ママとおしゃべり②
ママはスゴイ人なんです。
「しっっ…!知らない!」
「え、え?OG?!」
まってまって!どういう事ですか?!海外の学校を卒業してるのに、明之星のOGって!
おかしくない?!
「おかしくないよ?」
そのおかしくない理由ぷりーず!
「まあ簡単に言うと、飛び級したから。」
飛び級…だと?
飛び級したとして、高校を二回卒業って?!
「う〜ん…説明が面倒くさいんだけど…先ず、あっちと、こっちでは新学期の開始時期が違うでしょ?」
4月と9月で半年ズレてるんだよね?
「で、あっちのsenior Hi School、高校は4年制。」
え?あ、そうなの?
「ママが高校生になって直ぐに留学の話があって、春に2年生として編入したのよ。」
そこで飛び級してたの!?
「そ、半年で一年生の取得単位全部取ったから。」
「こっちに2年間いて、卒業式に出て、あっちに戻ったら四年生に編入する訳。こっちの2年間も単位加算されるからね。」
「そしたら半年後に卒業式。」
なんと…そんな方法が。2つの高校を卒業するとか…出来るんだね?大学は入りなおす人って結構いるみたいだけど、高校でも出来るのかな?
それにしてもママってホントに優秀な人なんだなぁ。
なんでパパと結婚して主婦やってるんだろ?
なんか色々やろうと思えば、何やっても成功しそうなんだけれど。
あ。でもこの辺は聞かないよ?だって聞いたが最後延々と惚気話を聞かされるに決まってるもの。本当に延々と。
「ところで、せり。」
「はい?」
「repeat after me.」
「い、いえす。」
「please.」
「ぷりーず。」
「なづな。」
「はい。」
「please.」
「プ、please?」
「…ふむ。」
「え?何?」
「Answer the question.」
「え?あ、はい。」
「Did you enjoy school?」
「あ、うん。楽しかったよ?」
「Was there a cute girl?」
「うん。まぁ可愛い子ばっかりだよ。」
「なづな、今の答えを英語で。」
「え?え、と、They're all cute girls. かな?」
「せり、英語で。」
「ぜあーおーるきゅーとがーるず?」
なんかママが渋い顔をしてこめかみをトントンしてるんだけど、何?ボク何かした?
「なづなは、まぁ大丈夫だけど…せりは発音が壊滅的にダメね。」
うぼぉはぁ!?
「理解は出来てるのよね?」
「…聞き取りは出来てると思うけど…。」
「筆記は出来るんでしょう?」
「うん…書くのは問題なく…。」
「発音だけがド下手クソなのね。」
ぐはぁっ!
ど、ド下手ク…ソ…。
「ねぇなづな。せりってば前からこんなだった?」
「あ〜…どうだったかな…?発音は良くなかったかもだけど、周りの子と大差なかった、と思う、よ?」
「そう?なら、そのうち治るかもしれないわね。」
お、おおぉ…
「あの、ボクの発音ってそんなに酷い?」
「…良くはない、ね。」
「ヒドイわね。」
うごぉっ!!
「で、でも、せりは古文とか詩歌を読むのとか凄く上手なんだ、よ?」
あぁ!なづな!もっと言って!
「あら、そうなの?でも英語の発音はダメよね。」
あぐぁ!?
そ…そうか、ボク、発音下手なのか…。
いやまぁ確かに?そんなに得意じゃないと言うか、ちょっと苦手かな〜とはね、思ってはね?いたんだよ?
ママみたいなネイティブな発音と較べたら駄目なのはわかっていたんだけれど…ド下手クソと言われる程だったなんて…。
「喋ってればそのうち上手くなるわよ。たぶんね。」
…しゃべっていれば…。
…練習しよう…。
「まぁいいわ。随分と話が逸れちゃったけど、そのセリナちゃん?からお呼びがかかったのよね?」
「う、うん、そう。」
「なづなも一緒なのよね?」
「うん。なづなも誘うから言っといて、って。」
「で?どうするの?執行部。入るの?」
「私はやっても良いと思ってる。出来るかどうかはわからないけど、出来るって言ってくれる人がいるんだもん。」
「…ボクも同じ。高等部のお姉さま方も推薦してくれたし、望んでくれる人がいるなら…応えたい。」
「そう。ならやってみなさい。」
ニコニコと微笑みながらママが言った。
「やっぱり姉妹ねぇ。」
「すずな姉ちゃんも推薦だったの?」
「そうよぉ。大人気だったんだから。」
大人気だったのかぁ。
「中等部一年生の時に執行部に入って、そのあとは高等部三年生で引退する迄ず〜っとよ。」
内部進学だから進級試験だけで済んだので、中等部三年生の年末から3ヶ月くらいお休みしてただけだったらしい。流石だなぁ。
この辺りの事は、実はあまり詳しく知らないんだよね。当時聞いたのかもしれないけれど、ボク達が小さ過ぎて記憶に残ってなかったりするんだ。
まぁ、後になって同級生から噂話しとかで聞いて、あ、すずな姉ちゃんの事だ、って理解したりしてね、ほとんどが第三者からの伝聞だったりする。
よく優秀過ぎる兄弟姉妹を持つと苦労するとか、嫉妬したりするって聞くんだけれど、ボク達にはそういうのないよね?尊敬や憧れこそあれ妬んだり僻んだりは無かったね。
なんでだろう?
むしろ大好き過ぎて、何時でも一緒にいたいし、離れてしまう事なんて想像も出来ないんだけど。あれ?もしかしてボク…
シスコン…?
「え?いまさら!?」
なづな?!
「そうよぉ、あなた達お互いが好き過ぎて一寸引くレベルだったんだから。」
そこまで?!
「すずなもあなた達が生まれたばっかりの頃なんて、毎朝ベビーベットから引っぺがすの大変だったんだから。」
すずな姉ちゃん…
「なづなが笑ったから学校休むとか、せりが起きるまで学校行かないとか、指を掴まれて動けないから学校に行けないとか。」
そんなに?!
「あなた達が歩き出してからは、すずなにくっついて全然離れなくってね。ず〜っと後ろに着いて歩いてっちゃうし。」
「やっと学校行ったと思ってたら、あなた達を抱えて帰って来て『バス停までついて来ちゃってた!』って。」
おぉ…凄い幼児だな…あ。ボク達の話だった。
「筋金入りのシスコンよ?」
そ、そっか、生まれてからずっとかぁ。
「私はシスコンって言われても良いけどなぁ。」
シスコンってあんまり良い意味じゃ使わないんじゃない?良いの?
「え〜?だってその程度で せりや すずな姉ちゃんと距離を取るなんて馬鹿みたいじゃない?好きな人の事を好きって言ってるだけだもん。」
いやまあ、うん、そうなんだけど。
「そんな言葉を気にして、外で手を繋いでくれなくなる方がショック、だよ?」
うん。それはショックだ。
泣いて転げ回る自信がある。
「そうそう。あなた達はそれで良いのよ。どんな形であれ姉妹仲が良いのは喜ばしい限りだわ。」
ママがそう言ってくれるのは凄く嬉しい。
こんな変な娘なのに、変だともおかしいとも、育て方を間違えたとも言わない。ただ、幸せであれば良いって言ってくれたんだもん。
「すずな姉ちゃんだけじゃないよ?ママの事だって大好きなんだよ?」
「私だってそう、だよ?」
「知ってるわよ。けどね、愛の大きさならママだって負けてないんだからね?」
両手でボク達を抱き寄せて、ポンポンと背を叩く。
「ママの可愛い娘達。あなた達の幸せがママの幸せなの。それは忘れないで。」
うん…ありがとうママ。
まるで外国映画のワンシーンの様な触れ合いだけれど、ママは日常的にこういうセリフを言う。
時には気恥ずかしい気分になる事もあるけれど、ママのストレートな愛情表現は、流石外国育ちって感じで結構好き。
まぁ、そのママの影響で、ボク達の愛情表現もド直球らしいけれどね。
ママがボク達からスッと身体を離し、まじまじと顔を眺めた後、ほんの少し視線を落として
「…大きくなったわね。」
どこの事を言ってるんですかね!?
もーーー!もーーーったら、もーーー!
すずな姉ちゃんと同じ事言ってるよね?!
ほぉーらぁ〜、なづながTシャツの裾を引っ張って照れちゃってるじゃん。
そーゆうとこも好き!
ケラケラと笑いながら立ち上がったママが
「今日、何食べたい?」
正直ママの料理は美味しいので、何でも良いのだけれど…こういう時の ”何でも良い” はかえって迷っちゃうらしいから…
「…ハンバーグ?」
「あ!豆腐ハンバーグ!」
「豆腐ハンバーグ…ふむふむ。」
腕を組み顎に手を当て試案するポーズ
「よし。それじゃ買い物に行くとしましょう。」
一緒に来る?って聞かれたから、行くって答える。
「よろしい。じゃ、着替えてらっしゃい。」
流石にその格好じゃマズイでしょって。
おおぅ、確かに。ロングTの下は下着一枚でした。
2階の部屋に行って着替え…う〜ん。
きっちり着替えるのも面倒だし、コレでいいかな?
選んだのはゆったりしたソフトデニムのオーバーオールと、お揃いのキャップ。
クルリと髪を纏めてキャップを被れば、あら不思議。
アメリカンな双子コーデの完成ですよ。
階段を降り玄関へ向かうと、ママが先に待っていた。
「お待たせ〜。」
ボク達を上から下まで見回して、指をクルッと回す。これは、回って見せろという事か。
その場でくるりと一回転。どや。
「うん、可愛い可愛い。」
褒められた。えへへ。
ボクとなづなはママの左右の腕に絡みつく様に腕を組んで手を繋ぐ。
「よっし、それじゃ行こうか。」
「「うん」」
ママは留学生扱いとはいえ、学年末まで在籍していたので卒業証書を受け取っています。
逆の場合もあって、9月にあちらで卒業式に出席して、帰国後3月にこちらの卒業式に出るという子もいます。




