あっとらいぶらりー⑮
「1年もグダグダしてたんだから、ここはバシッと決めて欲しいわね。」
…周囲からこんな風に言われてたって知ったら、どんな顔するんだろうねぇ、満さん…。
遥お姉さまも、周囲には隠せているつもりだったんだろうなぁ…知らないフリをしてたお姉さま方も、さぞヤキモキした事だろうね。さっきの甘い遣り取りを見てたら、ラノベや漫画みたいに『もうお前ら結婚しろ』とか『さっさとくっついて末永く爆発しろ』くらい思われる事だってあっただろうに。
だってアレ、普段からやってたんでしょう?
よく誰も突っ込まなかったものだ…。
え?
ボクが人の事言うのはおかしいって?
そんな事ないでしょう。
だってボク、なんにも隠してないもん。
そりゃ決意表明したのはほんの何十時間か前だけれど、お姉ちゃん大好き、愛してる〜って、ずぅ〜〜っと言ってたんだから。誰に憚る事もなくね。
今だって声を大にして世界に向けて宣言出来るよ。
ボクは、なづなを、世界で一番、大切に思っている、って。なづなはボクんだ。誰にも渡さないぞ、って。
ビスッ!
痛い!?
何故かなづなにチョップされた!前頭部に!
なんで?!いきなりナニすんの?!
「もうちょっとTPOを気にして?!」
は?
…え、もしかして口に出てた?…また?!
…お姉さま方、両手を握り合って此方を注視してますね。少々、お顔が赤う御座いますね?え…え〜と…何かお聞きになられました…か?
暫くボクを見ていたお姉さま方、突然爆発したみたいに、それでも小さな声で
キャーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!
「ホントにホントだったのね!」
「遥ちゃんの言ってた通りだった!」
凄い凄い、ホントにあんな風に言うんだ、何処の主人公なの、あの子!あ〜私も言われてみたい!やっぱり根っからの主人公なのよ、演技でもなく自然にあんな台詞が出て来るなんて!陳腐な台詞でも言う人でかなり違うわよね?!双子ちゃんだと納得しちゃうもの!
ヒソヒソひそひそ…
大変興奮していらっしゃるのに、非常に小声でお話ししてらっしゃいます。凄いですね、さすが図書委員。一度意識した後は『図書室ではお静かに』が徹底され、感情が昂ぶっても声を抑えて会話出来るなんて。
感想は何気にヒドイけれど。
…陳腐って言われた…くすん。
取り敢えず、お姉さま方の反応には目を瞑って話題を変えさせて貰いましょう。あんまりきゃーきゃー言われ過ぎると なづなが轟沈しかねないからね。
「…あの、お見苦しいものを……。」
「とんでもない!素敵だったわよ!」
「ええ、噂通り。いいものを見せて貰っちゃったわ。」
いいものったって…ボクが独り言を言ってただけですが…台詞の内容は兎も角、見てて楽しいモノだったんでしょうか?
そんな様な事を口にしたら、お姉さま方、ちょっと驚いた顔をした後
「…自覚がないのね。貴女すっごく優しい顔で話していたのよ?」
「あの顔が特定個人に向けられているなんて…わたしだったら茹で上がっちゃうんじゃないかしら。」
「あ~、わかる!あれは超必よ、超必。」
きゃいきゃい。
…超必て。
人の顔をフィニッシュブロー扱いしないで下さいませ。よもや危険物みたいに言われるとは…想像すらしていませんでしたよ。
っていうか話題変えられてない。まずい。
なづなは…少し上気した頬を押さえて呼吸を整えようとしてる…うん、よかった、まだ大丈夫そうだ。
けど、それでも大事を取っておこう。
「それで、あの、話は変わるのですが。」
「はいはい。何かしら?」
まだ少し興奮気味ではあるけれど、お二人の会話が途切れたところで割り込む。
ちょっとお行儀悪いですかね?すいません。
「足止めをしてしまっておいて言う事ではないと思うのですが、お姉さま方が此方に降りていらっしゃったのは、何かしらの用事があったからですよね?其方はよろしいのですか?」
「ああ、それなら大丈夫。もともと遥ちゃん達の様子を見に来たのよ。休憩がてらね。」
お姉さま方の説明に依ると。
一階受付のお留守番をしていた満さんが、四階で作業中の委員会メンバーに対し交代して欲しいという連絡を入れ、それならば私が、と立候補したのが遥お姉さまだった、と。
2人の奥手っぷりに焦れていたお姉さま方は、実は交代要請は偽装工作で2人で逢瀬を楽しんでいるのではないかとか、とうとう意を決した満さんが告白に踏み切ったんじゃないかとか、いやいや、満さんは誰を寄越せとは言わなかった、遥お姉さまが立候補したのだから、遥お姉さまこそ覚悟を決めたのではないか、等々、それはそれは大盛り上がりだったそうだ。
皆さん、こういうの好きなんですね。
『女の子同士って変じゃないか?』なんて思ってたボクの方が、マイノリティなんじゃないかとすら思えてくるよ。
ま、そんな事はどうでもいいんだけれど。
で、作業もひと段落ついたところで、ちょっと覗きに来たらボク達と出会して今に至る、と。
なるほど、ボクらが満さんか遥お姉さまに協力して足止めしているって考えたのは、四階で盛り上がってた“予想”があったからなんだね。
納得。
「…余程の事がない限り、もう済んでいると思うのですが…ちょっと覗いてみますか?」
「その“余程の事”と平時の垣根がない上に常態化しているから今迄進展していないのよ、あの子達。」
あ〜…それは、なんと言っていいのか…
「でも満ちゃんが決心したっていうなら、ちょっと放っとくのも手かな、とは思うわね。」
「それに、下手に覗いて気付かれたりしたら目も当てられないしね。」
あぁ確かに。それはボク達も危惧していた事だから、不確定要素は極力排除しておいた方が良いことは確かだ。
…なら見に行くのはやめといた方が良いかな?
うん、そうだよね。さっきも言ったけれど顛末は満さんに聞けばいいんだし、二人の時間は大切にしなきゃだもん、邪魔になるような行動は控えなきゃ。うん。
「さて、私達はそろそろ作業に戻るけど、双子ちゃん達はどうするの?門番の続き?」
「いえ、ボク達も調べものの途中だったので…。」
「三階に戻って調べものを再開しようと思います。」
「用事を中断して遥ちゃん達の為に門番なんてしてたの?!」
あ、いえ、そんな大層なものではないのですが…そうですね?
それに満さんが行動に移したのは自分たちの所為でもありますから、まぁこのくらいは…協力と言うには細やかですが、しても罰は当たらないかな、と。
「三階に戻るのなら途中までご一緒しましょう。」
お姉さま方に促され、ボク達も共に昇り階段へと向かう。
昇り階段はさっきまでボク達のいた場所から見て丁度反対側。中央の階段シャフトを中心にフロアを半周した位置にある。
歩いている間もお姉さま方とお話していたのだけれど、話題は専ら遥お姉さまの事だった。
先日の、入学式の準備の時のエピソードや、ボク達が入学して間もない頃に中等部に潜入してまでボク達を観察していた話なんかもしてくれた。
改めて聞くと…なかなかヤバい人に聞こえるね。
まぁ、アイドルの追っかけみたいなものなので気にしなくて良いとの事だったけれど。
ボク達の追っかけなんてして面白いのかな…?
「じゃあ、ここで。調べもの、頑張ってね。」
「ありがとうございます。あ、それと,満さん達の事なのですが…おそらく一段落したところで満さんが三階に戻って来ると思うのです。 」
「ですから、そのタイミングでお姉さま方の所まで伝言を持って行ってもらおうと考えています。」
そうしないと、四階にいる図書委員のメンバーが何時迄たっても一階まで降りられない、なんて事になっちゃうからね。
ボク達のどちらかが行ってもいいのだけれど…まぁ伝言は満さんに行ってもらった方が良いだろう。事の顛末も直接聞けるかもしれないし。
っていうか、どうせ満さん根掘り葉掘り聞かれるんだからさ、早いとこ吐いちゃった方が楽だよ、きっと。
「あ、それは助かるわ。是非そうして頂戴。」
はい。承りました。
ではお姉さま方。
一旦、失礼致します。
二人並んでお約束のカーテシー。
「また後程。」
ちょっと文章が荒いですね…
折をみて修正していこうと思います。
追記
言い回しを微修正しました。




