斉藤 学
成長した三人は退屈していたのだ。
現実の平和は、水もなく、砂漠をひたすら進むような感覚となり、刺激を求めるようになる。
遊びで始めたリアルゲームのルールはシンプルだ。
姉が調べた対象の情報をもとに、黒目が直接知り合いになる。そして、対象が愚かな行動を取れば、妹がお仕置きように作った部屋に対象を案内する。
しかし、ルールは変化していく、生きる価値なしと、黒目が感じた対象は、始末用の仕掛けを施した空間に案内されるようになり、死をもって対象をゲームオーバーにするようになっていったのだ。
最初は怪我をさせるだけだったが、次第にエスカレートしていった結果、対象を確実に死に誘う事がルールになっていく。
そんな時、黒目は姉が選んだ対象の中に、“斉藤 学”の名を見つける。
その瞬間、幼少時代の甘い記憶が甦り、真っ赤に頬を染めた。
期待と喜びが全身から漏れ出すように楽しげな表情を浮かべ、対象に接近する黒目。
しかし、対象は黒目の想い人である、斉藤ではなく、別の斉藤だった。
怒りと憎しみ、喜びからの絶望感は、黒目の感情を暴走させた。
黒目は対象を【斉藤 学】とし、姉妹は全力で協力した。
そんな時、姉がある提案を口にした。
「斉藤 学をマンションに誘い込めば、楽に計画が進むんじゃない?」
姉は対象を呼び出す際にマンションの使われていない階を使うことを提案した。
そして、七階から、上の階を全て封鎖状態としたのだ。
斉藤 学と言う名の人物が次々とマンションの中に誘い込まれ、肉塊になり、外に運ばれていく。
そんな中、管理人の元に一通の電話が入る。
内容はマンションの下見がしたいと言う物であり、電話の主は斉藤 学と名乗ったのだ。
偶然の一致であったが、管理人である中島は、黒目に名を教えず、販売する方向で話を進めた。
幾つもの不動産を有していながら、住民が増えないと言うのは、世間から見て、余り良い印象はないと考えていたからだ。
マンションの住民も、カモフラージュの為に安くしたい、一階から五階までが埋まるも、他の階に関しては買い手がつくことはなかった。
そんな中、最上階の部屋を探していると言う斉藤の存在を無視する事は出来なかったのだ。
斉藤は、マンションの最上階を見るなり、二部屋を所有したいと口にしたのだ。
冗談のような話であったが、管理人である中島は、真面目に話を聞くと、黒目にその場で電話を掛ける。
『あ、お嬢……御主人様、ただいま、最上階の部屋を購入したいと言う方が来ております。はい、業者と関係無く、個人で契約を希望されておりまして』
中島は黒目に、話の内容を説明する。
斉藤は、業者を通さず、契約を希望している事、二部屋を購入したいと希望している事、支払いは現金であり、一部屋分は、持参している事実、その全てを伝えたのだ。
『わかったわ、どうせ、買い手がつかない物件だもの、その人に二部屋を譲りましょう、代金も一部屋分だけでいいわ、お金は有り余ってるから、契約は任せるわ』
『よろしいので?』
『ええ、もしもの時は、私達で解決するから、安心して、任せたわよ』
通話が終わると、斉藤の前に契約書が出され、値段が提示される。
斉藤は、驚いていたが、契約書にサインをする。
この瞬間、斉藤と黒目が再度繋がり、新たな運命が生まれる。
しかし、斉藤と黒目が出会うのは、一年以上先の事であり、その間、斉藤は闇医師として、生活を開始する。
黒目は、斉藤と言う名の人物と出会い、目的の人物でない度に始末していく。
殺された斉藤達は、何故、自分が殺されたのかすら、理解できなかっただろう。
偶然を装い、現れた黒目と言う女性、親密になろうとする男達。
欲望にまみれた瞳を前にすると、黒目は決まって、ある質問を口にする。
「斉藤さんは、私が幼い頃に出会った、先生だったりして?」と明るい口調で笑い掛ける。
大概の男達は、ノリ良く答え、“もしかしたら” “あ、そうかも”等と返答していた。
その答えを聞く度に、黒目 恵は、笑みを浮かべる。




