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おやすみ お姉ちゃん⑧

今はねぇ、パパも帰って来て今日の出来事とか色々お話したり、すずな姉ちゃんが軽くパパの晩酌に付き合ったり、如何にも一家団欒って感じの時間を過ごしているよ。

ボクは相変わらず、すずな姉ちゃんの抱き枕というか、クッション代りというか…そんな感じ。

いやね、何度も脱出は試みたんだよ?

悉く失敗しただけでね。

例えばお手洗いに立ってみたり、例えばパパのおつまみ用意したり、例えば応接間の冷蔵庫にすずな姉ちゃん用のお酒取りに行ったり。

けど、戻って来る度に “ここに来い” と膝を叩いてアピールするもんだから、戻らざるを得ないというか何というか…すずな姉ちゃんの中で、今日はボクが抱き枕になる日だと決定しているらしく、絶対に逃がさんオーラが凄い。

こういう時は なづなも助けてくれないので、諦めて抱き枕になってます。

あ、誤解の無いように言っておくけれど、別に嫌なわけじゃないからね?

(むし)ろこうされるのは好きなんだけれど、今日は何故か過干渉気味でちょっと困惑してるんだ。

お菓子に手を伸ばすと、そのお菓子を奪われて "はい、あーん“ ってされるの。いちいち全部だよ?

べったべたに甘やかされてるの。

困惑はしても抵抗はしないので、ボクもしっかり甘えているのだけれど。


「さて、そろそろオヤスミの時間かしらね。」


む、もうこんな時間なんだ。

ボク達だって明日も普通に学校だしね。今週はHRや健康診断に身体測定くらいしかないし、通常授業は来週からだけれど、春休み中にくるった時間感覚をちゃんと昼型に戻さないと後が大変だ。

以前(ぜんせ)のボクはお腹空いたら適当に食べ、眠くなったら適当に眠ってたし、そもそも睡眠もそれほど必要なかったから本当に昼夜に無頓着だったんだよねぇ。

そんな記憶があったせいで夜更かししまくってた時期があったんだ。初等部の3年生くらいだったかな?

けれど、こっちの体は至って普通の体のはずなので、そんな無理が効く筈もなく。

当然の如く倒れましたよ、と。

まぁ、こっちで身に付いた常識と、そういう経験を経て、夜はしっかり寝る。朝はきちんと起きるという極々当たり前の生活をする様になった訳で。

小さい頃は自分の経験なのか以前(ぜんせ)の記憶なのか、曖昧な部分があったから色々やらかしたっけ。

以前(ぜんせ)の記憶がどういう感じかっていうとねぇ…そうだなぁ、例えばずーっと前にさ、恥ずかしい言い間違いをしたとかない?先生をお母さんって呼んじゃったとか。普段は思い出すような事じゃないのに、ふとした時に記憶が蘇ってめっちゃ恥ずかしくなる事、あるでしょ?

あんな感じ。

よくわからない?

わからないかぁ…。

いやまあ、わかんなくても良いんだけどさ。

っと、また盛大に脱線した。


晩酌に使った食器類はキッチンの流しで水に晒しておけば良いとの事なので、お言付け通りに。

たぶんパパとママは、もう少しお話しするつもりなんだろうね。

ホント仲良しなんだから。

後は歯を磨いて寝るだけなんだけれど…すずな姉ちゃんと なづなの歯を磨いてる姿がね、面白いんだよ。

背後(うしろ)から見てるとさ、そっくりなの。姿勢(ポーズ)が。

手を腰に当てて、足を肩幅に開いて、ガッシュガッシュって。大体タイミングもおんなじでさ。

毎度の事ながら、さすが姉妹だなぁって思うよ。

二人に言わせるとボクもおんなじポーズで磨いてるらしいんだけれど、自覚はないんだよね。


部屋に戻る前に、リビングのパパとママにおやすみの挨拶。

今日は二人とも座ったままなので、いつものハグじゃなくてチークキスで。

チークキス、知らない?頬を合わせるだけのやつ。

えっと、あ。そうそう。チークダンスってあるでしょ?あれも頬を合わせて踊るからチークダンスっていうんだよ。

欧州諸国ではハグじゃなくチークが一般的なんだって。ママがイタリア系だから、両方やるんだって言ってたけれど…そういうものなのかな?


「おやすみ、ママ。」

「ええ、おやすみ。良い夢を。」


2階のボク達の部屋の前まで行って

「ささ、お姉様。どうぞ中へ。」

…すずな姉ちゃん、なんかキョトンとしてるけれど、もしかして忘れてるんじゃないでしょうね?!

お風呂で言ったじゃん、添い寝するって!

伽を所望するって言ってたのに!

ちょっとぉ?!

「…やーねぇ覚えてるわよ。ちょっと記憶の引き出しの奥の方に入り込んで、取り出すのに手間取っただけだって。」

そういうのを『忘れてる』と言うんじゃないですかね?!

「気にしな〜い気にしな〜い。」

そういうと、さっさと部屋に入って行きベットに腰掛けて、ぽよんぽよんと2、3度跳ねた。


「懐かしいわね、このベット。」

「前はすずな姉ちゃんも一緒に寝てたんでしょ?」

「そうよ。あんた達が幼稚舎の頃までだけどね。」

あの頃はまだ “このくらい” だったからって人差し指と親指で2㎝くらいの隙間を作って見せる。

お約束だけれど、そんな小さくなかったから!


すずな姉ちゃんの左右に腰掛けて腕を組み、指を絡ませて肩に頭を預けると、んふーって息を吐いてこれまたお約束の様に満面の笑みを浮かべた。


「ちっちゃい頃のあんた達は、もう、眼窩(がんか)()じ込まれても痛くない程可愛くてね。」

表現!表現がエグい!

「よちよちよちよち、一生懸命私の後をついて来たりしてね。余りに可愛いくて何度吐血したか。」

吐血しちゃダメでしょう!?

「バス停までついて来ちゃった話、知ってる?」

あ、今日ママに聞いた!

「朝バス停まで行ったらね、お姉さま方に『可愛いお供を連れているわね。』って言われてさ、何の事だろうって後ろを見たら、二人してついてきちゃってるんだもの。ホントびっくりしたわ。」

バス停って下のコンビニの所だよね?

「そうよ。今みたいに側溝に蓋もされてなかったし、車通りもそこそこあるのに、そんなところをよちよち歩いてくるんだもの。凄く焦ったんだから。」

…アグレッシブ幼児恐るべし。


「それが今じゃ… 」

「こんなに綺麗可愛くなっちゃって!」

スリスリスリスリ〜!

うひゃー!くすぐったい!


ひとしきり頬擦りを堪能したすずな姉ちゃんが、天井に目を向けながらポツリと呟いた。

「ちょっと寂しいな…。」

すずな姉ちゃんは、ボク達が大きくなるの、イヤ?

「違うわよ?」

でも寂しいんでしょ?

「そうね。」

…なんか、よくわからない。

「でしょうねぇ。私にだってわかんないんだもの。」

「嬉しいと寂しいは表裏一体だからね。理屈では理解してるのよ。“嬉しい反面寂しくもある” なんて普通の事なの。」

「でもね、感情とか感覚の話になるとね、説明出来なくなっちゃうのよ。説明しても理解して貰えない事が(ほとんど)どでしょうね。自分の心の中だけの話だから。」

「…そのうちわかる時が来るわ。たぶんね。」

ふぅん…そんなものなのかな…?

「そんなものよ。」


「なんにせよ、成人したあんた達と一緒にお酒呑むのは楽しみではあるわね。パパもそう思ってるわよ、きっと。」

一緒にお酒かぁ。そういうのも楽しみなんだ。

「すずな姉ちゃん、お酒って美味しい、の?」

お、それはボクも思った。

「ん〜、お酒って言っても色々あるからねぇ。」

「いろいろ?」

「そ、いろいろ。数え上げたらキリがないくらい。」

そんなにあるの?

「あるわよ〜。パパがよく飲んでるビールだって、ラガーとエールがあって、更にピルスナー、シュヴァルツ、ラオホ、ペールエール、ヴァイツェン、スタウト

なんて風に別れるの。」

…待って、何の呪文?

「日本酒だって吟醸、大吟醸、純米吟醸、純米大吟醸、本醸造、特別本醸造、純米、特別純米の区分があって、それぞれ味も香りも違う。甘かったり辛かったりね。」

「甘いの?」

「ジュースみたいに甘いって訳じゃないけどね。あ、でもカクテルとかには甘いのもあるわよ。」

「へぇ、甘いのはちょっと飲んでみたい、かも。」

20歳(はたち)になったらね。」

楽しみにしてるわ、と言ってすずな姉ちゃんは笑った。


「さぁ、そろそろ寝ましょう。明日も学校なんだから。」

「うん。」

ボク達はベッドの左右に分かれて陣取り、有無を言わせず すずな姉ちゃんを真ん中に挟み込む。

「電気消しま〜す。」

はーい。

「じゃ、おやすみ。」

「「うん、おやすみなさい。」」



「……なづな、今日は寝間着、着てるんだ?」

「き、着てるよ?!」

「裸で寝ないんだ?」

「いつも裸な訳じゃないよ?!」

「そうなの?」

というのは、ボクへの問い掛けだ。

「うん、まぁ毎日ではないね。」

「なぁんだ、そうなの。」

「そうなの。(たま)に着てるの。」

「せり?!」

それじゃいつも裸だって言ってるのと同じじゃないって怒ってるけど、その通りじゃん?

「違うよぅ!朝脱げちゃってるだけなんだよ!」

知ってるくせにって言われても、脱いでいるのか、脱げているのか確認した事ないからなぁ…。

「せり だって脱いでるでしょ!?」

そうなのかなぁ?

もしかしたら、寝惚けた なづな に脱がされていたりするのかもしれないよ?

「そ、そんな事、ない…と、思うけど…。」

あ、あれ?自信ないの?!

「それなら朝には真相がわかるわね。私には脱ぎ癖ないから。」

浴衣以外は脱げた事ないから、だって。

「でも、そうか。せり にも脱ぎ癖があるんだと思っていたけど…脱がされていたって可能性があったのか…。」

「ええ…わ、私の所為だったらどうしよう…?」

「ん?どうもしなくて良いんじゃない?」

「え…?良いの?」

「だって、普段脱げるのは なづなと せりだけなんでしょ?なら問題ないんじゃない?」

そ…そうなんだろうか…?

「取り敢えず検証の為にも、さっさと寝ましょ。」

朝、もしすずな姉ちゃんが脱げていたら…ボクか なづな が脱がした可能性が大。

…まさかこんな検証が始まるとは思わなかったけれど、面白いからいいか。

じゃ、まぁ、取り敢えず。今度こそ。


「「おやすみなさい。」」

「うん、おやすみ。」












ようやく、サブタイトル回収出来ましたね。

まさか7回もかかるとは思いませんでした…。

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