ、リチャード、アンタすごいじゃないかい!」
「ああ、楽しかった! おかげで8メートルの高さから飛び降りても死ななくなった!」
「アンタ変な子だねぇ、本当に……」
「そういうのは言われ慣れてる。さあ換金を頼む」
「あいよ! おおっ、このはオリハルコンはアタシへのプレゼントだね?」
「んなわけないだろ。それは売らない」
「バカ言っちゃいけないよ!! こういうのはアンタには早いからアタシが買ってあげるよ!」
そんなに欲しいのか、ヘルバさんはオリハルコン鉱石を見つめたままそう言った。
譲る気はなかったが、一方でまあ確かに、今の俺では加工できない鉱石だ。
「そんなに欲しいのか?」
「え、くれるのかいっ!?」
オリハルコンのドロップ率は1%だ。ゲームだと売れば5000Gになった。無論、NPCに売ったことなど一度もないが。
「ま、いいか」
オリハルコン鉱石を握り、ヘルバさんに差し出した。
「む、胸で受け取るには大きすぎるねぇ……」
「バカ言ってると気を変えるぞ」
「ああ貰うっ、貰うよっ、ありがとうっ、アンタいいやつだね、リチャード!!」
「いいさ。それより良い宿屋を知らないか? もう4日この町に滞在しようと思っている」
「ならうちにきなよ」
「い、いや……それはさすがに……」
「きなよ! うちにきなよ! こんなによくしてくれたんだっ歓迎するよ!!」
「そういう下心があって譲ったんじゃない!」
「男のくせに何言ってんだい! もう決まりだからねっ、他の宿に泊まったら明日から鉱石を買い取らないよ!」
「強引すぎる……」
結局押し切られてヘルバさんの仕事の片付けを手伝い、彼女の家で手作りのトマトパスタをご馳走になった。
それから夜がふけると――
「ねぇ、そっち行っていいかい、リチャード?」
「あの、僕、そういうのはちょっと……」
「行くね……」
「いや待って!?」
誓っておかしなことはしていません。
ヘルバさんは肉体、人格、料理の腕。すごく、すごく、魅力的な人だった……。
≪女たらし:12→19≫




