61.ティータイムの後
ジジッ……という音と共に蝋燭の炎が消え、周囲は暗闇になる。押し寄せるような闇に息苦しさを感じて、ふらふらと食堂から出て歩いた。
クレイロール伯の言ったことが頭の中をグルグルと回り、胃がキリキリと痛み出す。
右手で胃の辺りを押さえ、左手を壁に付きながらふらつく足を一歩二歩と進めて歩いた。
精神に作用する魔法を解く魔法……図書室の本の中にあった気がする。もう時間が無いから今からでも調べに行かなきゃ……。
「図書室の鍵……職員室……」
上手く真っ直ぐに歩けない足を職員室に向ける。ああ、どうしてこんなに足が上手く動かないのかしら。
なんとか辿り着いた職員室は暗く、人の気配が無かった。そうよ、こんな夜中に、人が居るはず無いのに、自分の馬鹿さ加減に苦く笑って顔を上げ、職員室の壁に背中を預けて一息つく。
崩れ落ちそうになる膝に手を置き、座り込まないように体を支える。
「は……っ。馬鹿みたいね、あと二日しかないのに」
自嘲の声と共に首筋を伝った冷たい汗を、手の甲で力任せに拭うと、膝の支えが取れて無様に尻餅をついてしまった。
「――い……ったぁ」
立ち上がらなくてはと思うのに、体が重くて持ち上がらない。
それに打ち付けたお尻が痛くて勝手に涙が出て来る。後から、後から……意思に反して、止まることのない涙に辟易しながら、顔を上げた。
見上げた廊下の窓から、雲の無い夜空に月が綺麗に見えた。
月光が私の上に降り注いでいる事に、気付いた。
温かさなどないその光だけれど、不思議と心が安らかになる。
「祝福であればいいのだけれど……ね」
スカートの下にズボンを履いているのをいいことに、はしたないと思いつつ足を伸ばし、背中を壁に凭れさせて体の力を抜き、ほんの少し休むつもりで目を瞑った。




