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異常者と殺人鬼

 楽しい食事、夜のドライブ、そして、肉体を使った欲望を満たす為の時間、いつもと変わらない結末が黒目を待っている。


 男達の下心を擽り、マンションの八階へと誘導する。


 閉じられた扉から男達が外に出る事はない……


 暗闇に包まれた室内、男達達は今まで味わったことのない、経験をする事になる。


 突如、腹部、もしくは、背後に流れる焼かれるような痛み、微かに体内に刻まれる“プシュ”と言う水風船が弾けるような音が脳に響いていく。


「え、う、うわぁぁッ!」


 男の叫び声が室内に響くと黒目は無言のまま、太ももに向かって、ナイフを突き刺す。


「ギャアァァ、やめでくれ……ひぃ、やめでくれ……だのむから」


 痛みと恐怖が暗闇に包まれた室内、更なる絶望が男に襲い掛かる。


 黒目 恵は、ナイフを男の口元に運ぶ、そして、ニンマリと笑った。


「ゲームをしましょう……貴方が勝ったらマンションから、逃がしてあげる……負けた時はナイフを振るうわ、やらないなら……この場で殺す……選んで?」


 【ゲームをする】……生き残る可能性があり、時間稼ぎもできる。


 【ゲームをしない】……無条件な死が襲い掛かり、全てが終わる、最悪の選択だ。


 選べと語る黒目、しかし、【ゲームをする】以外の選択肢など存在していなかった。


 動けない状態の男、ベッドの棲みに頭だけ出す形で両手をベッドの両端に拘束される、そして、首を限界まで上向きに引き上げられる。


「ゲームの内容を説明するわね、スゴく簡単だから、首をあげていればクリアよ」


 黒目はそう言うと、スライド式の刃物のついた特性の拘束具を男の口に装着する。

 スライド式の範囲は口から耳までの長さがあり、首を下に傾けると、重しが移動し上がってくる仕組みになっている。


 男は恐怖を感じた、首を下に傾ければ、刃が動きだし、落ちた重しが更なる過重を掛けていく。


 そして、男は気づくのだ……“いつまで、続くんだろう”と、そうなれば、人間の心は脆い。


 数十秒が数分に感じ始め、一分が十分に感じ始める。無限にも感じる時間の闇が襲い掛かるのだ。


 開始から五分、黒目は決まって、男の目に目隠しをする。


 視界を奪う事で時間の感覚、目から入る情報を全て奪い、精神に揺さぶりを掛ける。


 そして、ゲームは黒目の勝利で終わる。


「口は災いのもと、悪い口は確り切らないと、余計な事を喋らないように……あと、約束しましたよね……嘘をつかないって……」


 黒目は男の指にナイフをあてると、一本残らず切断する。その刃に迷いはなく、寧ろ、楽しそうに微笑みを浮かべる。


「指切りげんまん……嘘ついたら、針千本、飲~ます……指切った……ふふ……」


 大量惨殺事件はこうして、続いていく。


 斉藤と間違われた男達は、嘘つきであり、殺されても構わないと考える黒目に罪悪感など、微塵もない。


 そんな中、斉藤と出会った黒目、その出会いから、一気に惨殺事件は終息する。


 そして、黒目は斉藤の誘拐行為を知り、斉藤に自身の見る世界を共有したいと考えた始める。


 そして、換気扇を利用し、催眠ガスを使い、斉藤の誘拐してきた女性を始末する。


 斉藤の誘拐事件の全てを狂わせた黒目は、一気に距離を縮める。


 そんな日々の中、黒目の存在に気づいた警察内部で強行作戦が計画される。


 マンション襲撃、警察の強行作戦が始まり、全ては終わる筈だった。


 しかし、黒目は姉妹の力により、生き延びたのだ。


 それからすぐ、斉藤が死亡する……傷が深く、一週間もっただけで奇跡と言うべきであった。


 だが、奇跡など、黒目は望んでいなかったのだ、斉藤の死を前に、感情のコントロールが出来なくなった黒目は闇医師にその怒りを全てぶつけた。


 斉藤の温もりが残る体を大切に車椅子へと乗せ、車に乗せると後に拘束される隠れ家へと移動したのである。


 その際、姉妹に対して、連絡を一度だけ行っていた。


『私よ……もし、あなた達が捕まったなら、一ヶ月後に私の行き先を告げなさい、いいわね』


 その連絡を済ませた後、スマホをその場で地面に置くと、車で粉々に粉砕する。


 黒目は、斉藤の細胞が次第に死んでいくのを感じ、自身の細胞で包み込む事を思いつく。


 狂った思考は、斉藤を解体し、その肉を食す事で斉藤を永遠にしようと考えたのだ。


 カニバリズム……禁忌の思考は斉藤と黒目を再度、1つにしたのだ。


 そして、黒目は裁判で死刑になるだろうと、信じていた……しかし、死刑にはならなかった。


 黒目は苦悩した、斉藤の細胞が体内で死滅する前に全てを終わらせたいと考える。


 計画は実行に移され、精神病院は地獄と化す。


 全ての計画が上手く進むと、最後の瞬間、黒目の脳内に、斉藤の言葉が響く。


 “恵さん、誰にも殺されないでくれ”


 頭を下にした瞬間、黒目は軽く微笑む。


 自身の心で呟いた。


 “私は殺されない……誰にも、気づいたから……”


 自身の首を切りつけた瞬間、黒目は、幸せに包まれていた。


 誰にも邪魔されない、邪魔させない。


 最愛の斉藤に只一人、愛されて死ねると嬉しそうに笑った。


 しかし、その真実を知る者はいない……永遠に気づかれないように、黒目は願いながら、生涯を終えた。


 “死後の世界で……永遠に幸せになりましょう……先生……”


 ──異常者と殺人鬼END──

読んでいただき、ありがとうございました。


誤字などがありましたら、御報告いただければ幸いです。



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