うぃず ちぇるぱぁそん
後半部分
次話の冒頭の予定だったエピソードを追加。
バランス的にこちらに纏めた方が良いと判断し、加筆という形で統合しました。
「映像主体にするとして、そちらも せりさん達がメインやるのが良いという意見も多いのよ。」
「ボクらは構わないけれど、それじゃつまらくないかなぁ。折角ムービーにするんだから、みんなでワイワイ騒いでる絵面の方が “学校生活楽しんでます” って感じで良いと思うんだ。」
「…なるほど、その通りだわ。」
「それにほら、こっちの案、良いと思う。」
「教室、廊下、特別教室等で踊る子を変える?」
「うん、最初に言った順番にってやつ。こう、タッチして人が入れ替わっていくとか。そんな感じ?」
「それなら個々の負担も少ないわね…。」
「それに、この案なら別に踊らなくても良いんだよね。」
「…そうか、ワイワイ楽しくというなら、歩いてようが走ってようが、スキップしてても、ただ談笑しているだけでも楽しそうなら何でも良いのね?」
「いぐざくとりぃ。」
「イグ…なんて?」
「ナンデモナイデス。」
「そ、そう?え、と。じゃあ…こっちの案なんだけど… 」
ボクは現在、委員長とお話し中。
直接お話しするのは初めてじゃないかな?
まだ少しだけだけれども、話してて思ったのは新歓祭への取り組み方の本気度が高いって事。かなり真剣にやろうと思ってるみたい。
ボクもやるからには本気でやるって宣言してるからね。良いものにするべくとことんお付き合いしますよ?
今迄に出た案の取捨選択とブラッシュアップ、必要なら方向性の修正もしないといけないけれど、大まかな全体像は見えて来た。
これなら部活組も含めて、全員参加が容易だし一人一人に掛かる負担も少なくて済む。制作期間も短く出来るし、最初の案にあった様な衣装の心配もない。
何より楽しい。
今のところデメリットらしいデメリットは見当たらない。強いて言えば授業風景のスチールが撮れるかどうかの問題だけれど、それは今、これからの交渉にかかっている訳で。
まぁ最悪、授業風景が無くても作れるのだから大した事じゃない。
「せりさん?聞いてる?」
歩きながらの会話だから、余所見してる様に見えたかな?大丈夫、聞いてるよぅ?
「そう?でね、順番としては… 」
委員長が手元の議事録、というかほとんど乱雑なメモなんだけど、それを示しながら意見を述べていく。
「うん、ボクは良いと思う。」
「よかった。大すじはこれで大丈夫そうね。」
あとは細かい部分を詰めていくんだけれど、ここから先はクラスでの話し合いより、少人数で決めてしまった方が良いかもしれない。
「撮影担当と監督は決めた方がいいね。今迄みたいに途中で、ああしたい、こうしたいって言い出すとキリがないもん。」
「同感だわ…誰が良いかしらね?」
「映像関係に造詣の深い子かぁ… 」
心当たりないなぁ…。
ていうか、ボク、クラスメイトの半分くらいしか交流がないんだよね。交流があった子達だって、何年も前にって子が結構いるんだから。情報が古過ぎて役に立たないよ。
「マキ先生なら知ってるかもしれない、よ?」
ボク達の後ろを歩いていた なづなが、そう言った。
「映画好きの子とか、音楽好きでMVをよく見る子とか、マキ先生なら把握してるかもしれないよ?」
おお、その可能性はあるね。
「あくまで ”かも” だけど、ね。」
いやでも、どうせマキ先生の所に行くんだから、ついでに聞いてみても損はない。知っていれば万々歳、知らなくても状況が悪くなる訳じゃない。
「聞くだけ聞いてみよう。」
「そうね。それが良いわ。」
相談しながら歩いていたので相当ゆっくりだったはずなのだけれど、気がつけば職員室は目の前だ。
今日、ここに立つの何回目だろ…。
「失礼します。」
ノックして扉を引けば、今回はすんなりと開いた。よかった、流石に誰も居ないという事は無い様だ。
なづなも 心なしかホッとしている様に見える。
それで、えーと、マキ先生は…あ、いた。
「マキ先生、お忙しいところ失礼します。」
「うん?どうしたお揃いで?」
「はい、新歓祭の事で2〜3ご相談が…。」
委員長が、授業中の風景を撮影したいので許可が欲しいこと、その撮影を副担任の先生にお願い出来ないかということ、ウチのクラスで映画好きの子、若しくは映像関係に詳しそうな子に心当たりはないだろうか、と立て続けに質問した。
するとマキ先生、
「構わないぞ。授業風景なら私が撮ってやる。」
「え!?先生が撮ってくれるんですか!?」
「なんだ?不満か?」
「とんでもない!」
願ったり叶ったりだ。
「そうだな、HR中であれば席を離れての撮影も許可しようか。当然だが事前に申告する様にな。」
おお!なんてありがたい!
「そのかわり、私を撮る時はなるべく綺麗に撮ってくれよ?」
「あ、それなら大丈夫、です。」
「どう撮ってもマキ先生は綺麗ですから。」
ボクとなづなが間髪入れずにそう答えたら、ちょっと驚いた様に目を丸くした後で、くっくっと肩を揺らして笑った。
「そうか。そいつは嬉しいな。」
別にお世辞のつもりじゃないんだけどなぁ…。
なにはともあれ、難関かと思われていた撮影の問題はあっさりとは解決。あとはクラスメイトの手持ちを掻き集めれば充分だ。と、思う。
「映像に造詣の深い生徒か…。」
最後の質問に関してはマキ先生も心当たりがないのだろうか、クラス名簿を開いて名前を目で追っていた。
「ちょっと、わからんなぁ… 」
そうですかぁ…まぁそう都合よくはいかないよねぇ。
明日HRの時にでもみんなに聞いてみようか。
「ま、問題なかろう。」
はい?問題ない、ですか?
「うん?何かあるのか?」
監督とか演出とか、出来そうな人を探すという意味で質問をしたのですが…。
「鈴代。おまえ達がやれば良かろう?」
ぼっ!?ボク達?!
「おまえ達が中心になって、という話だったはずだが?違ったか?」
…いえ、そう言われました。
「なら、まあやってみれば良かろう。意外と面白い発見があるかもしれんぞ?」
面白い発見、ですか。
「…わかりました。ありがとうございます。」
「田村、手塚。ご苦労だが、お前達も一緒に仕切ってみると良い。先々役に立つと思うぞ。」
「はい。やってみます。」
うん、と頷いてマキ先生はさらに続ける。
「よろしい。新歓祭は新学期最初のイベントだからな、楽しむと良い。もっとも、それ以上に新入生を楽しませねばならんがな。」
「まぁ新歓祭までは、まだ時間はあるからな。じっくりとやるが良いさ。その前に実力考査がある事も忘れるなよ?」
う、そうだった。来週頭に試験があるんだった。
といっても成績には関係なく、先生方が生徒達の学習理解度を計るための試験だからあまり気負う必要もない。ちょっとおさらいしておけば充分だと思う。
”試験“ というだけでイヤな感じではあるけれど。
「では先生、ありがとうございました。」
「失礼します。」
「ああ、気をつけてな。」
職員室から退出したところで溜息を一つ。
「あ〜…ヤブヘビだったかなぁ…。」
「仕方ないよ。みんなに協力してもらおう。」
「…委員長ぉ〜… 」
「わかってるわ。当然協力するわよ。」
ありがたいデス。
…さて、どうしたものか。
映像主体にシフトして、ダンスも削り、絶対必要な衣装も、必要数が大幅に減った。コストは相当に下がったはずなんだけど…やっぱり演出の様な部分を担ってくれる人が欲しいなぁ。
「明日、希望者募ってみる?」
「そうだねぇ…。」
“やりたい人” と “出来る人” は必ずしも同じではないからなぁ…。かといってやりたい人にやらせないってのも違うよなぁ…。
「別に何人いたって良いんだから、演出チームって事で良いんじゃない、かな?」
「それに、後から参加したいって子も居るかもしれないわよ?」
なるほど。
「じゃ委員長、明日はそれも含めて細部を詰めていくって事で良いのかな?」
「そうね。大筋はさっき話した形で行けそうだし。今日のHRで話してた事は影も形も無くなっちゃったけどね。」
「それはまぁ…ごめんね?」
「初期案なんてそんなものよ。」
委員長は肩を竦めて笑う。
「じゃあ、今日はお疲れ様でしたって事で。」
「そうね、また明日、ね。」
委員長達は鞄を取りに教室に戻るらしく、職員室前で別行動になった。
お疲れ様〜、また明日ね〜。
委員長と副委員長に手を振ってご挨拶。
2人も手を振りながら教室の方へ向かって行く。
なんとなく二人を眺めていたら、あれ?
副委員長、委員長の横を歩いてるね?
初めて見たよ?並んで歩いてるの。
「副委員長、手塚皐月さんね、委員長…彩葵子さんと幼馴染なんだって。」
へぇ、それは知らなかった。
でもそれなら尚更、隣を歩いてるのが珍しいってのはおかしな気がするんだけど…?それだけ近しいなら、一歩下がって歩くとかしないんじゃない?
「いろいろあるんだよぅ。」
ふうん…?
「…たぶん、だけどね?」
うん?
「皐月さん、片思いなんじゃない、かな。」
ん?ああそういう…
………え…!?
あ?…え?!
ああ!そういう!
あ、あぁ〜。そうか、なるほど〜。
なづなの方を見たら指を口に当てて、内緒だよって。
「たぶん、なんだから人に言っちゃ、メッ、だよ?」
うんうん。わかってます。わかってますとも。
そっか、なるほどね。それで副委員長を引き受けたのか。一緒に居たいから。
そっか。
一緒に居たいから。
凄く、よくわかる。
委員長
田村 彩葵子さん(たむら さきこ)
誠実で優しいが、若干融通の利かない面がある。
「やるなら本気で」と言った事で せりを気に入った様子。
副委員長
手塚皐月さん(てづかさつき)
事務処理能力は高そう。
その他はこれから徐々に。




