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38 第二王子との恋

「質問を受けて差し上げろ」


 淡々とした口調のオルクス公爵に執事長は頷く。この一言でパレシャの言葉はこの席においては許されることになった。


「ユノラド男爵令嬢様。ご発言をどうぞ」


「なんでメイロッテとルナセイラが出会えたのよ!」

「パレシャ! 止めるんだ!」


 父親ユノラド男爵がパレシャの口を手で塞ぐ。


「男爵。問題ない。この席では敬称や呼び名は気にしないことにしている」


 ルナセイラ第二王子にそう言われて父親が手を下ろしたのでパレシャが父親を一睨みする。


『不敬罪になるかもしれないと心配なさったお父様が正しい判断ですのにそれも理解なさらないのね。

それにしてもズバニールが静かだわ』


 アリサがそちらを見るとズバニールは真っ青な顔で母親オルクス公爵夫人が膝の上に手を当てていた。


『お母様はズバニールを制止させているのか励ましているのかはわからないですけど、ズバニールは少しはパレシャさんの酷さを理解しはじめたみたいですわね』


「僕とメイロッテは学園で顔見知りであった。そしてメイロッテはアリサが第一王子と茶会をするために付き添いをしてきたんだ。そこで私も同席することがあって話をするようになった。アリサが第一王子の婚約者候補だったことは君も知っていると情報が入っている」


「それって私が行くはずだったやつじゃん!」


「なぜ君が付き添いとなるのだね?」


「だってそれって親友が行くやつでしょう? だからアリサにいつって聞きに行ったのに。私が知らないうちに勝手に行っていたなんて信じられない!」


「勝手にって……」


 ケネシスがギリリと奥歯を鳴らしたのでアリサはケネシスの顔を覗き込んで首を振る。ケネシスが一つ嘆息してうんうんと首肯したのを確認したアリサはパレシャに向き合う。


「全て否定したいですわ。まずユノラド男爵令嬢様とわたくしは親友どころか友達ですらありません。

貴女を同伴させることはないとはっきり申し上げたはずです」


「そんなの酷いよ! アリサは私とルナセイラが恋することに反対なの?」


「「「は?」」」

「「「え?」」」

「「な?」」

「ひゃ……」


 誰もが驚き、父親が卒倒しかけてもう一つのソファーに運ばれて行った。


 最初に我に返ったルナセイラがメイロッテの肩をそっと掴んで自分の方へ向ける。


「ないないないない。全くない! 私があの非常識女と顔合わせしたのは昨日のパーティーが初めてだ。あの状況で恋なんてないよ。

私の心はメイロッテしか入っていないから!」


 必死なルナセイラにメイロッテは思わず笑った。


「ありがとうございます。わたくしはルナセイラ様を信じておりますから大丈夫ですよ」


「それほど必死だとかえってあやしく見えてしまいますわよ、お義兄様(おにいさま)


 メイロッテの背中からひょっこりと顔を出したアリサがからかうように言うとルナセイラが顔を青くする。


「アリサ。人が悪いですよ。

ルナ様。大丈夫です」


 普段二人のときにしか使わない愛称を言われて涙ぐむルナセイラが頷いた。


「いちゃいちゃしてんじゃないわよ! メイロッテにチャンスがあったなら私でもいいでしょう?

わたしならルナセイラのコンプレックスもわかってあげれるんだから!」


 ルナセイラが眼を細めて横を向いた。体はメイロッテに向けたままで肩に乗せた手も片方はそのままだ。


「コンプレックスとは何のことだ?」


 王家の秘密かもしれないと思ったルナセイラが急に真面目な王族の顔になった。


「ルナセイラはなんでもできちゃうから逆に居場所がなくなってるんでしょう。だから音楽に自由を求めた。音楽を続けていいんだよ。この世界ではまだ王族が音楽家になるって変人扱いかもしれないけどルナセイラは天才だから大丈夫だよ」


 パレシャは自分を聖女に見せるかのように手を前に組んで潤んだ瞳を向ける。アリサは驚きでピクリとし、ルナセイラは仰け反った。


『変人って言ってしまっておりますがよろしいのかしら?』


「は? 音楽は嗜むがそれは貴族子女の半数はやっていることだろう。居場所とはどういうことだ? 私は次期宰相になるべく宰相補佐官長をしているが?」


「なんで? それってズバニールの仕事じゃん」


「ぶっ!」


「お父様……」


「すまん……」


 真顔で驚いてお茶を吹き出したオルクス公爵にアリサがジト目を向けた。


「お嬢さん。なぜズバニールが次期宰相だと思ったのだね?」


「だってオルクス公爵家って代々宰相なんでしょう? 優秀なズバニールが次をやるに決まっているじゃん!」


 ばったーんと大きな音がした。そこにはズバニールが椅子からよろけて白目を向いて倒れていた。

 

「坊ちゃま!!!」


 騒然となりいつの間にかオルクス公爵家の護衛がパレシャの両脇につけていてパレシャが動けないように監視しており、執事たちによって自室へ運ばれていったズバニールにオルクス公爵夫人が付き添って行った。オルクス公爵夫人の気遣いでユノラド男爵夫人も充てがわれた部屋へと下がっていった。

 パレシャは落ち着きなくキョロキョロしていたが両脇の強靭な男たちが何のためにそこに存在しているのかを理解しているようで立ち上がったりはしなかった。

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