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廃棄世界物語  作者: 猫弾正
ハンター日誌 すりんぐ編 A面
39/117

13 大発生

 古参ハンターのギイ爺さんは、ギルド会館近くの坂道に築かれた階段に腰かけて、のんびりとキセルを吸っていた。

 市民が多く住まう町の中央地区だが、意外にも急勾配の坂道や階段が多くて往来に不便な地形であった。

 尤も起伏のある地形だったからこそ、大崩壊にも比較的にインフラや建築物が生き残り、今も良好な状態に保たれているのかも知れない。

 つい先日、ツインテイルスコルピオを罠で仕留めることに成功した為、爺さんの懐はそれなりに暖かかった。

 暇な時には、こうして見通しのよい場所に陣取って、ひがな一日、町の景色と道行く人々の顔を眺めるのが爺さんの趣味とも云えない趣味の一つだった。

 

 半世紀も一つの町に住み続けていれば、職業や立場を越えて、顔馴染みもそれなりに増えてくる。

 路地裏の露店の青年は、田舎から家族を呼ぶ為に毎日、朝の四時から働いている。

 対面にある酒場も、親父の先代の店主が餓鬼だった頃から知っている。

 酒場の前には八百屋をやっていた。

 遠来から仕入れた乾燥野菜を売ってたが、周囲の農場から安価な野菜が安定して供給されるようになって商売が立ち行かなくなり、起死回生の目に賭けて廃墟都市へと赴いた。

 半ば自暴自棄で赴いた遺構の酒会社跡地で蒸留装置を見つけ、帰ってきたものの息絶えた祖父の遺志を継いだ息子が何とか持ち帰って、酒場を開いたんだ。

 その時の冒険には、若き日のギイ爺さんも付き合った。

 目を閉じれば、今でも昨日のことのように思い返すことが出来る、若かりし爺さんの生涯でも五本の指に入る冒険だった。

 

 その酒場の先代も先日に亡くなった。

 青春は過ぎ去り、何時しか、見知った顔も減ってきている。

 俺もいずれは、いなくなる。そう遠くないうち。あと五年か。十年か。

 追憶を馳せている爺さんの視線の先で、昔の住人とどこか似たような顔立ちの子供や孫が今日を生きていた。

 

 眺めていた町の住民一人一人の顔や名前を思い返した後、キセル片手にしながら、爺さんは道行くハンターたちに視線を転じてみた。

 町の人間であれば、消息は知れる。行商人や放浪者であれば、顔を見せなくなっても定住したのだろうと思える時もある。

 だが、ハンターたち。狩りに出たら其れきり。地下水路に潜って帰ってこない。

 何時の間にか、姿を見なくなった連中を思うたび、爺さんは因果な仕事だと思う。

 頓に此処一週間ほど、怪我をしたり、戻ってこないハンターが目立つように思えた。

 参るぜ。しかし、若い連中。得てして息のいい奴ほどに死に急ぐことが多いからなあ。

 

 道行くハンターたちを眺めて、埒もなく思い耽っている爺さんの視線の先、最近、何かと目立つ新参ハンターの二人組がやってくるのが見えた。

 ……アルテミスとフェリクス。

 町でも凄腕として知られるハンターのセシリアと共に、奴隷商人とやりあった。

 

 ギイ爺さんは自身が若く、尤も力に満ちていた頃でも、奴隷商人と戦おうなどと考えたことはない。

 いや。実際のところ、想像したことはある。その上でとても無理だと諦めていた。

 自分に出来ないことを成し遂げる者に対して、無関心でいられない人間が抱く感情はおおよそ二種に分けられる。嫉妬するか、敬意を払うか。

 あんな風に鮮やかに戦うことなんて、俺には逆立ちしても出来なかった。

 所詮は、ものが違うんだろうなあ。

 当初は嫌っていた若き二人組のハンターに対して、爺さんは隔意や偏見を捨てている。

 ハンター歴半世紀の古参といい、半年の新参と比べようとも、稼ぎでは既に抜かれていても不思議ではない。

 他者から見れば、理不尽とも思える腕や才能を持っているハンターも、ほんの一握りだが世の中にはいた。

 

 やがて目の前を通りかかった二人に対して、ギイ爺さんは挨拶を兼ねてベレー帽を取って見せる。

 赤毛のフェリクスの方が気づいたらしく、手を振って応えてきたが、もう一人のアルテミスが、どうにも様子が変だと爺さんは気づいた。

 ふらふらと覚束ない足取りで歩いている。

 

 奇妙に思った爺さんは、間近でギーネを目にしてぎょっと目を瞠った。

 ギーネ・アルテミスの目から完全に光が消えて、死んだ魚の瞳になっていた。

「……へーい、ヤブーキ。ボクシングは楽しいねー」

 プルプルと震えながら、ゴミ箱の上で欠伸していた野良猫に向かって、しゅっしゅっとスローな拳を繰り出しているギーネを目にして、爺さんは目を剥いた。

「どうしたんだ?こいつ?」

「……ちょっとお説教を」

 アーネイが呟くと、ギーネが呻き声を洩らした。

「アーネイ語では、六時間がちょっとなのですん?

 ふふ、ですが、これも愛ゆえですね。アーネイの愛を感じます」

 懲りた様子を一向に見せないギーネ。

 額を押さえて溜息を洩らしているアーネイと、ギーネの普段の行いや言動を鑑みて、爺さんにも両者の関係をおおよそ察っすることが出来た。

「……よっぽど言いたいことが溜まっていたんだろうなあ」

 どこか気の毒そうな同情の視線を向けられたアーネイの目の前で、復活したギーネが猫に話しかけながら立ち上がった。

「どうせ溜めるなら、性欲が溜まっていれば良かったのにと思いますにゃあ。

 そうしたら、わたしが解消してあげたのに。うぇひひ」

 手をわきわき動かしつつ、口から願望垂れ流している駄目貴族を前にアーネイの胃がきりきりと悲鳴を上げる。

「……本当に反省というものを知らない御方」

 他人が許せる線ギリギリを見極めて攻めてくるので、本当に性質が悪い。

「……どうしてこんなんなっちゃったんだろう。

 帝國にいた頃は、まだ少しはまともだったのに」

 在りし日の主君を思い返したアーネイは、空の彼方を遠い目で眺めながら涙した。

 

 

 ハンターギルドの会館に足を踏み入れた瞬間、ギーネは、微かな違和感を覚えた。

 微かに鼓動が早まっていた。思わず立ち止まって、隣のアーネイと視線を合わせる。

「どうなされましたか?お嬢さま」

 不思議そうに訊ねてくるアーネイ。すると勘違いだろうか。

「なにかが……妙です」

 思考にノイズが走ったかのような感覚には覚えがある。

 ギーネの脳裏では、注意しろと本能が警告の音を鳴り響いかせている。

 しかし『注意しろ』である。

『警戒しろ』とも『今すぐ、逃げ出せ』とも本能は云っていない。

 なにかしらの危険が迫ってきている訳ではない。

 ギーネは落ち着きを保ちながらも、しかし、自身の本能が何に対して注意しろと囁いているのかまでは、表層の自我には理解できないでいる。

 

 何かが奇妙だった。

 いつもとは何かが違う。なにかがあるのだ。しかし、分からない。

 なんだろう?とギーネは僅かに首を傾げた。

 呆けたような表情の下で、頭脳は状況を分析している。

 ギーネ・アルテミスは己の警戒本能に高い信頼を置いている。

 勘違いではない。心臓が高鳴り、違和感を覚えている。

 気づかないとすれば、自身の注意力が足りずに見落としているだけである。

 

 ギーネは改めて、会館の中を観察してみる。

 監視カメラでも増えているか?NO

 こちらを観察している人間がいる?NO

 建物が増築されて、避難の際に手間取りそうな間取りに?NO

 人の流れや動きに襲撃の気配?NO

 爆弾らしき物体が配置?NO

 何かしらの、荒事の予兆?NO

 

 しかし、何かが奇妙だった。何時もと何かが違う。

 小さくと息を洩らすと、ギーネは難しい表情をしたまま歩き出した。

 ギルド内で、常と何か違うところはないだろうか?

 自分が何に対して違和感を覚えているのか。

 分析すべく、四方に視線を走らせてみる。

 常よりも微かだが人数が多い。しかし、誤差の範疇に含まれる範囲だろう。

 だが、ひそひそと囁くように話し合っている者たちが半ばを占めている。

 ……表情は?暗く険しい顔立ちが多い。苛立っているようにも見える。

 大勢の人間が集まって、恐らくは共通の話題にしている。

 脅威に対してはすぐに認識し、獰猛に抗うティアマット人のメンタリティからするに、大勢の人間に脅威、或いは威圧感を与えるだけの災害が発生したか。

 もしくは、その明白な予兆が現れつつある段階だろうか?

 

 何時しか、傍らに立っているアーネイも探るような視線を室内へと投げかけている。

「……なにか在ったのでしょうか?奇妙に粟立った空気が張り詰めていますね」

 肌を刺すような直感によって違和感に気づいたようだ。

 ギーネとは異なる思考経路と分析を経た末に、同様の結論に至ったアーネイは、空気の匂いを嗅ぐようにすんすんと鼻を鳴らしてから、顔を顰めた。

「気に入りませんね。緊張と恐怖の匂いが漂っています。

 どいつもこいつも何をそんなに恐れているのでしょうか……」

 人間の肌から放出される僅かなフェロモンでも嗅ぎ取っているのか。

 或いは、もっと別種の第六感を兼ね備えているのか。

 まるで猟犬のように、アーネイは他者の恐怖の匂いを嗅ぎ取れっている。

 

 不審そうに見回しつつ、二人は歩を進めて受付へと向った。

 途中、すれ違った数人のハンターが大きく目を瞠った。

 二人の持っている鞄に溢れんばかりの人喰いアメーバの細胞を見て、周囲で囁きが飛び交った。

「……多いな」

「十。いや、十五匹は……」

「大した装備でもなさそうなのにな」

「……あの半分も獲れたらなあ。美味い酒が飲めるのに」

 

 アメーバの細胞にびっくりしている程度だから、それほど腕のいいハンターではないのだろう。

 それでも注目を帯びてることに気づいたギーネは、誇らしげに胸を張った。

「ふふふ。さすが一流ハンターであるギーネさんは格が違った」

 顔見知りのギルド職員の受付の列に並びながら、自画自賛するギーネ・アルテミス。

 尊敬の眼差しを浴びるのは、何時でも何処でも気持ちがいい。

 天にも昇る心地よさですぞ。ヘブン状態!

「で、この後の予定ですが。もう一度、狩りに行きますか?」とアーネイ。

 鉄球を入れたポーチにとんとんと指で触れたギーネは、少し考えてから首を横に振った。

「んー。止めておきます」

 アーネイは意外そうに首を傾げた。

「どれだけアメーバがいるかも分かりません。狩れるだけ狩っておきませんか?」

「スリングの弾が心もとない。回収しているけど、それでは足りません」

「では、一先ず物資の補充を?」

「それに休息も大事です。怪物の彷徨う曠野を歩くだけで、私たちは知らず知らずのうちに神経を削られているのだ」

 集中力や注意力の欠如は、思わぬ怪我を招く可能性もあった。

 無理して維持しようとしても続かない。限界は突然にやってくる。

 意外と慎重なギーネにアーネイも肯いた。

「……何よりお説教で精神力を消耗しすぎました」

 哀しげに家臣を見つめたギーネだが、アーネイは、ふんと鼻を鳴らしながら冷ややかに笑っている。

「むむむ、主君を蔑ろにしおって……

 ……それにしても、子供の頃にはあんなに優しかったのに。

 一体何がアーネイを変えてしまったのだ?」

 擦れてしまった家臣に困惑して首を傾げつつ、変わり果てたアーネイを救えるのは、きっとギーネさんの愛だけなのだ。

 そう思い直し、改めて腹心の乳姉妹の頑なな心を女神の如き慈愛と誠実さで救ってみせようと心に誓うギーネ・アルテミスであった。

「……そして、共に困難を乗り越えた二人は……くふふ。

 結婚式はオーディン神社にしますか?それともアマテラス神殿?」

「また碌でもない妄想に耽ってやがりますね?私たちの順番が来ましたよ。

 そろそろ現実に戻ってきて、その鞄を渡してください」

 

 

「アメーバの中核17個で17クレジットになります」

 愛想よい笑みを浮かべた買取り役のギルド職員シャーリーが、緑色の紙幣17枚を封筒に入れて差し出してきた。

「それと、タグを此方にお貸しください」

 ギーネたちが素直にタグを手渡すと、シャーリーは変な機械で挟んでガシャンとプレスした。

「うわあ!なにをするのだ!」

「おめでとうございます。

 アルテミスさんとフェリクスさんに、ポイントが付きましたよ。

 此れで二人とも星付きです」

 それが癖なのか。眼鏡のフレームに人差し指で触れながらのシャーリーの言葉に、ギーネは怪訝そうに首を傾げた。

 帰ってきた二人のタグには、星のマークが付けられている。

「……星付き?なんです、それ?」

「仕事が出来る。というギルドの評価の指標のようなものです」

 ギーネたちと親しくしているシャーリーの口ぶりは、祝福しているように弾んでいた。

「お二人とも、今はI級の一つ星です。

 三つ溜まったら、四つ目でH級に昇進ですよ。頑張ってくださいね」

「ふうん」

 どうでも良さそうに肯いてから、ギーネはギルドのロビーを見回した。

 何時もよりもずっと人手が多いのが見て取れるので、気になっていた事情を訊ねてみる。

「心なしか、今日は人が多いような気がしますぞ」

「それに何となく空気もざわついているような。何かありましたか?」

 

 周囲を見回して、誰も自分たちに注目していないことをシャーリーは確かめた。

 少し躊躇ったシャーリーだが、ギーネたちとは何かと懇意にしている仲で、以前に食事やお酒を振舞われたこともあった。

「まあ、いいか……今のところは、此処だけの話にしておいてくださいよ?

 本当はまだ機密で、あまり下位ハンターや一般の人たちに話しちゃ拙いんですから」

 ギルド職員が違反にならない範囲で親しいハンターにちょっと融通を聞かせるのはよくある話である。

「うい、分かってる、分かってる」とギーネは肯いた。

 ちょっと安請け合いし過ぎじゃないかしら?

 やや疑わしげに見つめたシャーリーだが、指先でギーネたちを手招きすると、顔を近づけてから声を潜めて事情を説明し始める。

 

「此処、一、二週間ほどですね。街道筋で、旅人や流れ者なんかが人喰いアメーバに襲われたとの報告が徐々に増えてきていたんですよ」

『人喰いアメーバ』という単語に瞳を細めるギーネとアーネイ。微かに視線を交わした。

「で、つい先刻、何処かの隊商が町にやってきたんですが、途中で人喰いアメーバに襲われたとかで、怪我人がかなり大勢、診療所に運び込まれて……

 調べてみたら、予定の日時を過ぎてもやってこない行商人や小規模な隊商もあって……」

「ほうほう」相槌を打ちつつ、ギーネたちは先を促してみる。

「襲ってきた人喰いアメーバは四、五十匹もいたそうです。

 もしかしたら、『大発生』ではないかと。騒ぎ出している人もいて、

 もう、知る人は知っているんですが、パニックを抑える為、職員には取りあえず緘口令がしかれました」

 

「先刻も聞きつけた町の人たちが受け付けに押し寄せてきて……迷惑なことです」

「大発生?」

 いかにもなキーワードをギーネは繰り返した。

「ある特定の種の怪物や変異生物が大繁殖することです」

「それで少し騒がしいのですか」

 ギルド会館を見回して、アーネイが呟いている。

「ん、人喰いアメーバでも、数百とか増えていたら、おおごとです。

 下手したら街道が一つ二つ封鎖されてしまいますもの」

『すると物流に影響が出る』訛りの強い東部帝国語で呟いたギーネにアーネイも肯いた。

 物価が値上がりするかも知れない。今のうちに必需品を買いだめしておこうかしらん。

 考えつつ、ギーネが自信満々で大言壮語した。

「まあ、ギーネさんにとっては人喰いアメーバなど幾ら来ようが物の数ではありませんがね」

「……また大口叩いて」

 ため息洩らしているアーネイの前で、キリッとした顔つきで大言壮語する。

「人喰いアメーバなど何十倒したかも知れないよ」

「其れだけ断言できるハンターだったら、人生楽しいでしょうね。

 いや、本当。羨ましいです」

 ため息を洩らしたシャーリーだが、ギルド職員といっても現地採用枠の一般職員は、安月給もいいところである。

 さらに地方のハンター支部では、財政状況の悪化から倒産寸前の企業や崩壊寸前の国家のように給与の支払いが遅れたり、減らされたりするのが此処数十年、常態化している。

 質素に暮らしていても食うに困るような安月給では、忠誠心は維持できない。

 職業倫理規定は一応、定められているものの、高位ハンターや商会に買収されて機密情報を洩らしてしまい、処罰されるギルド職員もまた後を絶たない。

 それでも一応、職務に忠実にシャーリーは訊ねてみた。

「で、なにか人喰いアメーバに関して異変を察知したとかは在りませんか?

 何かおかしな場所や行動を見かけたとか?」

 此処最近のギーネたちは、人喰いアメーバを狩りまくっている。

 そこら辺の期待も込めて訊ねかけるが、あっさりと首を横に振った。

「んー、最近、増えているとは感じていましたが、今のところはそれだけですぞ」

 

「そうですか」

 落胆したシャーリーだが、兎に角、気を取り直してから微笑んで見せた。

「でも、まだ疑いの段階ですし、人喰いアメーバで『まだ』よかったですよ。

 そこら辺の怪物なら兎も角、お化け鼠や巨大蟻なんかが大発生すると数も脅威も洒落になりません」

「おお、恐い恐い」対処できる自信があるので、ギーネは自信満々の態度で嘯いている。

 怪物が何十匹湧いたとしても、逃げるだけならさして難しくない。

 お化け鼠や巨大蟻の足の早さについて、体験として知った上での判断であった。

「特に巨大蟻なんか、彼方此方のコロニーから合流して数千匹にも達することがあります」

「おお、こわいこわ……数千?」

 余裕をかましていたギーネが、シャーリーの言葉に顔を引き攣らせて聞き返した。

「かなり大きな町でも一晩で滅びてしまうなんてこともザラですよ。

 万とか、それ以上に数が増えた場合、さらに危険度が跳ね上がります」

「……万?あんなでかい蟻が?何を喰って数を維持してるの?生態系が支えられるの?」

「蟻の生態を研究している学者もいるらしいけど、しょっちゅう食べられちゃうんで研究は中々進まないらしいですよ」

「なにそれ、こわい」

「ミュータントの大軍団と睨み合っていた人類の軍隊が、巨大蟻の大群に襲われて両方とも骨も残らなかったとかいう事例も在りますから」

「へえ」

 シャーリーの説明を聞いたアーネイは、何処か楽しげに瞳を細めて獰猛に笑っていた。

 アーネイ、こやつ。ティアマットに来て良かったとか思ってるんじゃないでしょうね?

 渋い顔になったギーネだが、蟻に関する悪い情報はまだまだあるようだった。

「種類によっては、他にも人間の脳味噌に寄生したり、地下から襲い掛かってきたり……」

 普段の生活圏のすぐ傍に手に負えない怪物たちが蠢いていると知って、喜ぶ人は少ないだろう。

 どこか楽しげな家臣を他所に、ギーネ・アルテミスの顔色が段々と悪くなってきている。

「マジ?」

「マジですって。映像記録もきちんと残っているんです。

 研修で散々、見せられましたから」

 凄く嫌そうな顔で吐き捨てているシャーリーの横でギーネがちょっと震えていた。

「……おおう。リ、リアルクイーン」

 引き攣った表情で訳の分からないことを呟いている亡命貴族の傍らで、アーネイが楽しげに話しかけてきた。

「良かったですね。お嬢さま。英雄に憧れていたんでしょう?腕の見せ所ですよ?

 一流ハンターの格の違いってやつを見せてくださいよ」

「無理!死んじゃう!」

「大丈夫。お嬢さまなら出来ますって。思う存分、スターシップなトルーパーズや山手線の七英雄みたいな活躍をしてくださいね」


レビューを頂きました。


作者は楽しんでいますが、

他人が読んで面白いのか、これ?と不安を抱く時もあり、

改めて、僕は間違ってない。自重なんか必要ないんだ。と確信できました。


扶桑狐さま、ありがとうございました。

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