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14/50

・メガネ女子とトイレのスッポンでガチムチを狩った!

 朝、力ずくのモーニングサービスをしてくれる親切なギルド職員ピリリカさんに引っ張られて宿を出た。


 ふと気付くと馬車の中で、またふと気付くと馬車が止まっていて、さらにまた気付くと肩を揺すられていた。 


「着きましたよ。はぁ、どうして冒険者の方ってこうだらしないのかしら……」


「ここ、どこ……? え、何……?」


「いつまでも寝ぼけてないで行きますよっ、リチャードさんっ!」


 馬車から引っ張り出されると、御者さんが俺たちを笑って馬車ごと厩舎の中へと入っていった。


 その馬車駅の看板には『トーイ鉱山駅』とあった。

 その隣の看板には『トーイ温泉へようこそ』とも。


 そう、トーイといえば観光地だ。

 民宿や旅館の案内看板が目立つ。


「さあリチャードさん行きましょう!」


「やっぱ止めて温泉にしない? 俺が金出すからさー、どっかでダラダラして帰ろうよー」


「ダーメーですっ! 私たちが届ける薬を待っている子供たちがいるんですよっ、さあキリキリ歩いて下さいっ!」


 小柄なメガネ女子に引っ張られて温泉街方面ではなく廃鉱山方面に道を登った。

 今は住む者もいない寂れた鉱山街を横切り、坑道の前までやってくる。


「申請をしたC級冒険者のピリリカです。こちらは新人のリチャードさんです」


 廃鉱山の番人は奇異の目でこちらを見るものの、『C級冒険者ならば問題ないだろう』と言って中に通してくれた。

 内部は岩盤で構成された暗い坑道だった。


「C級冒険者だったのか」


「はい。ですが裏方に回りたくなりまして」


「どうりで身のこなしが良いわけだ。この件、ピリリカさんだけでどうにかなるんじゃないか?」


「クリムゾン・オーガはAランクのボスクラスモンスターですよ! 我がギルドのエースッ、リチャードさんが頼りです!」


 その危険なボスクラスに独りで挑もうとしたのはピリリカさんだ。


「ま、さっさと終わらせて、だらだら温泉にでも入るとしようぜ! トーイ温泉、一度遊びに行ってみたかったんだ!」


 複雑に入り組んだ坑道を進んだ。

 崩落で生じた縦穴を古いハシゴで下り、行く先々で無計画な採掘計画の結末を見せられた。


 それからさらに進むとようやくだ。

 トーイ鉱山最弱モンスターのレッドスライムが現れた!


「あ、ケーケンチッ!!」


 ズザザ……!

 レッドスライムは逃げ出した!


「あ、待て!!」


「どこ行くんですかリチャードさんっ!! そっちじゃありませんっ、オーガの縄張りはこっちですっっ!!」


 ピリリカさんに背中から抱きつかれた。

 ピリリカさんはメガネで小柄で大人な女性だ。

 背中に膨らみが『ぷにゅん』と当たると俺は正気に戻った。


「さあリチャードさん、この先がオーガの巣窟です! ガンガン行きましょう!」


「オーガか、ケーケンチは不味いけど金策効率は悪くないな。よしっ、俺とピリリカさんで乱獲といこうっ!!」


「それでこそ我がギルドのエースです!! では前衛はリチャードさんにお任せします!!」


「言われるまでもない!!」


 レッドスライム乱獲の方がいいなぁ……。

 ぴぃぴぃ泣かせたいなぁ……。

 そんな外道な本心を押し隠し、俺たちはオーガたちが住まう廃鉱山深部へと下った。


 少し進むと早速発見だ。

 身長3メートル、ガチムチ体型、口から犬歯がはみ出た食肉種族を連想させる兄貴たちが合計8体、大部屋の中で何かを焼きながらガウガウ言っていた。


「あ、あれ、ちょっと多いですね……。リチャードさん、ここは少し様子を見て――」


「でもそれだと温泉入る時間が減るでしょ、お刺身も食べたいし」


「緊張感がなくなるから観光のことはいったん忘れて下さい……っ」


「俺がやつらを動けなくして狙いやすいように集める。その間にピリリカさんはでかい魔法をためてためてためて、ドカーンッとやってくれ!」


「で、ですが……あっちょ、ちょっとリチャードさんっっ?!!」


 説明面倒、連携面倒。そう考えてしまうのは女々か?

 ガチムチ人喰いオーガ兄貴たちがたき火を囲んでなんかやっているところに、俺はヘビーダーツ1本を片足上げジャンピングオーバースローでぶん投げた!! せいやぁっ!!


「オゴァァッッ?!!!」


「えっえっえっ、えーーーーーっっ?!!」


 ヘビーダーツに後頭部を撃ち抜かれたオーガ兄貴は前のめりに吹っ飛び、そして麻痺効果が早速効いたのかピクピクと全身を痙攣させ始めた。


「ニンゲンッ!!」


「オオ、ゴチソウッ!!」


「生ケ捕リニシテ、皮ハ剥グ!!」


「痛メツケル!! 美味シクナル!!」


「ひぃぃっっ、言った以上はそれ全部足止めして下さいよぉっ、リチャードさんっっ?!」


 ディスプレイごしだとなんとも思わなかったオーガのセリフも、リアルで聞くと猟奇的で怖すぎ。


 ともあれダーツ1発で麻痺が取れるとわかった以上は恐るるに足らず。

 近付かれる前にヘビーダーツの残り4本をジャンピングオーバースローで投擲し、合計5体のオーガをノックダウン&麻痺させた!


≪ダーツ:29→30≫


≪ダーツ:30到達!

 特殊効果:絶対命中+30%を得た!≫


「そんな、そんなオモチャで、オーガの巨体を……っ!? あ、貴方っ、いったいなんなんですかぁっ!?」


「ヨクモ、仲間ヲ!! 肉ニナレ、ニンゲンッッ!!」


「ならばそっちは俺の実験台になれっ!!」


 オーガは鉱山に残っていたツルハシでこちらを肉塊に変えようとした。

 実際そのツルハシは血で赤黒く黒ずんでいてヤベーやつだった。


 リーチはオーガの方が長い。

 俺は急加速してオーガの懐に入り込んでツルハシ攻撃をやり過ごすと、スライムラバーカップで敵の胸を『チュポンッ』と突いた。


「オォンッッ?!」


「これがっ、トイレのアレの力だっ!! キュボッキュボッキュボッキュボッキュボッキュボォォッッ!!」


「アッアヒッ、ウヒッ、ニャ、ニャニコレェッ、ヤメ、アッ、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛……ッッ?!!」


 オーガは白目をむいて精神崩壊した。

 巨体が受け身も取らずに背中からぶっ倒れていった。

 残るオーガは2体。やつらは本能的に危険を感じ、距離を取って左右を囲んできた。


 どちらも装備はなしの素手だ。


「リチャードさんっ、危ないっっ!!」


 それが同時にショルダータックルをしかけてきた。


「ツブレチャエッ!!」


「ヒキニクゥッ!!」


 だが残念、彼らのごり押し攻撃は両者自滅で終わった。

 というのもオーガタイプはHPと攻撃力が高い反面、命中・回避・耐性値がガバガバだ。


 一方でリチャードはラスボス譲りの肉体の持ち主。具体的には回避:105の数値を持つ男だ。


「オマエ、チョコマカトッ!!」


「逃ゲルナ、オ肉、ナレ!!」


「それは無理だ。お前たちの攻撃の最終命中率はどれも0%。絶対に、お前たちの攻撃は、俺に当たらない」


 ゲームにおいて数字は絶対である。

 俺はやつらの攻撃をかわしまくり、精神崩壊中のオーガのところに引き寄せた。


「では壊れてもらおう」


「オ肉ニナレェッッ!!」


「ニンゲン、死ネ!!」


 トイレのスッポンでオーガの顔面を『キュポッ』と突いた。


「フブゥッッ?!!」


 さらに隣のやつも突いた。


「ニュポォッッ?!!」


 突けば突くほど精神的ダメージが広がる精神攻撃武器で――


「顔だっ胸だっ尻だっデリケートゾーンだっっ!!」


「ギャッッ、ヤメッ、ヤメデッッ?!!」


「イヤッ、イヤァァッッ、ヒッヒギッ、ヘ、ヘンタァイ……ッッ?!!!」


 全身を突きまくるとオーガたちは悶絶した。


「ヘ……ヘン……タ…………イ…………。グフッ……」


≪トイレのスッポン:48→49≫


 これにてオーガ3体の精神の破壊が完了した。

 ヘンタイ貴族はトイレのスッポンを腰に戻し、詠唱中のピリリカさんの隣に戻った。


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