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【Web版】死ぬ運命にある悪役令嬢の兄に転生したので、妹を育てて未来を変えたいと思います~世界最強はオレだけど、世界最カワは妹に違いない~  作者: 泉里侑希
第一部 Main stage

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Digression-Zex お家デート【100話記念】

100話達成記念の閑話です。

 今日も今日とて仕事を頑張ろうと気合を入れていたところ、それは唐突に告げられた。


「仕事が……ない?」


「はい、ありません」


 オレの秘書役を務めているシオンより、開口一番に言われた言葉は「本日付けの仕事がキャンセルになった」だった。


 確か、商業関連の企画書のチェックの予定だったはずだが、キャンセルとは一体全体どういうことだろうか。


 当然ながら詳細を問い質すと、シオンは流れるように答えた。


「企画担当者が締切日を勘違いしていたらしく、その影響で本日の仕事がなくなりました」


「各方面への影響は?」


「調整し、最小限に抑えております」


「それならいいが……」


 あれ、調整したのに、オレの仕事がなくなったのか?


 嫌な予感を覚えたオレは、念のために尋ねることにする。


「じゃあ、別の仕事を持ってきてくれ」


「ございません」


「……いや、『ございません』じゃないんだが」


「ございません」


 RPGのNPCの如く、同じ文言を繰り返すシオン。


 この時点で悟った。ミス云々は分からないけど、オレの仕事がないのは仕組まれたものだと。


 オレは頭を抱えたい衝動に駆られるのを耐え、再び問う。


「急に休めと言われても困るんだが」


「そういえば、本日はカロラインさまもお休みでしたね」


「おい、完全に狙ってスケジュール組んだだろう。やるにしても、もっと隠せよ!」


 とうとう我慢ならず、ツッコミを入れてしまった。シオンのあまりの隠す気のなさに、頭が痛くなる。


 そんなオレの反応を受け、シオンは呆れた風に言う。


「そも、ゼクスさまは働きすぎです。あなたさまは労働環境の改善に力を注いでおられますが、トップが率先して働いていては、誰もお休みいただけませんよ?」


「ぐぅ」


 至極真っ当な正論に、返す言葉もない。


 シオンの言う通り、上司のオレが働きづめでは部下たちも休みにくいだろう。してやられた感じはあるけど、ここは彼女の思惑に乗るのが吉か。


「分かったよ。今日は休む」


「はい。こちらは私どもに任せて、ゆっくりお休みになってください」


 満面の笑みを浮かべるシオンに対し、オレは静かに溜息を吐いた。










○●○●○●○●










 シオンの助言に従い、本日は手の空いているカロンとすごすことにした。それを彼女へ伝えたところ、


「一日、お兄さまを独り占めできるのですね!」


 と大変喜んでくれた。兄冥利尽きる反応に、とても感激である。


「何をしようか?」


 普段ならお茶会を開くけど、今は午前中。さすがに間が持たない気がする。


 オレに希望はなかったため、カロンに問うた。


 すると、彼女は笑顔で返す。


「お家デートしましょう」


「お家デート?」


 予想していなかった回答だったので、思わずオウム返しにしてしまった。


 オレとしては、一緒に街へ出掛ける(普通のデート)くらいを想定していたんだが。


「そんなのでいいのか? 今日はフリーだから、外に出かけるのもアリだぞ」


 理解した上での答えだとは思うけど、念のために問い直した。


 とはいえ、やはり要らぬ心配だったらしい。カロンは笑顔のまま言う。


「お兄さまとのお買い物なども捨てがたいですが、本日は二人っきりでゆっくり過ごしたい気分なのです。……ダメでしょうか?」


「よし、お家デートをしよう!」


 上目遣いの『ダメでしょうか?』を食らって平然としていられる兄はいない。断言する。








 少しの準備を挟み、オレたちはカロンの私室を訪れていた。


 準備といっても、たいそうなモノは用意していない。大きめのソファを一つ、お茶、摘まめる程度の食べ物くらいである。今日はお茶を飲みながら、のんびりするんだ。


「しかし、ソファ一つで良かったのか?」


 割とゆとりのあるソファだが、二人で座るには些か手狭のように思える。まぁ、カロンがあえて指定した代物だから、何か考えがあるんだろうけども。


 オレが首を傾いでいると、カロンはブンブンと首を縦に振った。


「はい、これで良いのです。いえ、これが良いのです!」


 何やら興奮気味だけど、いったい彼女はどんな思惑を抱いているのやら。誰かに変な入れ知恵をされていないことを願いたい。


「さあさあ、お兄さま。お先にお座りください」


「あ、嗚呼」


 食い気味に促され、やや気後れしつつも素直に従う。柔らかいソファの右端に腰を下ろした。


 すると、カロンは「ちがいます!」と(かぶり)を横に振る。


「そのような端ではなく、中央にドカンとお座りになってください!」


「いや、それだとカロンが座れなく――」


「お願いします、お兄さま」


「――分かった」


 妹のお願いを断れる兄がいるだろうか、いやいない。


 オレはカロンの願いを聞き入れ、ソファの中央を陣取った。前述したようにゆとり(・・・)は大きくないため、現状ではカロンの座るスペースは存在しない。


 何をしたいんだろうか?


 彼女の思考が読めず困惑していると、ついにカロンは行動を起こした。


 具体的に言うと、オレの膝の上に座ったのである。しかも、こちらに寄りかかってくるオマケつき。


「えっ、カロン!?」


 驚愕の声が漏れる。貴族令嬢として教育を受けているカロンが、ここまで大胆なマネをするとは思わなかったんだ。


 まだまだ子どもなので、オレたち二人の身長差はあまりない。必然、カロンの後頭部――ひいては顔がすぐ傍にあった。やや癖のある金髪と宝石の如き紅い瞳、非常に整った(かんばせ)が目と鼻の先に存在する。


 いくら相手が妹とはいえ、この距離感はさすがに照れる。頬に熱が集まるのを感じた。見れば、実行した張本人であるカロンも顔が真っ赤である。恥ずかしがるのなら止めれば良いのに。


 ここまで実行するほど好かれていることに喜ぶべきか、後先考えていなかった妹の猪突猛進さに嘆くべきか。まぁ、自他共に認めるシスコンの答えなんて決まり切っていた。


 小さく頬笑みながら、目前にある金糸を()く。


「お兄さま?」


 やや驚いた様子でこちらに振り向くカロン。


 そんな彼女の耳元に口を寄せ、オレは優しく囁いた。


「この体勢だとカップや食べ物が手に取れないんだ。カロンに任せていいかな?」


「は、はははははい! 何でも申しつけてください!!」


 おお、効果てきめんだ。頭から湯気でも出るのではないかと思えるくらい、カロンは真っ赤っかになっている。


 最初こそ大胆な行動にビックリさせられたけど、まだまだ初々しい彼女でいてくれたみたいだ。可愛らしい反応に、思わず笑みがこぼれる。


 とはいえ、テンパりながらも、カロンが膝から降りることはなかった。その後の会話で訊き出してみたところ、以前より願望はあったらしい。


 言ってくれれば……と考えなくもないが、いくらブラコンでも年頃の女の子。言いだしづらい部分もあるんだろう。今回は、シオンを筆頭とした部下たちが後押ししたようだけども。


 結局、この日のほとんどをカロンと密着して過ごした。お茶をしながらの雑談や昔は何度もやった読み聞かせなど、久々の兄妹水入らずを堪能するのだった。


 たまには、こういう休日もアリかもしれないな。

 

本日13:00に本編続きを投稿します。

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― 新着の感想 ―
カロンかわえええ
ゼクスくん?ワーカーホリックすぎん?
みょーにエロく、微笑ましく、暖かく、気恥ずかしく、ニヨニヨニヨニヨー。 ご馳走様!
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