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蒼き女神の救世主~世界を滅ぼすラスボスから、世界を救う英雄へ~  作者: 陽山純樹
第二章

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領地への帰還

 俺はセリスと話し合いをした十日後に、ルディン領へ戻るべく帝都を出発した。帝都の人間にとっては俺の存在などいないも同然だし、エイテルの監視も俺にはまったく差し向けられていなかったので、問題はなかった。

 その一事から、俺やジャノの力については一切知られていないということはほぼ確定であった。よって俺は組織からの妨害を受けることなく、帝都を出て旅を続けることができた。


 俺は馬車に揺られてルディン領へと戻る。その間も自分にできる修行は続け、屋敷を出る前よりも強くなったという実感はあった。

 しかし、組織との最終決戦を行うのであれば、まだまだ足りない……屋敷へ戻ると、俺は臣下を呼ぶ。


「今回の旅で、帝都から要望が入った。しばらくの間はその仕事に従事するため、屋敷を離れることが多くなると思う」


 臣下はその内容を聞きたがったが、その詳細については申し訳ないが語れない、と応じつつ手紙を渡す。

 それは、皇帝から直々の指令書。それを確認した臣下は「わかりました」と応じ、当面の自由を確保することに成功した。


 まあ俺はまだ執政に携われる立場ではないので、領内のことについては臣下達に任せていて問題はないんだが……屋敷を常に離れていると怪しまれる危険性がある。

 領民に迷惑を掛けるわけにもいかないため、ひとまず俺の活動は知られないようにする……という結論に至り、今回のような処置となった。


 少なくとも俺を観察するような存在はないが……もし山岳地帯に魔物が現れたら、すぐさま報告する手はずになっている。監視されるよりここを警戒するべきで、魔物の動向を観察するのが俺の役目と言っても良かった。


『さすがに組織の手の者がここまで来る可能性は低いだろうな』


 屋敷へ戻った翌日、俺は早速外に出て修行を開始しようという段階で、ジャノが言った。


『帝都で停戦協定が結ばれているわけだが、何かあれば戦争という形なら、帝都近くに戦力を終結させるだろう。それに、付近の拠点は潰しているようだからな』


 ――帝都から出発する前に、敵拠点についても確認はした。エイテルの情報が正しい場合、ルディン領やリーガスト王国内に拠点はもう存在していない。

 まあリーガスト王国ではミーシャが動いているし、仮に拠点が残っていても多くの人間が捕まっていることからまともに拠点として機能することはないだろう……よって、組織の人間がルディン領周辺に来る可能性は低い。密かに修行を行えば、少なくとも俺の力が露見することはない。


『決戦までエルクは自由にできるな』

「ああ、ただここからかなり大変だ。決戦で俺が活躍できなければ、帝国が敗北する可能性だってある……ジャノ、ここからどうやって強くなる?」

『まずは着実に歩を進めていく。これまでやっていた修行内容を継続し、基礎的な能力を向上。しかしそれだけでは、エルクもわかっているはずだが、決戦に勝つことは難しい』

「そうだな」

『よって、平行して新たな修行を行う……が、我としても色々と探りながらの作業になる。失敗する可能性だって存在する』

「つまり、賭けか」

『賭けに成功しなければ、決戦で獅子奮迅の活躍など夢のまた夢だろう』


 無駄になるというリスクを背負ってでも、色々とやらなければならない……それは既存の方法ではとても目標達成ができないことを意味している。


『かなりの負担にもなるはずだ』

「そこは心配しなくていい。覚悟はできている」

『わかった。では早速、始めるとしよう』


 ジャノの指導の下、俺はルディン領で修行を再開する――数ヶ月という時間ができたが、間に合うのかどうか現時点ではまったくわからない。

 おそらく無理な修行によって時間を無駄に過ごすなんて可能性も十分ある。そうした不安を抱えながらも、勝利のために修行をしていくしか、現状では方法がない。


 もし、今よりも力を得ることができれば大きく状況が進展するとは思うが……。


「ジャノ、以前潰した拠点を再度訪れて、力が手に入る可能性とか、ないかな?」

『我も考えたが、正直望みは薄いな。少し修行に余裕ができたら、時間を見つけて向かってみるのも良いかもしれないが……』

「そうか。他に力を得る手段としては……ミーシャの能力か」

『王女の力を使うことは前提だろう。相当忙しくなるだろうが、まあ王女なら帝国皇族と交渉をして、色々報酬を約束しつつ仕事をするだろう』

「……あんまり頼ると後が怖そうだな」


 だがまあ、頼れるものには頼った方がいいのは事実……おそらくミーシャはルディン領へ顔を出すだろう。そこで色々と話をしよう。

 あるいは、リーガスト王国内で組織の人員を捕まえたことで、何か力を得るヒントが……そんな淡い期待を抱きつつ、俺はジャノの指導を受け剣を振ることとなった。


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