02 日々は萎れゆく植物
いつもと違う朝、そしていつもと違う一日が始まる。その点ではいつもと同じ一日なのかもしれない。どちらにせよ、俺にとって日々は常に新しくしかも無残だ。生み出されたばかりの時は『今』に晒されたとたん、急にみじめに干からび始める。次から次へと押し出されて生まれてくる時間、永遠に新しく、しかも切り口から萎れてゆく巨大な植物……
日常というものに埋没していた時ですら、そんな事しか考えていなかった。
そうちゃん、そうちゃあん、と母屋のほうから声が響く。いつものことだった。
たいがいは部屋にいて声を聞く。カケルはその声がすると、のっそりと表にでる。まるで巣の中にいたカゴのハムスターが飼い主の声に反応して出てくるみたいだな、といつも自分でも思う。
「そうちゃん、ちょっとラブの散歩行ってくんない? アタシ、武宮さんちから呼ばれちゃって」
姉の手には既にお散歩セットが握られている。水色の小さな手提げと、青いリード。
「ねえそうちゃん、ごめん下ごしらえしてたら気がついた、お肉足りないわ、トリ挽肉二百グラム急いでお願い、あ、あと牛乳も二本」
「そうちゃん、タクミのお迎えお願いね。今日、センター混んでるらしいから駐車場空いてないかも、早めに行ってやって」
「そうちゃん、あのね明日なんだけど……」
「そうちゃん」
俺、今……返事をしていたのかな?




