ほわいどんちゅーだんす⑰
「じゃあ行くよ〜…っさん、はいっ、」
なづな の拍手に合わせてステップを踏む。
ルーティンは最初にやったものと同じ、難易度の低い簡単なステップの組み合わせだが、それだけに誤魔化しが効かず出来不出来が顕著に顕れると言っても良い。
…らしい。
不出来な動きなんて自分以外では見た事ないから、ホントかどうかは知らないのだけれど。
なづな の言っていた入りと抜き、はねとはらいを意識しつつも、停める事なく動きを繋げ続ける。
…いや、これ結構難しいぞ?!
ちゃんと意識していないと、ついつい溜めを作ろうとしちゃうんだよ。流すべきところで身体が勝手に一瞬、踏ん張っちゃいそうになるんだ…クセって怖いな?!
まぁ気をつけてさえいれば、どうにかなるのだけれど…外から見てどの程度滑らかに動けているのかっていうのは当然ながら判らないんだよなぁ。
自分では…う〜ん…微妙にぎこちなくなっているような…そんな気がする。
「…ねぇ、せり。」
うん?
なぁに?
「クセを気にしないで前のまま踊ってみてくれる? 」
はぃ?!
今そのクセを矯正しようと躍起になっているっていうのに、今度はクセ全開で踊れと? なんでまた?
「ちょっと確かめたい事が、ね。」
ふむ?
今のボクのステップ…それ以外かもしれないが…気になる事があったって事? それが何か教えてくれないのは…まぁ言っちゃったそれを意識しちゃうから確認出来なくなっちゃうか…。
しかし以前のステップか…一度なおそうと意識しちゃってるからなぁ。 そりゃあやって出来ない事はないはずだし、絶対に無理って程のものではないだろうからね。一応やってはみるよ。
…えぇと、今回は繋げる事を意識せず、今まで通りに溜めを作る方向で…グッと溜めて、バッと動く。ピタッと止めてまた溜める。その繰り返し…。
うん、いけるいける。意識しちゃってるから若干挙動がおかしい気もするけれど。
…でも…この動きだとキレが良過ぎるって言ってたのに、わざわざもう一度これをやらせるのって…どういう意図なのだろうか?
「はい、ストップ。」
…ふぅ。
意識してクセを出す様にするって存外難しいな。如何にも朝方よりもステップが柔らかくなっちゃってる気がする。
「凛蘭さん、どう思う? さっきのと比べて。」
「え? ど、どうと言われても… 」
「見たままでいいから。教えて。」
「見たまま…え、と、今のは体操みたいでカッコイイ感じで…さっきのは新体操みたいな感じ…? 」
ほほう新体操。
それはつまり、ボクのステップは芸術的だと。
え? そこまでは言ってない? …左様で。
「…うん、そっか、やっぱり。」
やっぱりって事は何かわかったんだ?
ねぇってば、勿体付けないで教えてくれないかな? 今のはあの下手に見えていたダンス動画に近い動きだったはずだよね? あえてそれを踊らせたのには何か意味があるんでしょ?
「それはもちろん。…けどそうだね、たぶん せりには説明するよりも、こっちの方が早いと思う。」
おいで、と構えをとる なづな。
ふむ? 説明するよりも体感した方が早いって事なのか?
まぁ…一度に色々と説明されても直ぐに全部実践出来るとは思えないし、身体を動かす事ならば経験の方が勝るからね。受けて立ちましょう。
…別に決闘する訳じゃないのだが、なんとなく。
なづな に歩み寄り、出された左手に右手を重ね、引かれるままに腕の中に収まり、背筋を伸ばし反る様な体勢をとる。
…いつもしている行為であるはずなのに、なんかちょっと照れくさく感じてしまう。理由は…たぶん…たぶんなのだけれど、一回凛蘭さんと組んでいる所為じゃないかと。
顔の位置がね…一気に近くなった感じがしてさ…しかも今… なづながさ、かなり真剣な顔をしているものだから、なんかね、ちょっとね…。
…いやいや、いやいやいやいや!
そんな邪念を抱いている場合じゃない!
今はステップに集中、集中!
…何故か忙しいです…
コロナ前の仕事量には及ばないはずなのに…
それだけヌルい環境に慣れてしまっていたんですね…




