すくーるらいふ②
「なになに?なんの話?」
「「ごきげんよう、桂ちゃん。」」
「あ。ごきげんよう、てか、おはよう。え、何?なんで急に畏まるの?仲間はずれ?仲間はずれなの?あ、ハブ?ハブってやつ?!」
おおう。テンション高いね。
「違うわよ。先ずはご挨拶、というだけの話。」
クスクスと笑いながら指摘するクラスメイトに、なんだビックリしたぁ、と大袈裟に胸を撫で下ろす仕草をして応える桂ちゃん。うんうん。元気でいいね。
「で?何の話?」
「去年の球技大会の話。なづなさんの超ロングシュートが凄かったって。」
「あ、それ!私見てないんだよね。」
あれ?そうだっけ?
「私、サッカーの試合に行ってたから見れなかったんだよ〜。後で聞いて超がっかりしたんだもん!なんで私が居ない時に限って凄い事するのーって!」
そんな事言われても…。
そもそも、やったのは なづな だからね?
「なづながやった事は、せりの所為!」
何故に!?
「昔っからそうなのよ、この子達。なづなが せりの事を凄い凄いって褒めると、せりが もっと良いとこ見せようって凄く頑張ってさ。せりが なづなを褒めると、恥ずかしいところは見せられないって超頑張るの。結果、大騒ぎになった事もあるんだから。」
「え?何それ。聞きたい!」
ちょっと、みんな?!
過去話はせめて本人の居ない所でですね?お願い出来ませんかね?!居た堪れない!
ほらぁ!なづなが笑顔でフリーズしちゃってるでしょー!ちょっと、大丈夫?!おーい。
「ごきげんよう、せりさん。」
あ、光さん!ごきげんよう!
「あ、光さんおはよー!」
「お、おはよう御座います。」
桂ちゃん、光さんと話すの初めてなはずなんだけれど、旧知の様に声掛けたね。うむ。桂ちゃんの物怖じしないそういうところ、とても好きだ。
皆もそれぞれが挨拶を交わし、再び桂ちゃんの話を聞きに戻ってゆく。
「あの、せりさん…。」
「はい?」
「また何かやったの?」
それはどういう意味かな?
「なづなさんが、固まっちゃっているから…何かしたのかと思ったのだけれど…。」
何故かボクが原因だと思われている?!
「ち、違う違う!初等部の頃の事を掘り出されて、恥ずかしくなっちゃってるだけだから!」
慌てて否定し、ざっくりとした説明を口にしたら…
「初等部の頃の事?」
うおぅ!?菫さんごきげんよう!
光さんとは別の方から反応が返って来たんでスッゴイ驚いた。だから足音!
「ごきげんよう。で?初等部の頃の話って?」
だからね?!それ、本人に聞くかな?!あ、ボクも当事者だとは思ってないのか!?そうだよね、途中からだもんね!でも、お願いだからボクに聞くのはやめて?!
「え…え〜と、今まさにその話題で盛り上がってマス…。」
あそこで、と桂ちゃんを指差し、ボクは話しませんよーって遠回しにアピールしてみた。
「なるほど、ちょっと聞いてくるわ!」
むぅ…そうか、菫さんは中等部からの受験組だったから噂程度も知らないんだっけ。
桂ちゃん、あんまり盛らないでね?
「うふふ、連日大変ね。」
まぁボク達は見た目が目立つからね。
物珍しいだけだって。
実際は大した事ないから皆すぐに慣れてくれるよ。
こんなのは今だけ今だけ。
「そうだといいわね。」くすくす。
…ええ…怖い事言わないで…。
「ごきげんよう。随分と盛り上がっているわね?」
「あ、委員長…彩葵子さん、ごきげんよう。」
あれ?鳩が豆鉄砲を食ったような顔して、どうかなさいましたか?
「…いえ、昨日は “委員長“ って呼ばれていたなと思って…。」
「あ、名前呼び…イヤだった?」
「え?ああ、違うの。大丈夫、是非そのままでお願いしたいわ。」
少しはにかんだ様に笑う彼女には“委員長”という硬い感じはなく、ただの可愛いクラスメイトだ。
真面目な表情がデフォルトだから、というか笑顔が珍しいから?一層引き立つね。
「そ、よかった。」
「それで?何を盛り上がってるの?」
あ、また説明しなきゃいけないのか。
「去年の球技大会の話から始まったんだけれど…今は何を話してるんだろうね?」
「去年の球技大会?」
「なづながスリーポイント決めまくった話。」
「ああ、あれ!あれは凄かったわね。」
おや。彩葵子さん知ってるんだ?
「隣のコートでウチのクラスの試合やってたのよ。私は控えに居たんだけど、コート内の子以外みんなそっちに釘付けだったもの。」
なるほど、その話なら盛り上がるわねと納得顔。
「ねえ、彩葵子さん。」
「何かしら、光さん。」
「教科書配布の事、何か聞いているかしら?」
「……そういえば全く聞いていないわね?」
どうなっているのかしら、と光さんと彩葵子さんが首を捻っている。あれ…?体育館に運び込まれているから、クラス毎に取りに行くって話は…あ。すずな姉ちゃんに聞いたんだっけ?じゃあ、これからマキ先生が説明してくれるんじゃないかな?HRで。
「たぶん、学年毎、クラス単位で全員で取りに行くんだと思う、よ?」
答えたのは、さっきまで固まっていた なづなだ。
いつの間にか復活してる。
「え?そうなの?」
「うん。すずな姉ちゃん…じゃなかった。高等部の鈴代先生がそんな事言ってたから。」
だからHR中に順番が回ってきて、体育館まで全員で移動する事になるんじゃないかな、と補足しておいた。
「ならHRが中断される前に、昨日の案を発表して大筋で合意を取っておきたいわね…。」
決まりきらずに中断すると、また二転三転しかねないからだそうだ。確かにね。
「ああ、あと、昨日の話し合いの纏めは私がするけど、ざっくりとで良いから撮影プランとか、流れみたいなものの説明をして貰えないかしら?…お願い出来る?」
それは勿論。プロデュースはボク達の役目だからね。
当然やらせて貰いますよ。
「助かるわ。じゃあまた後で。」
要は、如何に安価で高効率なアイデアであるかをプレゼンテーションすれば良い訳だから、それ程難しい事じゃない。個々の負担が少ないと知れば協力も得やすいというものさ。
昨日なづながやろうとしてた事とは随分ズレちゃうけれど、マキ先生の言う通り “完成しないのでは本末転倒” なので、完成させる事を第一目標としよう。
当然ながらやるからには現状での最高は目指すけれど。
…って事でどうだろうか?
なづな はどう思う?
「限界ギリギリから削っていく方が良いと思ってたんだけど…ミルクホールのみんなを見てたら収集つかなくなってたから、ね…。」
うん、テンション上がってる時はノリで色々とアイデアを出すけれど、後々落ち着いてみると “これは無理” って協力を渋られるなんて事も有り得る。
それならばいっそやる事を絞って、最低限から始めて盛れそうな部分を盛っていく。
そう言ったボクの意見に、光さんも頷く。
「そうね。私も絞っていった方が良いと思うわ。」
彩葵子さんとも話したけれど皆んなの負担を軽くして、協力してもらい易くする。兎に角、全員参加は必須だから、部活勧誘に参加する子達も参加し易いやり方じゃなきゃいけないよね。
その点、事前に撮影を済ませられる映像作品なら負担は最小だ。…のハズだ。たぶん。
あと問題があるとすれば…
ボクが上手に話せるか、って事だよね〜…。
…まぁ…なづなも光さんも居るし、彩葵子さんも手伝ってくれるだろうから…なんとかなるとは思うのだけれど。
「ねぇねぇ!せりさん!ホントなの!?」
はい?何がでしょうか菫さん?
っていうか何ですか突然。
「初等部の頃に学年別日本記録を出したって話よ!」
ちょっ!?
ちょっと!誰?!そんな事言ったのは!?
そりゃ桂ちゃんだよね!
わかってるよ!
「いや、あの、嘘じゃないけど、正確ではなくてですね…え〜と… 」
「えっと?どういう事?」
ちょっとみんな、なんで集まって来るかな?!
え〜…と。
なづなは…頭抱えて天井仰いじゃってるよ…
わかった、わかりましたよ。説明しますって…。
もー!桂ちゃんってばっ…!
「…走り高跳びでね、なづながタイ記録を出したんだよ。けど、授業中の事だし機材だって記録会用の物じゃないし、そもそも公式記録じゃないからね?」
「つまりホントなのね!?」
いや、だから、初等部5年生の頃の話だからね?
今、学年別記録出せって言われても無理だと思うよ?
「せりさんも、なのよね?!」
…うぅ…そうですね…高跳びはちょっと及ばなかったけれど、800mだったかな?は、そこそこいい線だったと思うよ…?
ボクはどちらかと言うと持久系があってるんだよ。
なづな は逆に瞬発系が得意だね。
「そこまで出来て、どうして陸上やらなかったの?」
「ああ、それはね。この子達日差しに弱いのよ。」
「日差し?」
「そ、日に焼けないで火傷みたくなっちゃうの。ほら、黒くならずに赤くなっちゃう人っているでしょ?ああいう感じね。だから屋外スポーツはなるべく避けてたの。」
おっと、桂ちゃんが説明してくれたよ。
ありがとね。
でもこの程度でチャラになったと思うなよぉ?
っていうか、なんでそんなドヤ顔なの…。
あ〜あ…また盛り上がり始めちゃったよ。
また なづなが固まっってるし…。
早く先生来ないかなぁ。
この話題、できれば早く鎮静化してほしいなぁ…
前回UPした「すくーるらいふ」ですが、実は切る場所を間違えておりました…。
本来の予定では本話34〜35行目
『ほらぁ!なづなが笑顔でフリーズしちゃってるでしょー!ちょっと、大丈夫?!おーい。』
迄が投稿される予定だったのですが…。
またミスりました…申し訳ありません…。
気づいたのが遅くなった為、敢えて修正せず、本話冒頭として投稿致しました。
毎度毎度、面目次第もございません…。




