あっとらいぶらりー②
サブタイトルを変更しました。
「鞄、持ってきておけば良かった…。」
今の状況だけで見れば、そうかもしれないねぇ。
けれど、なづなが保健室に来た時の事を考えれば、何を置いてもボクのところへ来るのを優先してくれたんだろうなぁって、そう思えるので、教室まで戻るくらい全然構わないんだけれど。
「置いて帰っちゃっても良いけれど?」
「それはダメ。」
わかってマスよぅ。真面目だなぁ。
まぁ後回しにしても結局いつかは持って帰らなきゃいけないんだから、さっさと片付けちゃった方が後が楽だもんね。
という訳で、先ずは教室へ戻らないと。
SHRが終わってから1時間以上経っているのだから、もう誰も居ないんじゃないかな?
「ねぇなづな。」
「ん〜?」
「ボクが寝てる間に決まった事ってなぁに?」
ボクが失神脱落した後もHRは続いていたのだから、何かしらあったはずだけど。流石にあの後も二時限の間ずっと今後の授業予定を説明していた訳ではあるまい。
…ないよね?
「そうだね。それも話さなきゃ、だよね。」
なづなの説明によると、確定事項としては授業中の写真撮影は副担任の先生がやってくれる事。明日早速撮影する事。
この二つは確定。
更に今週末までにパイロットフィルムを作成する予定である事。これは椿さんを中心に制作するらしい。
なんか張り切ってるんだって。
無理しないと良いけど…。
あと、ちょっと衝撃的だったのが、MVや映像に詳しい人を探してるって言った時に、詳しい人に任せるのはやめた方がいいって意見が出たんだって。
どういう理由なのか聞いてみたら、詳しいと自称する人は大抵『何処かで見た様な物しか作らない』からなんだって。
所詮は素人なのでプロの作品の劣化コピーになるのがオチ、それなら最初から変に背伸びせずに作った方が良いって事らしい。
凄い意見だよね。
そんな事考えもしなかったけれど、言われてみれば、なるほどと思わなくもない。
こんな言い方をすると上から目線で不遜だけれど…ウチのクラスって思った以上に優秀な子が揃っているんじゃないのかな?
「はぁ、耳が痛いねぇ。」
「ホントだよぅ。私達が最初に考えてた事って正にコレだもん。」
なんで最初の時は言ってくれなかったんだろうか?
やっぱり、みんなが盛り上がっている中で、水を差す様な意見は憚られたのかな?それとも、後で思い直した?
どちらにせよ、この意見は尤もだ。
無駄に背伸びはしない方がいい。
その通りだと思う。
…こんな風に意見が二転三転すると、ボクってまだまだ芯がないいんだなぁと実感しちゃったりしてね、ちょっと凹むけれど結果良い物が出来るのなら、一時のガッカリ感なんて安いものよ。
「それは違うよ。芯が無いんじゃなくて柔軟なの。良い意見だと思ったら取り入れる。いい事じゃない。」
あはは、物は言い様だねぇ。
でも大丈夫。凹んでも折れたりはしないから。
それで、他には?
「後は週明けの実力テスト後、撮影を順次行うから協力してね、って感じで新歓祭の事は一旦お終い。」
ほうほう。
「え〜と、その他には、今年度の年間スケジュールの説明もあったっけ。」
新歓祭の後は、直ぐにGWという長いお休み週間があって、球技大会や中間試験、期末試験、その間に修学旅行が挟まるのか。
そうそう、体力測定も。これは中間の前だったかな?
部活やってる子達は、これに加えて中体連やら新人戦やらがあって大忙しだ。夏休みだってほとんど潰れちゃうし。
夏休みが明けると体育祭に文化祭、勿論、中間試験もあるし期末も当然ある。
特に二学期は密度が凄いよね。
他には……あ…。
…生徒会の役員選挙も…。
あぁ…実力試験の後、セリナ様に呼び出されてたんだった。危ない危ない。結構重要事項なのに忘れるとこだったよ。
…あれ?
……何処に行けば良いんだろう?
いや、セリナ様からなんの指示も無ければ昇降口で待ち伏せでも教室に突撃でもすればいいだけだ。
うん。問題ない。
「そうそう球技大会ね、今年度は学期毎に一回づつあるらしいよ?」
え?そうなの?三学期はイベント事が少ないから理解できるけれど、二学期もやるの?あんな過密スケジュールなのに?
「12月半ばにレクリエーション会を兼ねてみたい、だよ?」
あ~…期末試験後のリフレッシュイベントって感じかぁ。
それは良いかもね。球技大会みたいなイベントなら過去に開催した時のテンプレートがあるので事前準備もほとんど必要ないし、予算だって不要だ。なんてお手軽。
階段を上って教室のある3階に。
廊下には誰もいない。この時間になると流石に生徒は残っていないみたいだね。校内にいる子は部活関係で残っているのだろうから、みんな部室棟か特別棟に行ってるんじゃないかな。グラウンドからは掛け声も聞こえてくるので、運動部は既に練習を始めているのだろう。
やっぱり教室にも誰もいなかった。
鞄を回収してさっさと帰ってもよかったんだけれど、なんとなく自分の席に座って何も書かれていない黒板を眺めてみる。…うん、いいねぇ。
理由はわからないんだけれど、誰もいない放課後の教室の雰囲気ボクは結構好きなんだよね。
「せりは、こういうの好きだよねぇ。」
「うん…なんでなんだろうね…?」
「う~ん、むかし読んだ漫画で、憧れを持っちゃった、とか?」
あ~、そういう事もあるのかもね。そっか、漫画じゃなくても、映画とか小説かもしれないし誰かの伝聞ってパターンだってあるかもしれない。
なづなは窓際まで行くと、くるりと振り返った。
「私は賑やかな方が好きかなぁ…。」
それもわかる。
クラスメイト達がワイワイと騒がしく、楽し気に話している、笑い声が響いている、笑顔が溢れている。そんな教室も素敵だと思う。
なづなが憶えているはずもないけれど、以前のあの子は賑やかな所が好きだったらしいから。
血は繋がっていないけれど、家族はたくさんいたって聞いた。周りはいつも騒がしかったって言ってた…らしい。ボクも直接聞いた訳じゃないから、実際どんなだったか知らないんだよね。
でも、たぶん。それが魂に刻まれているんじゃないかな?
「なづなは、寂しがり屋さんだからね。」
「えー?せりの方が寂しがり屋じゃない。」
ぷぅ~っと頬を膨らませて抗議してくるけれど、ここは譲らないよ?
やっと日常が帰って来ました…




