あっとらいぶらりー㉔
「いや、だからね?…セリナちゃんとお付き合いする事になったんだって?」
え…?
ん?
ボクと?
セリナ様が?
お付き合い?
する?
ボクとセリナ様が?
あ~……
なんですって!!?
どういう事ですか!?!
「え?あ、もしかしてガセなの?!」
すいません、お付き合いするというのは何処から出てきたのでしょうか?
ボク自身初耳なのですけれど…。
「…って事はガセなのね…なぁんだ、残念。」
あの、ですから『お付き合いする』というのは…?
「さあ…?誰が言い出したのかは解らないけど…噂になった理由は理解ったわ。」
わかったんですか!?
「原因は、あなただと思う。」
ボク?!え?どういう事?やっぱり気付かずに何かやらかしちゃったんだろうか?だとしたら何時だ?セリナ様から声をかけて頂いたのが昨日…そこから今までの間で何か……?
「違う違う、呼び方よ、呼び方。貴女『セリナ様』って呼んでるでしょう?原因はそれじゃないのかしら?」
極近しい間柄に限って『お姉さま』を外して呼ぶ…
確かにそうなのだけれど…ボクは未だ『様』付きだ。“ちゃん”でも愛称でも、ましてや呼び捨てであろうはずもない。それに、これに関してはセリナ様からの申し出であって…『お姉さま』を外して呼ぶのはセリナ様御自身の希望だし、そう呼ぶに至った経緯は沢山のお姉さま方に目撃…聞かれていた。その希望に沿ったのはボクだと言われればその通りですが。
で、でもそれって断れななくないですか?そういう部分も含めて証人は多数いるはず、ですよね?
…にも関わらず、何故に『お付き合い』する事になっているんだろう?それに百歩譲ってお付き合いするってのが真実だとしたらですね、セリナ様、ボクとなづなの2人とお付き合いする事になるんですが?公然と、堂々と、二股宣言なさった事になってしまうのですけれど、それはアリなのでしょうか?
もし…もしですよ?仮定の話ですけれど、なづなとセリナ様がお付き合いするという事になったのなら、ヤキモチも焼きますし嫉妬に似た感情も湧いてくるでしょう。ですが反対はしませんよ。ボクはセリナ様の事はよく存じ上げませんが、あの時セリナ様を囲んでいた御友人方を見れば、好かれているのだろう事は疑う余地もありませんから。好かれているのならば多少の癖はあるにしても、悪い人ではないという事。であれば、特に反対する理由もありませんし…勿論ボクの感情的な部分を排除して考えた場合ですが。ああ、ちょっと脱線しましたね。いえ、それは置いておくとして、『様』呼びでそこまで話題が飛躍しますかね…?
あれ、待てよ?『様』呼びってそもそもボクが『双子ちゃん』ではなく名前で呼んで欲しいって言ったんだっけ?その交換条件で『お姉さま』を外せって言われたんだから…原因はボク?
え?あれ?
…と、お姉さま?
お目々がまんまるですが如何なさいました?
「いや、なんてゆーか。」
「貴女、めっちゃ面白いわね。」
え?
ありがとうございます?
ん?今ボク、面白い事言った?
「分析、考察、自己弁護に墓穴。流れる様だった。」
うぐっ!…面白かったですかね?
まぁ楽しんで頂けたのなら本望ですが…。
「うん、ちょっと情報交換しましょう。私の聞いた話は、伝言ゲームみたいに途中が抜けたり尾ヒレが付いたりしたんだわ。」
あ~…伝言ゲーム…。
わずか一日でこれだけ情報が歪曲されちゃうんだ…
まぁ、時間経過よりも何人を挟んだのかという事の方が重要なのだろうけれど。
取り敢えず、こちらのお姉さまだけでも誤解を解いておいた方が良いのだろうね。あわよくば三年生の方々に周知して頂きたい…という下心も、あると言えばある。
と、いうわけで情報の擦り合わせしましょう。
ーーー交換中ーーー
で、わかりました。
どうやら此方のお姉さま、あの現場に居た訳ではなく人伝てに、しかも又聞きの又聞きのそのまた又聞き…くらいの情報だった様で、けっこう話が歪んでいた。
歪んではいたものの概ね好意的だったので、訂正すべきは『お付き合い』の部分だけで良さそうだが…。
「セリナ様は、この件に関して何も仰らなかったのですか?」
「ご想像にお任せするわ。ですって。」
腕を組み、足を組み、堂々と、不敵に笑いながら。
ちょっとセリナ様?!
そんなん尾ヒレつくに決まってんじゃーーーん!
どんな深謀遠慮があるのか知りませんがね?その言い方はちょっと問題じゃないですか?!それだと要らん妄想が捗っても文句言えませんって!尾ヒレどころかブースターくっつけて加速させた様なものじゃないかと思うんですけど!?ISSまでで良いのにひまわり9号にランデブーしちゃったみたいなモノですよ!例えが分かり難いデスかそうですかすいません!
っぷふーーー…。
よっし。
言っちゃった事は仕方ない。
逐一反論するのも面倒だし、三年生のお姉さま方に『実はちょっと違うらしい』という事だけ伝われば良しとしよう。人の噂も七十五日。
「…それでいいの?」
「特に悪意のあるゴシップという訳でもありませんし、セリナ様とお呼びしているのは事実です。これから仲良くさせて頂くつもりもありますから、全部が全部ウソではない…って事で。」
「やっぱり貴女面白いわ。」
お姉さまはくっくっくっと小さく笑い、再び歩き始めた。…歩きながら話していたのにいつの間にかすっかり足を止めて立ち話に興じてしまっていた様で、前を歩いていた筈の集団はもう見えない。
歩き出してしまえば3階など近いもので、あっという間に3階の踊り場だ。
「ボク…私はここで失礼致します。…お姉さまは1階に?」
「ええ。ついでだからミルクホールに水分補給に行って来るわ。」
左様で。足止めしてしまって申し訳ありませんでした。
やはりご挨拶はカーテシーで。
それではごきげんよう。
「またね、せりちゃん。」
階下に降りてゆくお姉さまを見送ってから3階のフロアに戻る。
いやぁ、報告だけだと思っていたからサクッと行って帰って~みたいに考えていたのだけれど…意外と時間かかっちゃったなぁ…。
なづなと満さん、待ちくたびれちゃってるかな?
お姉さまにも長話で時間取らせちゃったし…あ、お名前伺っておけばよかったかな?
…あれ…そういえば今、『せりちゃん』って、言われた?
最初は『鈴代せりさん』で、その後はずっと『貴女』だった気がするのだけれど…違ったっけ?
…上級生から『双子ちゃん』以外の呼び方されるの珍しいから、なんか新鮮。
なづな達のいるはずの書架に近づいても、話声ひとつしないんだけれど…もしかして下に降りてるのかな?
「なづな~、満さ~ん?」
「いるよ~。」
お?声はすれども…?
「お帰り~。こっちだよ~。」
ひょいっと書架の陰から顔を覗かせた満さんが手招きをする。
さっき迄ボク達がいた部誌のあった書架とは別の方だった。
あれ?
数を絞って部誌を読むんじゃなかったっけ?
息抜きに散策でもしていたのかな…?まぁ、合流すればわかる事か。
招かれた方に行くと、1階にあったのよりはずっと小さいが受付カウンターの様なスペースがあった。事務スペース…にしては随分と綺麗だけど、何に使う場所なんだろう?
なづなは座って何かをしている様だ。…PC?
「ただいま~、遅くなっちゃってごめんね。」
「あ、お帰り~。上はどうだった?」
うん、凄かった!あの閉架書庫は一見の価値があるね!できれば書架を移動させているとかも観てみたかったけれど、いや、あの景色だけでも4階にいった甲斐があるというものだよ!
「…何しに行ったんだか。」
いやいや、ちゃんと目的は果たしましたよ!?
4階にいた皆さんに1階のイベントが終了した旨をお伝えして、詳細はご本人から確認されるのが良いと丸投げしましたから!
今頃は遥お姉さまが対応してらっしゃるでしょう。
「え!?そうなの?!」
うん。そーだよ?
「ちょ、ちょっと行って来てもいいかな!?」
遥お姉さまが心配ですか、ええ、ええ、良いですとも。
お行きなさいお行きなさい。
「ありがと!行ってくる!」
後半、少々加筆しました。
失態を侵さない様に等と宣っておきながらこの体たらく…
もう、どうお詫びすればよいのやら…




