すくーるらいふ③
「 新たなコンセプトは “楽しい学園生活” です。」
現在ボク達はHRにて新歓祭の企画会議の真っ最中なのですよ。
なづなの やらかした話?ああ。あの後も盛り上がってたよ。マキ先生が来るまで、ず〜〜っと。
桂ちゃんに加えて当時クラスメイトさん達がね、尾ひれこそ付かないものの色々と暴露してくれちゃってね。だからせめて、本人の居ないところでやって欲しかったんですけれど…。
で、HRの方はと言うと。
議事進行、委員長の彩葵子さん
書記、副委員長の皐月さん
第二書記r、光さん
で、ボク達はプレゼンター。
人前で喋るのは苦手ですねー。
正直やりたくないですー。
「新入生に対して、学校施設の紹介を交えつつ、楽しく過ごす生徒の映像を披露したいと思っています。」
「先程も言いましたが、昨日HR中に話し合った事は一旦全て忘れて下さい。」
えーっ、とか、なんでー、とか色々聴こえて来ますけど、こればっかりはね。完成への難易度を難易度を下げる為には仕方がない。放課後にミルクホールで出た意見で一気に方向転換したから、HR中の話し合いしか知らない子達には寝耳に水だったはずだ。
勿論、ちゃんと納得してもらうべく、なるべく丁寧に事の経緯を説明したよ?
加えて前案の難点と新案の利点も。
舞台上のパフォーマンスは練習時間が取り辛く、全体の負担が大き過ぎる事、映像作品とすれば練習時間はほぼ要らない上に、何度でもやり直しがきく、つまり一発勝負に出なくて済む。
そんな感じで少し大袈裟に解説して、一応の理解は得られた様に思う。たぶん。
… ”たぶん” が多いなボク。
「撮影に関しては、全員に協力してもらいます。」
「はい。質問いいですか?」
挙手して発言を求めるクラスメイト達。いいねいいね。会議らしくて。どうぞ質問して下さい。
「はい、どうぞ。」
「全員参加が前提なのだから全員が協力するのは当然だと思うのだけど、念を押されるという事は何か特別な事をする予定がある、という事ですか?」
お、良い着眼点だね。鋭い。
「その通りです。と言っても別段難しい事じゃないんですよ。撮影に協力というのは被写体という意味ではなく、カメラマン、つまり撮影者として、です。」
ざわっ…
うん。まぁ当然の反応だよね。
「簡単に言うと、みんなの過す日常を撮影してほしいんだ。例えば休み時間の何気ない会話、移動教室への道すがら、登下校、なんでもいいの。みんなが楽しく過ごしている姿が欲しい。」
あ。着替えシーンとかお手洗いは無しで。
発禁になっちゃう。
「それは、お互いを撮影しあうって事?」
「そう、撮影されるって構えた姿じゃなくて、友達同士の気安いやり取りじゃなくちゃダメなんだ。」
ざわざわ…
「写真ですか?それとも動画?」
「どちらでも。ただ、使う使わないは演出を担当するメンバーで厳選するから、折角撮ってもらったが使われない場合もあるって事は覚えて置いて下さい。」
「もうひとつ、いいですか?」
「どうぞ。」
「それはいつから、いつ迄ですか?」
あ、考えてなかった!え、と新歓祭がGWの手前…前週の土曜日だから、編集やらの日数を取れるのは…
「本日HR終了後から来週末、若しくは再来週の月曜日まで、です。」
おお、なづな!ありがとう!…あれ?!光さん達、さも当然そうな顔をしてらっしゃいますけれど、もしかして考えてなかったの…ボクだけ?!
OH…
あ、今の発音良かったよね!?いぇい!
……コホン。
しかしその通りだ。編集の時間を考えると本筋とする映像の撮影も早々に取り掛からなきゃいけない。今の段階ではプロットすらぼんやりしている状態なんだから。いや、これ、方針変えて正解だったと思うよ?昨日の案だと間に合わなかったかもしれないもん。
やって出来ない事はなかったかもしれないけれど、今回はやって出来なかった時のリスクを取った形だね。
辛い試練を乗り越えた先にある一体感、結束、そういうのも魅力的ではあるけれど、まずは “成功体験” で盛り上げようという感じかな。
はい。詭弁です。
わかってますぅー。
ただ単に失敗して心折れるよりマシなんですぅー。
ほら、有名な言葉があるじゃない。
為せば成る
為さねば成らぬ何事も
為して成ならぬは、やらぬが肝心
ってさ。
上杉…何某さん…だったよね?
あれ?違った?
「他に質問はありますか?」
彩葵子さんは教室を見回して、挙手がない事を確認し
「無いようなので、次に移りたいと思います。」
そうして議事は進み、主に手伝って貰う子をピックアップ。この子達はガッツリ巻き込んでいきますよ。
メンバーの選考基準は、部活動の未所属、又は新歓祭に於いて部活勧誘未参加でクラス優先に出来る事。
つまり昨日、部活勧誘の予定があると言った子8名。委員会活動で放課後に外れなければならないと予想される子も数名。この子達は除外。
桂ちゃんみたいに次期部長候補みたいな子は部活優先にせざるを得ないからね、当然外れている。
それでも10人以上のメンバーを確保出来たんだから上出来だよ。っていうかうちのクラス、部活やってない子多いな。大丈夫なのこれ?
ちなみに椿さんに沙羅さん、凛蘭さんには参加してもらった。
凛蘭さんは手芸部に所属してはいるけれど、特に勧誘活動などはしないらしく、言ってしまえば暇なのだそうだ。で、お手伝い出来るならしたいと申し出てくれたので是非にとお願いした。
彩葵子さんと皐月さん、光さん、菫さんも当然の如く面子に入っております。
「では、以上のメンバーで実力テスト終了迄に演出プランをまとめ、次週週末にかけて撮影を行う。という事でよろしいですね?」
パチパチパチパチパチ。
「それに並行して皆さんにも日常の写真、動画を撮ってもらいますが、これは保坂さんに提出して下さい。随時受付けてますので。」
椿さんが手を挙げて私ですアピール。
まだ全員が全員の顔と名前を把握してる訳じゃないからね。こういうのは大事ですネ。
「では以上です。先生。」
今まで教卓で腕を組んで、どっしりと座っていたマキ先生が、うん、と頷いて教壇まで歩み出て来る。
「昨日の案から随分と削ぎ落とした様だが、これで大丈夫か?鈴代。」
大丈夫かというのは完成させられのか、という問いではあるまい。勝てるのか?と問われているのだろう。
大丈夫だ問題ない、と言いたいところだけれど…
「正直、わかりません…。」
なづな はそう答えたが、全く同意見だ。
クラスの子達は “完成するのか” という質問と捉えているのだと思う。少しざわついている。
「ただ、私達の予想通りに進められれば、充分にいけると思います。彩葵子さん達もいますから。」
「ふむ。諦めたわけではないのだな?」
「「はい。当然です。」」
数人を除いてクラスメイト達がキョトンとしている。
いや、良いんだ。下手に煽って余計なプレッシャーを与える事はない。少数精鋭でちょっと頑張って、みんなには楽しんでもらう。
みんなで幸せになるのはもう少し後のお楽しみで。
「よろしい。ならば昨日言った通り、私も協力させてもらおう。授業風景の方は任せてくれて良い。」
おお!ありがとうございます!マキ先生にも手伝ってもらう以上、しっかりとやり切りますとも!
あ…みんなには言ってないからキョトン顔が増えてる?…ま、まあいいか。
コンコン
ん?
ノック?
「し…失礼します…。」
教室のドアを開けて顔を覗かせたのは、中等部の制服を着た子だった。あのリボンの色は…一年生だね?
「あ、あの、教科書の受け取りに体育館へ向かって下さい、との言付けを預かって参りました…。」
教科書の受け取りの順番が廻ってきたのか。
意外と早かったな…?
いや、タイミング的には丁度良かった…のか?
「ああ、わかった。わざわざすまないな。」
一年生の子は、ホッとした表情で一礼して自分教室に戻ってゆく。まぁ上の学年の教室って、なんか緊張するよね。わかるわかる。
「さて、聞いた通りだ。全員速やかに体育館へ移動する事。ああ、教科書を入れる鞄かバックを持って行った方が良いぞ?」
マキ先生の言葉に従って皆が動き出した。ボク達も鞄を用意して廊下へ……あ、そうだ。もしかしてこれ、使えるんじゃないだろうか?
「なづな。ちょっといい?」
「どうしたの?」
「この移動、撮っておかない?」
「あぁ、そうだね!パイロットフィルムみたいなの作れればなぁって思ってたから…丁度よかったかも!」
パイロットフィルム?!
「そう、こんな感じの映像を作るんだよって、みんなに見せるの。イメージの共有をしておければ良いなって。」
おぉ、なるほど!それは考えてなかった。
「わかった。沙羅さんにも伝えて、撮っておいて貰おう。複数で撮った方がいいよね?」
「うん。じゃあ私は彩葵子さんに。」
パイロットフィルムにイメージの共有、ね。
よく思いつくなぁ。
…ボクも頑張らないと。
ようやく新歓祭が動き出します。




