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蒼き女神の救世主~世界を滅ぼすラスボスから、世界を救う英雄へ~  作者: 陽山純樹
第二章

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薄氷の有利

 組織側の陣地に入った騎士達は、その場に残っていた魔物や組織構成員へと攻撃を仕掛け始めた。まずは組織本陣の手前を制圧し、優位を確保する狙いのようだ。


 陣地内にいる魔物から掃討を始め、着実に組織の戦力を減らしていく……もし組織が動くとしたら、おそらくこのタイミングだ。組織の本陣にいるエイテルなどが攻撃を仕掛けてくる……魔物などを駆逐したらさらに戦力が減ってしまう。組織幹部達の能力が高くとも、ここまでは帝国が圧倒しているような状況。もし戦うとしたら魔物などが残っている間に仕掛けるべきなのでは……そう思ったのだが、エイテル達は動かなかった。


 結局、帝国の騎士達は魔物を倒し完全に前線を制圧することができた……俺はじっと組織の陣地を見る。帝国側はここからさらに攻め入るのか、それとも一度立ち止まるのか。


『……陣地内の警戒をするようだな』


 少しするとジャノが口を開いた。騎士達のことを言及しているらしい。その言葉通り、騎士達は制圧した陣地内を動き回り警戒を始めている。


『魔法陣か何か仕掛けられていないかを確かめている……有利だからと勢いで進むことはしないようだ』

「帝国としては圧倒的に優勢だが、罠にでも引っ掛かればあっという間に情勢が逆転する、という風に思っているみたいだな」

『組織の想定を上回るパフォーマンスを見せているわけだが、現状の有利は薄氷のものである、というのを帝国側が何より理解しているようだ……ミーシャ王女に付与された力がどの程度かわからないが、ここまでの戦いでかなり消耗していることだろう。帝国としてもあまり余裕はないかもしれん』

「組織側の本陣へ仕掛ける……というのは難しいか?」

『その判断はセリス皇女が行うのだろうが……できれば帝国側としてはベストな状態で戦いたいと思うだろう。陣地内を確認し終えたら、一度引き上げるという選択をとってもおかしくはない』

「……時間を掛けるのであれば、それは組織側に準備を与えることにも繋がるけど」

『正直、現状では微妙だな。ただ、我としては進むも退くも、どちらをとっても悪い選択ではないと考えている』


 そうジャノが述べている間にも、騎士達が作業を進めている。やがてセリスもやってきて、陣地内を確認していく。


「俺達はどうする?」


 そうした中で俺はジャノへ尋ねた


「基本的には帝国の動きに合わせて、どうするかは決めるべきだけど……」

『それで良いだろう』


 ジャノが返事をする。俺はそれに頷き返すと、一度帝国側の本陣へ目を移した。


「そういえば……ミーシャは戦場にいるんだろうか?」

『現状では不明だ。ただ』


 と、ジャノは一拍間を置いた。


『怪我を治療した騎士達が相次いで戦線へ戻ってきている……彼らから発せられる気配は、戦闘を開始するよりも前の気配と酷似している。つまり、怪我だけでなく消耗した力も回復している』

「いる、と考えてもおかしくはない……か」


 俺はそう言うと組織本陣へと視線を戻した。


「もしそうなら、罠や奇襲さえ気をつけておけば態勢を立て直すことは十分可能だな」

『本来ならば避けるべきだが、一度くらいは作戦が失敗してもリカバリーできるだろう。ただそうは言っても、帝国側はこのまま優位を保ちつつ押し込んでいくことが理想だと考えているはずだ――』


 そこまでジャノが言った時だった。突如組織側の本陣から、魔力が湧き上がった。明らかにこれまでと異なる変化……帝国の騎士達は即座に警戒を強め、魔術師達が何やら準備を始めた……結界などを張るために色々と作業を開始したらしい。

 組織本陣から発せられる魔力は、なおも湧き上がり上空へと昇っていく……まだ誰も天幕の外には出ていない。もし姿を現したのであれば、その時こそ最終決戦になる、かもしれない。


「……ジャノ、組織側の本陣に近づくべきか?」

『帝国側の状況を見て少し様子を見ていてもいい……気配を断つことができる魔法を使えば、彼らが行軍している横で移動もできるし、それでも遅くはないだろう』

「そっか……いよいよ組織本陣が動き出すみたいだけど――」

『まずは相手の出方を窺うことにしよう。ここまでの動きから、エイテル達が力を用いて突撃や奇襲を仕掛けてくる可能性は低い。大規模魔法などを行使する可能性はあるが、そこについては帝国の魔術師達が備えているだろう』


 その言葉通り、魔術師達が制圧した陣地の地面に魔法陣を描き始めた……何が来ても問題がないよう、準備を進めている。

 作業をしていることはエイテル達もわかっているはず。準備が整えば面倒になることも……だが、禍々しい魔力を発しているだけで動きはない。


 というより、向こうもまた準備をしている? もしそうなら、本陣内では――色々と想像をしていた時、さらなる気配。ただそれは、俺の予想とは異なる展開だった――


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