みるくほーるみーてぃんぐ②
「……と、いうのは如何だろうか?」
おお…と声が上がる。
「…いっぺんに見せるんじゃなく順番に、ね。」
「確かに、言われてみれば何に注目して欲しいのか全然わからないわよね…。」
「私達がやりたい事なだけで、何を見てほしいかは考えてなかったわ…。」
みんなが反省を口にし、じゃあどうしたら良いのかという事を話し始める。人数が居るから纏まり難いだろうけれど。
なづなが 少し難しい顔をしてる。まぁあの顔の理由はわかってる。たぶんだけど。
みんなから少し離れた所に移動して腰を掛けている なづなのの側へ行き、机に寄り掛かる。
「ごめんね。余計な事したかな?」
「…ううん。こっちの方が良いと思う。」
思惑とはズレていたみたいだしね。それに、たぶん間違ってないと思うけれども、一応答え合わせはしておきたい。
「映像…動画に特化させようと思ってたでしょ?」
「…よくわかったね?」
やっぱり。
「わかったのは、ついさっき。ボクも舞台の方は要らないんじゃないかって思ったんだ。」
「今思えば妙に煽っていたのも なづな らしくない。」
「煽るだけ煽って意見を出し尽くしたところで、無理を指摘してバッサリ切らせる。それで自分達で作っているという意識と責任感を持ってもらう。」
「そんなとこでしょ?」
「…うん…もうちょっと上手に出来るかなって思ってたんだけど。難しいねぇ。」
「最初からそのつもりだったの?」
「う〜ん……最初は本気でやろうと思ってたんだけどねぇ、段々収集つかなくなっちゃって…正直予想以上だった。」
「言ってくれれば良かったのに。」
「言うタイミングがなかったんだよぅ。」
こんな風にひそひそ話をしていると本当に悪巧みしてたみたいじゃないか。別に陰謀巡らせた訳でもなければ、騙そうとした訳でもないんだけどね?
「せ、せりさん、あの… 良いですか?」
「あ、沙羅さん。さっきはありがと…う?」
トテトテと近付いてくる小柄な少女に目をやれば、なんだか耳まで赤くしている。
「どどどどうしたの?!大丈夫?!」
「え?え、大丈夫、です、よ?」
「だって、真っ赤だよ?熱があるんじゃ!?」
「え、あ、これは、違うんです、平気です、」
自分の顔をペタペタ触って激しく動揺してる。
あれ?つい最近同じ様な場面を見た気がするぞ?
…とりあえず座ってもらって、落ち着こうか。はい、深呼吸して、ひっひっふー。どう?落ち着いた?
「…平気で、す、」
う〜ん。あんまり平気そうには見えないけれど…本人が大丈夫と言うのなら、まぁいいかなぁ…。
「で、どうしたの?」
「あ、はい、あのですね、さっきの、衣装の事、なんですけど、」
「うん、凛蘭さんの提案してくれたやつだね。」
「ええ、その、よければ一度、凛蘭さんとお話しして、頂けないかな、と… 」
おや。これはまた至極当然な提案が来ましたね。
沙羅さんの予想が当たっているなら、言われずとも凛蘭さんとは相談しなきゃいけないと思ってたしね。
「それは、もちろん。」
「…そういえば凛蘭さんは来てない、ね?」
「彼女は、その、後ろから入ってくる、に投票してたので…。」
後ろから入ってくる?
に、投票?
なにそれ?
「…あ、え、と。ミルクホールのドリンクチケット取得を、その…… 」
…賭けてたのね。なるほどなるほど。
で、後ろから入ってくる、というのは?
「え、と、先ず、戻ってくる、来ないで分かれて… 」
ほうほう。
「戻って来る派で、どうやって入って来る、かって、話になって… 」
「前から堂々と、後ろからこっそりと、ドアの前で迷って…なかなか入って来ない派、と、」
「戻って来ない派… 」
「4つに分かれて、その、投票をしたんです… 」
賭けてたって言ってもいいよ?
ボク達が戻って来るかどうか、更に戻った場合、教室に入るかどうか、入った場合は如何入るか。こっそりか堂々と、か。全部対象だったと。
いきなりエンターテイメントのネタにされるとは…なるほど人柱ね、よく言ったもんだ。
マキ先生やるなぁ。
「今回ミルクホールに来てるのがクラスの半分くらいだから、残りの半分が三つに分かれたのか…。」
意外と偏ってたんだね。
「それは椿さんの所為ね。」
うわぁ!?びっくりした!
光さん!?お願い、足音たてて?全然気付かなかったよ?!…光さんが凄いのか、ボクが鈍いのか。
あっと、今はそれはいいや。
「椿さんの、所為?」
なづなが聞き返してる。
「最初は、おおよそ均等に割れていたの。」
まぁ普通はそうだろうね。
「マキ先生が、“何故そう思うか” って何人かに質問したのよ。ね、沙羅さん?」
「え?ええ。皆さん、自分ならそうする、って答えてました…。」
「でも、椿さんが言ったの。」
「 ”なづなさんは入って来るタイプだけど、せりさんは意外とシャイなので、入ろうか入るまいか迷うタイプです“ って。」
椿さん?!
「こっそり入ろうとして、なづな さんに止められて、結局入って来れないんじゃないか、って主張していたわ。」
おぉ…完全に読まれている。確かにそんな流れだった気がする…椿さん侮り難し…!
「私と菫さんは、最初 “堂々と入ってくる” と思っていたのだけど、椿さんの意見で趣旨変えしたの。」
正解だったわ、とクスクスと楽しそうに笑う光さん。
ミルクホール集合の件を教室で聞いた時、菫さんが言い難そうにしてたのはコレがあったからかな?
「桂ちゃん居ない、ね?」
あれ?そういえば居ないね?
桂ちゃんが居ないって事は…外したんだ。
えー、1番の幼馴染が外しちゃ駄目でしょ〜。
逆の立場だったらボク達絶対当ててるね。
桂ちゃんは堂々と入ってくる一択なんだけどさ!
「桂さんなら当ててたわよ?」
当ててたの?!
「部活行かなきゃって言ってたんじゃなかったかしら?」
「あ、なるほど。ありそう。」
あれ?でも、来なかったら権利放棄と見做すとか言われなかったっけ?部活行ったんだ。
確かに、部活っ子だからなぁ、桂ちゃん。
初等部の頃からずっと、中等部に上がったらテニス部入るんだって言ってたもんね。
今年も真っ黒に日焼けしてキラキラ笑っているんだろうなぁ。ボク達は陽射しに弱い方だから、その辺は羨ましいと思っちゃうね。
「沙羅さんも入って来ないに賭けたんだ?」
「は、はい、その、すいません。」
別に謝らなくてもなくても。
あ、でも恐縮して縮こまってる姿も可愛いね。
なんか兎みたい。
「そうそう沙羅さん。さっきのスチール挿入の案なんだけど、あれは新しく撮るのもあるんだよね?」
「あ、はい。そうですね。クラスの、が欲しいです。」
「去年の文化祭とか、体育祭のも使うのよね?」
「はい、クラスの方達の写真を、持ち寄って貰えれば、と、思ってます。」
出来るだけ楽しそうな物を、だそうだ。
「なら、準備しているみんなを撮っておいたらいいんじゃないかしら?」
光さん、いいねそれ。
沙羅さんも頷いて賛同している。
「じゃ、早速あれ、撮っておこうよ。」
ワイワイと意見を出し合っている集団を指差して、スマホを振って見せる。
「せり、持ってきてたの?」
「も、持って来ただけだよ?電源切ってるから!使ってないからね?知ってるでしょ?!」
ちょっと責める様な視線を向けられて、慌てて言い訳を口にする。
校則違反なんてしてないよ?ホントだよ?
使ってたら今日あんなに苦労しなかったでしょ?!
そもそも、ずっと机に入れっぱなしだったんだよう。
電源を入れてカメラを起動する。
先ずは試しに
カシャ
なづなを撮ってみた。うん。綺麗に撮れる。
びっくり顔も可愛い。
沙羅さんと光さんも
カシャ
…お?おお?
なんか絵になるなこの二人。同い年には見えないところがまた…
けどなぁ…決定的に写真のセンス無いなボク。
「光さん。」
「はい?」
「写真、得意?」
「…いいえ。たぶん、良くて人並み程度よ。」
なづなに視線を向けると、ぶんぶんと首を振る。
だよねぇ。
「沙羅さん、お願い出来る?」
「わ、私ですか?」
「うん、是非。」
「…わかり、ました。」
ボクが差し出したスマホを手に取って、みんなの所へ向かって行く。今のみんなを納める為に。
ボク達がミルクホールに来てもう結構経つ。
ひと段落したら委員長に伝えておかないとね。
あんまり遅くならない内に帰りなさい、って。




