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女子高生アイドルの恋愛事情 〜春山美咲の場合〜  作者: ゆゆこりん
本編

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第39話 性悪イケメン

 ショージとやらのうわべだけの謝罪で一層きな臭くなった雰囲気は、誠司さんの「これおいしそうだし、早く食べよう」と促す言葉で霧散した。


 テーブルの上には和洋色とりどりのご馳走が並んでいる。 ピザもあれば手毬寿司もある。 チーズやクラッカーなんかはもう少し年齢を重ねて、ワインでも飲みながらだと大人の楽しみ方になるんだろうね。



 久しぶりに会った麗奈や茜と互いの学校生活についてのことでひとしきり盛り上がった後に、茜が申し訳なさそうに口を開いた。


「美咲、ごめんね。 彼氏さん、大丈夫だった? 気を悪くしてない? 」

「うん、大丈夫だと思う。 むしろ、あたしが口出しそうになったら止められちゃったよ。 あはは」

「ホントごめん。 どうにも口が悪くって」

「ちかっぱケンカ腰やったけんね。 初対面であげなこと言う人初めて見た」

「はぁ。 サッカーやってる時はカッコいいんだけど、ちょっとケンカっぱやいんだよね。 こないだもゴール決めたあとのアピールしすぎてイエローカードもらっちゃってたし」

「茜も苦労してらっしゃるのね」

「まぁね。基本的には優しいんだけど」

「そげなこと言うけど、あれ大丈夫? 」


 目線の先では男性陣がなにやら談笑している、というわけではなさそう。 大地とさっきのやな奴が睨み合ってるように見える。 ケンカっぱやいという茜の言葉が脳裏をよぎる。

 さっきよりも不穏な雰囲気だ。 唯香と目があって、互いに頷く。


 近づいていくと大地は近くにあったグラスの中身を飲み干して、大きくため息をついた。

 唯香は誠司さんのそばへと歩いてゆき、あたしは大地に話しかけた。


「大地、どしたの? 大丈夫? 」

「ん? 別になんもねーぞ」


 何もないことはないでしょ、と思ったものの、事を荒立てることもないので、大地の手を引いてソファまで戻ってきた。 グラスに入ったニンジンのスティックを大地の口に放り込む。

 大地は何も言わずに、ポリポリと食べていた。 うさぎみたい。


 

 ゲーム機でできるカラオケなんかを引っ張り出して歌ったりしたけど、あたしは遠慮していた。 その姿を見た"アイツ"が見下すような視線を向けてきた。 これでも4Seasonzの中では一番歌がうまいって言われてるんですからね!

 でも、こういうヤツにバレるのが一番面倒だから対抗することはしなかった。


 来年からのクリスマスパーティも少し考えものだね、なんて思っていたら、誠司さんがあたしの隣に腰を下ろした。


「美咲ちゃん、大地くんなかなかいい男だね」

「そうですか? 不愛想だとは思いますけど」

「またまた。 さっきね、大地くん、美咲ちゃんの悪口を言われて怒ってたんだよ」

「ええっ、そうなんですか? ちなみに何て? 」

「地味だな、って。 あ、僕は思ってないよ」

「あはは。 大丈夫です、わざと地味にしてるとこあるんで」

「そうなの? それでね、大地くんも応酬しそうになったけど、顔を真っ赤にして我慢してたからさ。 あとで、それとなくフォローしてあげてよ」

「大地がそんなこと……。 わざわざありがとうございます」

「うん。 美咲ちゃんたちはお似合いだね」



 

 いつの間にか外は日が落ちて真っ暗になっていた。 夕食前にはお開きにしよう、という予告通り、17時を過ぎたころに解散となった。

 麗奈も茜もアイツもバスで帰るみたいだったけど、アイツを大地に近づけたくなくて歩いて帰ることにした。 歩いたって三十分はかからないだろうし。



「誠司さんから、聞いたよ」

「なんの話かな? 」

「わかってるくせに。 ごめんね、気分悪くさせちゃったよね」

「いやいや、美咲が謝ることじゃないし。 でも、美咲が怒った時の気持ちもわかったよ。 正直、もう性悪イケメンは勘弁だな」

「ぷっ、何それ。 性悪イケメンって褒めてるのか貶してるのかわかんない」


 でも、大地があたしのことで怒ってくれたという気持ちが嬉しかった。

 大地もこんな気持ちだったんだね。 そう考えたら、少しはあたしのことを気にしてくれてるのかと思ってしまう。


「じゃ、ありがとう。あたしのために怒ってくれて」

「……おう」


 小さく返事をした大地は、スマホを開いてなにやらポチポチしていた。 おうちにでも連絡してるのかな?

 駅についたら、もうそこでバイバイかな、もう少し一緒にいたいな。いい作戦は思いついていなかったけど、意を決して大地に聞いてみることにした。


「この後はどうするの? 」

「うちに帰ってメシ、と言いたいところだけど、誰もいないから食べて帰ることにすっかな」

「それなら、一緒に食べよ?」

「え、いいのか? 」

「うん。 うちもお姉ちゃんは彼氏さんとデートだし、お母さんは仕事で遅いし、一緒だと嬉しいな」


 作戦もなにもなかったけど、結果的には大地もあたしもこのあと一人だった。 それなら、一緒に過ごすのに何の支障もないじゃない。

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