みるくほーるみーてぃんぐ
申し訳ございません。
私の我儘ではありますが昨夜投稿した「みるくほーるみーてぃんぐ」は一度削除させて頂きました。
最初に投稿したものでは話を続ける事が難しくなると判断し、中盤以降を完全に書き直し再投稿させて頂く事としました。。
具体的には沙羅登場以降を全てです。
もし、改稿以前の物を読んでしまった方がいらっしゃいましたら、どうか、以前のものはお忘れ下さいますよう、伏してお願い申し上げます。
「なづなさん の全部やろうという案なんだけど…。」
「具体的なビジョンはあるのかしら?」
全部って言った時点で大体みんなが想像したと思うんだけど、その想像が全く同じモノではないだろうからね。ボク達の案は提示しておきたい。
それが多少難しいと思われるものでも。
「勿論。」
ボク達は、ボク達の考える “出来る事” をひとつひとつ、並べていく。副委員長、最初は一生懸命ノートに書き留めていたんだけれど、途中からちょっと手が震えていましたね。
無理もない。
なにしろ今述べているのは、無理無茶無謀に片足突っ込んだ様な理想形だ。正直出来る訳がない。
「無茶よ!」
委員長が悲鳴の様な声を上げるけれど、そんな事は百も承知なんだよ。でもね、これを示しておくのは必要なプロセスなんだ。ここからボク達が実現出来るであろうところまで削ぎ落としていくんだから。当然、可能上限ギリギリのところまでしか落とさないけれど。
くっくっく。みんなで幸福になろうよ。
「わかってる。これはあくまで理想だから。」
「でも、絶対無理じゃない、よ?例えばここ、衣装の部分。合唱の子達は前列だけエプロンドレスを作って、後列は色だけ揃える、とかね。」
「手の込んだ衣装はボク達の分だけで良いんだよ。自前の物使っても良いしね。」
「でも、それじゃ… 」
「使える物があるなら、私物だろうが全部使う。」
「やるからには全力、だよ。」
最初に提示したものからハードルを落とした案を提示して、少しずつ現実的な実行可能な形に落とし込んでいく。譲歩的要請法ってやつだね。実際はちょっと違うけど、そこはご愛嬌。
「う〜ん…これなら、まぁ…。」
「出来なくはない、かしらね…?」
「踊る人は早急に決めないと、練習が… 」
「衣装は家庭科得意な子かき集めてなんとか… 」
「カメラ、はスマホでも大丈夫よね…?」
「編集なら、私、出来るわ。」
おぉ?
いつの間にやらボク達の周りに、みんな集まってるじゃない?いいね、いいね。やる気があって。
「あ…あの、映像の事なんですけど… 」
後ろの方から声を上げたのは…手を挙げているあの子か。えっと確か、沙羅さん。
ちっちゃくて儚げで、名前通り愛らしい子だ。
ん〜…個人的には “沙羅” というより “姫沙羅” かな、と思ったりするんだけれど…よし。心の呼び名はヒメちゃんにしよう。
「沙羅さん、こちらへどうぞ。」
委員長が手招きしてテーブル前を示す。
歩み出てきたヒメちゃ…沙羅さんを見て驚いた。
ちっちゃい。思ってたよりずっと。
え、ボクも大きくはないけれど、そのボクが見てもちっちゃいぞ?顔立ちも幼いから初等部の制服着せたら、そのまま通えちゃいそうだし。凄いな、美人でも美少女でもなく “可愛い” というカテゴリーの子だよ。
おっと、また脱線しちゃった。
「映像は校内の紹介にしたらどうでしょう…?」
教室とか校庭も含めて、図書室や美術室、家庭科室、ミルクホールや講堂に体育館。そういう校内の紹介映像…なるほど、新歓祭らしくて良いね。
「校内各所で踊って、そうね…例えば踊ってる子がカメラ前を横切る度に場所が変わるとか、かしら?」
よくある映像表現ではあるけれど、よくあるって事はそれだけ優秀な表現な訳で。予想以上に映えるかもしれないし、カット毎に撮影出来るから、上手くやれば時間の短縮にもなる。
あくまでも上手くいけば、の話だけどね。
うんうんと頷きながら副委員長がノートに書き留めていく。さっきより筆が軽いね。
「校内の紹介映像にするなら、映像でのダンスは制服のままの方がそれっぽいんじゃないかな?」
「そうだね…舞台との差別化図れるし、良いかも。」
「なら、かえってちゃんとしたダンスじゃない方が楽しそうに見えるかもしれないわよ?」
「そうね、しっかり踊るのは数人に絞って、残りはにぎやかしみたいに扱った方がダンスが映えると思う。」
「クラス全員で整列して踊るのをさ、屋上から撮影したり出来ないかな?」
「それなら踊ってる人の間をカメラが通り抜けて行くとか。」
出るわ出るわ。
中には実現が難しい案もあるけれど、色んな案が出るもんだね。実現出来れば繋ぎ方次第では相当面白い映像になるんじゃないかな?
でもなぁ…
やはり意見は出るが、段々とエスカレートしていってしまうね。それはプロでも無理なんじゃないかという意見も散見される様になってきた。
「ごめん、ちょっとお手洗い。」
一旦離脱して整理したい。
まず、映像のアイデアは出尽くしたと思っていい。
むしろ盛り込み過ぎだ。もっとシェイプしなきゃいけない。このまま盛り盛りで行くなら映像作品として特化して、ダンスやら合唱は排除するべきだ。
そうでないと視点が散漫になって、作品として破綻する。
何を見せたいか
みんなの中で、これが定まっていないんだ。
だから、より派手に、よりインパクトがある方に、意見が流れていく。
おっかしいなぁ…
失敗したかなぁ…
最初の少人数だった時は上手く行きかけてたのに…沙羅さんの意見までは良かったんだけどな。
一度ひっくり返すか?
ベターな意見を提示して手伝ってもらう方向に持っていく?
いやダメだ。
それじゃ皆んなで作る事にならない。
ボク達の意見に従ってもらうだけになっちゃう。
たぶん、なづなも似た様な思ってるんじゃないだろうか?みんなが意見出してるときは黙ってたもんね。
口を出していいか迷っちゃったんだろうな。
どうしたもんかなぁ。
鏡の中の自分に問うても答えなんて返って来るはずもない。
深い溜め息を吐いて項垂れていたら、ボクの背中側にあるお手洗いのドアが開いた。
顔を上げると入って来た子と鏡越しに視線が合った。
「あ…せりさん… 」
沙羅さんだ。
ブカブカの制服が可愛さを引き立てているね。
ピッタリのサイズが無かったんじゃなくて、大きくなる前提でワンサイズ上のを着ているのかな?
うん可愛い。ナデナデしたい。
トテトテと隣に来て、スカートのポケットから出したハンカチを口に咥えて手を洗う。
…あざとい!
かわいいかよ!
なんとなく見つめてしまっていると、視線に気付いたのか鏡越しにチラチラとこちらを気にしている様子だ。
「あ、あの…?せりさん…?」
はっ!ごめん、可愛かったから、つい。
「…かっ…!」
ふぁ〜って赤くなって、モジモジし始めるその仕草がいちいち可愛い。
小さなものはそれだけで可愛いと言うけど、真実かもしれない。守ってあげたい欲求…庇護欲というものだろうか?沸々と沸き上がってくるんだよ。
「なんか、すごい事になっちゃいましたちゃいましたね…。」
そうだねぇ。ちょっと予想外に盛り上がっちゃって困ってるんだけどね。
「…予想外、なんですか?」
「うん。映像偏重になっちゃってるというか、映像を見せるのがメインなら、舞台のダンスや合唱はむしろ邪魔なんだよね。」
「邪魔… 」
「そう邪魔。どっち見ていいかわかんないでしょ?」
映像を見たいのに、その映像の前でうろちょろされたら気になって集中出来ないんじゃない?
舞台の出来が良ければ、何方をメインに据えているのかわからなくなるし、出来が良くないなら無い方がマシ。そもそも2つやる意味がなくなる。
「けど、映像のアイデア自体は良いから、いっそ映像だけに絞った方が良いんじゃないかな、ってね。」
映像作りだけでも全員参加は出来るんだから、変に拘らなくても…衣装の準備とかも省けるしね。
「で、でも、それだと凛蘭さんの衣装のアイデアが… 」
「そうなんだけどね…。」
凛蘭さんは “別の何か“ とは言ってたけど具体的には何も言ってなかったよねぇ…。
……言ってなかったよね?
「…沙羅さん、凛蘭さんが提案したかった衣装が何か知ってるの?!」
「い、いえ、その、たぶんなんです、けど… 」
知っているんじゃなくて、予想出来る、なのか。
それでそれで?
「ロリータじゃないかな、と。」
「ロリータ?」
あの、ヒラヒラフリフリの?ヘッドドレスとかニーハイの?お人形さんみたいなアレ?
「前に凛蘭さんが、鈴代さん達に着せたいって言ってたんです。絶対似合うから…って。」
おおぅ…。
確かに眼を引くのは間違いない。
舞台を暗くして、白系のロリータコスチュームなら、浮き上がる様に目を引けるはずだ。
「でも…それだと余計に視線が分散… 」
いや待てよ…同時にじゃなく、順番にならどうだろう?一度衣装で注目を集めて、映像が始まったら捌ける、とか。注目を集め興味を引くだけなら踊る必要はない。静の状態で目を引いて、動の映像で其方に注目させる。
…これなら視点の分散はない。
順番に視線の誘導が出来る。
みんなのアイデアをそのまま活かせる。
いや、ちゃんと詰める必要はあるけれど、良い案なんじゃないか?
「せりさん…?あの、大丈夫ですか…?」
声をかけられて顔を上げたら、オロオロしている沙羅さんが目に入った。可愛い。
「沙羅さん。」
「は…はい。」
「ありがとう、いけるかもしれない。」
思わず沙羅さんに抱きついたんだけど、小さくてすっぽり覆えてしまえそうだ。サイズ感が絶妙だね。
「わわわ、せりさん、せりさん、あの…!」
沙羅さんの肩を掴んで、身体を離し
「これなら、なんとかなるかも…みんなの所に行こう!」
沙羅さんの手を引いて、お手洗いから飛び出す。
先ずは提案しなきゃ。
今迄のアイデアを踏まえた上で一度解体する形になるけれど、これなら目指していた路線から大きく逸脱はしていない。少し組み替えるだけだ。
思い込みで、なんとなく来てしまったミルクホールだけれど、来て良かったかもしれない。
未だワイワイとアイディア出しを続けているみんなに近付き
「ちょっと聞いて貰っていいかな。」
立川沙羅さん
童顔低身長のお嬢さん
よく小学生に間違えてられるが、誕生日が早い為クラスでは一番年上だという。




