あっとらいぶらりー⑱
あっとらいぶらりー⑰加筆しております。
もしまだお読みでなければ、ご一読下さると有り難く存じます。
「でもね、なづな。」
「うん?」
「ボクは、なづなの全部が見たいんだ。」
「ぜ、全部って… 」
誤解の無い様に言っとくけれど、えっちな意味じゃないからね?あ、いや待って、えっちな意味も含めて全部って言った方がより正確かもしれないね?うん、そうだね。そういうのも含めて全部。
「え?えぇ〜 … 」
優しいところも、おっかないところも、かっこいいところも情け無いところも、可愛いところや勇ましいところ、キリッとした顔も拗ねた表情も、怒った顔や困ってる顔、寝顔も起き抜けの寝惚けた顔も、満面の笑顔に強敵に相対した時の様な真剣な顔、お風呂で緩み切った顔とかマッサージされて蕩けてる顔なんかも。皆んなが知っている“なづな“からボクだけに見せてくれる“なづな“まで、全部、ぜ〜んぶ!
むぐっ?
「わ、わかったから、もういいから!」
赤面したなづなが、両手でボクの口を押さえて黙らせようとする。
「お手柔らかにって言った直後にコレって、あんまりじゃないかな?!」
え?なんで?今は2人っきりなんだし別に良くない?誰も聞いていないんだよ?恥ずかしがる必要なくないかな?それに愛してる、とか大好き、とか言ってる訳じゃないんだけれど?
「そうだけど!今のを容認したら、みんなの前で言っちゃう未来が見えるんだよぅ!」
…あぁ、うん。なんかそんな気もするね。
言っちゃうかもしれない。けど、さっき『慣れなきゃ』とか言ってなかったっけ?…ボクも慣れられちゃってスルーされると寂しいって言ったけどさ、それは一旦コッチに置いといて。言ってなかったっけ?
「言った…言ったけど。覚悟も決めるって言ったけど…うぅ、意地悪…。」
あ、あ、ごめん!泣かないで?!
両手で顔を覆って俯いてしまったなづなの姿に、ちょっと慌ててしまった。
ホントに泣いてる訳じゃない。泣き真似だってわかってる。わかっていてもボクの所為で俯かせてしまったという状況が、ボクにはキツい。
以前のボクは、あの子に悲しい顔ばかりさせていたから…後になって、それを本当に後悔したんだ。…本当に。
照れ顔のなづなは見たいけれど、困らせちゃうのは本意ではないし、泣かせちゃうなんて以ての外だもん。
やっぱり悲しい顔だけは…見ないで済むならその方が良いもの。ボクはお姉ちゃんを悲しませる気は無いのだけれど、ボクの努力だけじゃ如何にもならない事だってあるしね。
せめてボクの所為で泣かせない様に。
…しなきゃいけないのに。
…おかしいな、これ、泣き真似のはずなんだけれど…そのはずなんだ。だって、なづなは今まで一度もこんな風に泣いた事なかったもの。前だけ見て、ポロポロ溢れる涙を拭いもせず、じっと耐えていた。
そんな泣き顔しか見た事ないもの。
こんな、俯いて、顔を覆って泣くなんて…なかった。
え?あれ?
なかった、けど、今回も泣いてないという確証は?
ない。ある訳ない。
今迄がそうだったから、これからもそうだなんて、そんな訳ないじゃないか。
ちょっと調子に乗り過ぎた。
いくら照れてる顔が可愛くて何度も見たいと思ったからって、これはやり過ぎだったか?
…うう、ボクのバカ!
本当に泣かせちゃった?!
ボクの所為で泣かない様にとか言っといて泣かせちゃったなんて、愚かにも程があるだろう!
どうしよう…
どうすれば…
ああ、なんかボク、テンパってるっぽいな…
思考が行ったり来たりしてる気がする。
「ごめん、ごめんね、なづな。困らせたかった訳じゃないんだよぅ… 」
オロオロ
俯いたままの なづなに触れる事も叶わず、如何声をかければ良いのかも判らずボクの手は宙を彷徨うばかりで…
あうあう…
「…なづな、なづなぁ… 」
もうどうすればいいか判らなくなっちゃって、項垂れたその時
「ふっ… 」
息の漏れる様な声…音?が聞こえた。
と、同時くらいだろうか、間髪入れずにボクの頭が左右から何かに挟まれ、完全に固定されてしまう。
何これ?!
って、なづなに掴まれてるに決まってるんだけれど!
「ふふふ… 」
あ、やっぱり泣き真似だった!不覚!
まぁホントに泣かせちゃったんじゃなかったってのは良い事なんだけれども!
くぅ、やられた。
なづなは今、どんな顔してるのだろうか?
『してやったり』みたいな顔してるだろうか?
両手で固定されているから視界も固定されてしまい、表情を窺い知る事も出来ない。
「ごめんね。」
…はい?
「心配させちゃって、ごめんね?」
え、いや、それは、その…え?
「泣かせちゃった、って思ったんでしょう?」
「大丈夫、泣いてはいないから。ちょっとお返ししてやろうと思ったんだけど…思ったより効いちゃったみたいだね。あんなに狼狽えるとは思わなかったから、ちょっとびっくりしちゃった。」
「だから、ごめんね。」
膝立ちになって、ボクの頭を胸に抱く様に引き寄せ、ゆっくりと髪を撫でる。まるで子供をあやすみたいにゆっくりと。
…謝られちゃった。
元はと言えば悪いのはボクのはず。
なのに、なづなに謝らせてしまった。
…ごめんなさい…。ボクの方こそ謝らないといけないのに…。
こんな風に慰められて、あやされて。
うう…やっぱりまだまだお子ちゃまなんだなぁ…ボク…。
「でも…ふふ、狼狽するせりの顔を見られなかったのは、少し残念だったなぁ。」
ぐっ…!そ、そこは助かったと言って良いんだろうな。
自分ではよくわからないけれど、結構情けない顔をしていたんじゃなかろうかと思う。それを目撃されなかったのは幸いだったかもしれない。
見られていたら…
いや待てよ。なづなの事だから時折思い出しては、独りでニコニコしてるだけなんじゃないだろうか…?
なづなって、ボクの顔を見て突然ニコニコし始める時があるんだけれど『どうしたの』って聞いても『何でもないよ』としか答えなくってさ。そういう時って大体ボクに関する何かを思い出して楽しくなってるらしいんだよね。
不意に思い出しちゃうんだそうな。
その『面白記憶ライブラリー』にネタが一つ追加される訳だ。
…あれ?あんまり問題なさそう?
なづなはボクの頭を解放して体を離し、正面に座り直す。
…なんだろう、いつもよりも表情が柔らかい気がする…。気のせいだろうか?
何か気になってジーッと見つめていると
「…? 私の顔、なんか付いてる?あ、もしかして押さえてた時の跡とか付いちゃってる?!」
そう言って慌てて頬っぺたを擦ったりマッサージしたりと、今度は何時も通りの表情を見せる。…うん、いつも通りのなづなだね。いつも通りだ。
一頻り顔をモニュモニュして、う~んと首を傾げて
「ねぇ、どう?とれた?」
え?あぁ、大丈夫。なんにも付いてないよ。
いや、可愛い眼と口と鼻が付いてる…と、普段なら言っているところなんだけれど、いくら何でも今は言う訳にいかないね。
流石にそのくらいの分別はあるよぅ…。
…
……
………
それにしても…改めて見ると綺麗な子だなぁ…。
容姿はね、いつでも変わらず綺麗だし可愛いよ?
そうじゃなくて、なんていうんだろう、纏う雰囲気みたいなもの…オーラとでも言えばいいのかな?柔らかくて暖かくて、そうだね『母性』というヤツだと思う。包み込むようなあったかい感じ。ほら、一昨日だったかな?光さん達と話していた時にもそんな話題になったじゃない?あれあれ。
あ、これか!
さっき気になってたのは表情じゃない、雰囲気だ。
以前から柔らかい感じの空気を纏っている子ではあったんだけれど、今はそれが目に見えるようなんだ。
前にも増して。
ほんわか度が増してるというか効果範囲が拡がっているというか…密度が濃くなっているというか…兎に角、一段と柔らかくなった気がする。それが“綺麗になった”と感じさせているんじゃないだろうか?
いやでも、近くに居過ぎて変化に気付けなかったけれど…実際、前より綺麗になっているんじゃないかな。勿論ボクの贔屓目は別にしてね。
…うふ、うふふ。
自慢のお姉ちゃんが益々綺麗になっていくのは嬉しいねぇ。
「なぁに?…もしかしてまだ取れてない?!」
じっと見つめていたもんだから、まだ付いてると思ったのかさっきより激しくグイグイムニムニしてる。ちょ、可愛いお顔が福笑いみたいになっちゃってるんだけど!?
大丈夫!もう付いてないから!取れてるから!
「そう?信じるからね?」
そこは信じてよ。
ボクは嘘は吐かないって言ったじゃん。
すいません…
昨夜は執筆中に寝落ちしました…。
朝、慌てて加筆しましたが…2、3回追加投稿したものですから、昨夜投稿分とは少し言い回し等が変化しております。
度々ご迷惑をお掛けしまして申し訳ございません。




