あっとらいぶらりー④
やはり少々、短いです。
P.S.サブタイトルを変更しました。
なづなは、窓際まで歩いていって暫く外を眺めていた。
まだ陽も高いグラウンドには運動部の子たちの声が飛び交っている。
手前のグラウンドには陸上部の子たちが、右手奥のハンドボール専用コート、正面奥には野球場、更に奥にはサッカーグラウンド、此処からは見えないけれどテニスコートにも、それぞれの部の子達が汗を流しているのいるのだろう。
ボク達は、ほんの少しだけれど日光に弱いので、お日様の下での運動は控えている。だからこうして真っ黒に日焼けして汗を流す運動部の子達を見ると、少しだけ、ほんのちょっとだけね?羨ましく思う事がある。
いやホント、少しだけね?
「みんな楽しそうだねぇ。」
「平和でいい、よね。」
平和!
いやまぁ、そうなんだけれど。大きくでたなぁ。
あの子が求めていた生活なんだから、当然だと言えば当然の感想なのだけれど。
もし、なづなも…あの子の記憶を持っていたのなら、どれほど喜んだろうか?
あ…でもなぁ、それはそれでボクが困るかなぁ…?
だってそうでしょ?自分で言うのもなんだけれど、以前のボクって、無邪気ではあったのかもしれないけれど…その、いじめっ子だったんだから。
あの子に絡んでは喧嘩ふっかけてさ、大した抵抗しないからって『本気でやろうよ』って煽ったりさ。
…うあぁ…我ながらムカつく!目の前に居たらブン殴ってやりたい!自分だけど!
そんなヤツがだよ?
生まれて変わった途端に『お姉ちゃ〜ん』とか甘えた声で擦り寄って来たらどう思うよ?!困惑するでしょ!?なんだコイツって思わない?!思うでしょ?!ボクなら思うもん!
ボクはほら、あの子がいなくなっちゃた後の経験が有るからさ、自分の変化を知っている訳じゃない?
でも、あの子からすれば突然擦り寄って来られた感じになる訳で…いじめっ子がいきなり愛の告白して来たって受け入れられる?!無理だって!どん引かれる事間違い無しですから!
そんなのボクが恥ずかし過ぎるでしょう?!
よく言えばツンデレキャラって事なんだろうけれど、
どんなツンデレだよ!?
ツンデレにも程があるよ!
ぐあぁ!考えてたら羞恥で顔が熱くなってきた!
やめてやめて!考えないで!
ボクが悪かったデス!
すいません、ほんとごめんなさい!
…はぁ〜、ふぅ〜。
落ち着け〜…落ち着けボク。
「…せり?どうしたの?…何か黒歴史でも思い出しちゃった?」
ズバリその通りです…!
地味に抉らないで?!
「う〜…そんなとこ…。」
窓に額を押し当てて項垂れているボクを見てクスクスと笑い、あんまりグリグリして硝子割らない様にね、だって。いくらなんでも、そんなに脆い硝子とは思わないけれど…気をつけます。
硝子の冷んやりした感触を求めて、ちょっとづつ頭を移動しながらグラウンドを眺めていたんだ。
そしたらね、なんかこう、目の端にチラチラと過ぎるものがあって、なんだろうと気になったんだよね。
たぶん、気になったのはグラウンドの西の端、学校の周囲にある、林というか、森というか…の中だと思うんだけれど…んん?
「ねぇなづな、林の中って何かあったっけ?」
さっき気になった場所を指差して、質問してみた。
実は答えが返って来る事は、あんまり期待してなかったんだ。ボク達は意外と学校の事知らなかったりするので、なづなも知らないんじゃないかなって思ってね。
「林?…ん〜?あぁ、走ってる子がいるんじゃない?あの辺だったら体力コースでしょ。」
体力コース?そんなのあるの?
「知らないの?!」
え?知らないけど?
ちょ、なんでそんな呆れた顔するの?!
「学院の外周にある林道だよ。舗装されてない土の道だから脚の負担が少ないんだって。運動部の子達が使ってるじゃない。」
へぇ、そうなんだ。
って、明之星のグラウンドだって土じゃん!
なんでわざわざ外周路使うの?
「柔道部とか剣道部とか、グラウンド使ってない部だってあるでしょ?」
あ〜、なるほどね。普段は体育館や武道館使ってる部は外周を走ってるのか。へぇ〜。運動部に所属した事なかったからなぁ…知らなかったよ。
なづな、よく知ってたね?
「桂ちゃんが話してたよ?一周2kmくらいあって結構キツイって。覚えてない?」
む。そういえばそんな事言ってた気もする。
それ、たぶん去年、桂ちゃんがテニス部入ったばっかりの頃の話だよね。
桂ちゃん入部したの凄く早かったもの。実力テスト前には入ってた気がする。
ああ、もしかして今走ってるのは1年生の新入部員なのかな?
桂ちゃんみたいに早く入った子達なのかもしれないね。
「そっか、もう新入部員がいる部もあるんだねぇ。」
「早い子は春休みから練習に参加するって言ってたよ?」
春休み?!え、それ中等部から高等部に進級する時の話じゃないか?
流石に初等部から中等部だと、早期参加してもレベルが違い過ぎて即戦力とはいかないだろうし…あ、でも早くから鍛え始めれば…って考え方なのかな?
好きな事やってるんだから当たり前なのかもしれないけれど、凄い情熱だよねぇ。
残念ながら、ボクにはまだ夢中になれるモノがないからなぁ…そのうちに何か見つかるんだろうか?出来れば個人競技でが良いんだけれど…ボク、チームプレイのセンスないんだよぅ…。
って前にも愚痴った気がする。
すずな姉ちゃんみたいに、和弓とかやってみるのも良いかなぁとか思ったりもするんだけれど、何故か中等部には弓道部ないんだよねぇ…。
まぁ、いづれ、の話だから慌てるつもりはないんだけれど。
え?書道部?
ああ、それはないです。
上手くなりたいとは思うけれど、部活に入って迄やろうって気にはならないね。書道パフォーマンスとかカッコいいとは思うけれど、自分でやりたいかって言われると…どううだろうなぁ…って。まぁ書道はゆっくり上達すれば良いって思ってるので。
「せりは部活やるとして、文化部は選択肢にないの?」
文化部って言うと、美術部とか吹奏楽部、合唱部、手芸部、囲碁、将棋、それから文芸部…かな?あれ?こんなもんだっけ?
ちょっとピンとこないね。
あ、でも文芸部の部誌は気になるかな。影法師をはじめとする七不思議の考察みたいなのが載ってるって言ってたし。
…そうだ、部誌!
「なづな!部誌だよ、部誌!」
「…ぶし?武士…仏子…あ、部誌?」
「文芸部の部誌!見に行かない?!」
「今から?」
そう、今から!
どうせまだ時間あるんだから、図書室か文芸部の部室のどっちにあるのかわからないけれど、行ってみようよ。折角マリー先生があれだけ勿体つけてお薦めしてくれたんだもん。面白い事かいてあるんじゃない?
「ふむ…。そうだね、行ってみようか。」
よし、そうと決まれば早速GOですよ!
カートゥーンよろしくのポーズで勢い込んで教室を出ようとしたボクに、なづなから待ったがかかった。
「ちょっと、せり!鞄持って行かなきゃ!また教室戻って来るつもり?」
…そうでした。




